Shirley Anne Hofmann は、Canada 出身ながら、The Blech や L'Ensemble Raye
といった avant-rock/pop なバンドのメンバーとして、欧州を拠点に活動する女性
brass 奏者だ。最近耳にした Jean Momo Rossel (L'Ensemble Raye) のレーベル
からリリースしたリーダー作が、低い brass の響きがなかり楽しめる出来だった
ので、少々古い作品ながら紹介しておこう。

Shirley Anne Hofmann's Euphoria
_From The Depths_
(Label UsineS, LUS001, 1995, CD)
- 1)The Lovely Moose 2)Geneva 3)Mr. Data
4)Down In Prescott Way (Sex Got Into Prescott) 5)Momo
6)A Lunar Story 7)Inch Worm 8)Bratko-toffel 9)Afro Blue
10)The Genius 11)From The Depth 12)Somewhere Over The Rainbow
13)Waltzing At Eurodisney
- Produced by J. M. Rossel and Shirley Anne Hofmann
- Shirley Anne Hofmann (euphonium,sousaphone,valve trombone,
slide trombone,fluegelhorn,trumpet,accordion,piano,marimba,
melodica,bird whistle,Akai sampler,Kurzweil sampler,voices),
Pippin Barnett (drums,percussion),
J. M. Rossel (E-bow guitar,guitar,fiddle,vocals),
Peter Schaerli (fluegelhorn,trumpet), Rupert Volz (bottle groove)

ゲストも迎えているが、基本的に多重録音で、リズムの Barnett 以外ほとんどは、
自分で演奏しているようだ。様々な低い brass のちょっとユーモラスな響きの演奏や、
accordion の演奏、呟くような歌を重ねて、曲を作っている。

欧州の伝統的な旋律、というか、circus の B.G.M. で使われそうな雰囲気を持った
曲 ("Momo" とか) が耳を捉える。"Down In Prescott Way (Sex Got Into Prescott)"
は、むしろ country 風か。ちょっと reggae の影響も感じるけどギクシャクした
感じのリズムも面白い pop な "Geneva" も大好きだ。

ちょっと jazz っぽい雰囲気があるのは、(ちゃんとクレジットされてないけど)
John Coltrane の演奏で知られる "Inch Worm" や "Afro Blue" をやっているから
だろうか。"Somewhere Over The Rainbow" もスタンダード曲といっていいだろうし、
オープニングの "The Lonely Moose" は、Ornette Coleman, "Lonely Woman"
を意識したもののように思う。"Mr. Data" は "Sixteen Tons" みたいだし。
凄いアドリブを聴かせるとかそういうわけでなく、ちょっと pop 的にしっとり
聴かせるように演奏しているのだが。アップテンポな曲とメリハリを作っている。

euphonium や sousaphone のような重低音 brass の音をメインに使いながら、
とても楽しめる作品になっていると思う。

Shirley Anne Hofmann
_Alp Traum_
(Label UsineS, LUS005, 2000, CD)
- 1)Dance On A Rooftop
2)Tango Grandiosi Confusioni A La Maria Von Boesendorf
3)Telephone Love Call 4)Bolero In Bayern 5)A Wale's Hornpipe
6)Auf Dem Drahtseil 7)Deep Russian 8)Alptraum 9)Alpen Transversalle
10)Walzer Fuer Eine Schweiz In Europa Vor Dem Jahre 3000
- Shirley Anne Hofmann (piano,valve trombone,voices,handmade loops,
samples,tuba,euphonium,pocket trumpet,accordion,Korg 707,duck call,
toy rattle,megaphone,bass drum,garden hose,lips,jodelling),
Haemmi Haemmerli (acoustic bass), Carlos Lopez (drums,percussion),
Pierre Kaufmann (clarinet), Cedric Vuille (spoons),
Jean-Vincent Huguenin (sneezing), Teresa Larraga (radio voice),
Frederic Maire (radio voice).

_From The Depths_ が気にいったので、こちらの作品も期待したのだけれど。
こちらは制作で凝り過ぎてしまったのかな、と思うところも。重低音 brass の
響きが電子的に弄った音に対して一歩引いてしまったようにも思う。accordion を
メインにフィーチャーした曲も悪くはないけれど、全体として弱く感じる。

タイトルからしても Alps 地方の folk 的 な要素を意識した曲作りをしているの
だろうが。前作ほどキャッチのある曲は無いけれど、folk/roots-influenced な
avant-rock/pop として充分に楽しめるように思う。

2003/02/09
嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕