Berklejdy _Muzyka Nasluchana (Overhead Music)_ (Orange World, OWCD001, 1998, CD) - 1)Kuker 2)Regalowy 3)Pieski Walczyk 4)Walc Niebieski 5)Najabingowski 6)Obertany 7)Ze Wschodu 8)Polka Nasluchana 9)Um-pa-pa 10)Polka Monopolka 11)Takie Tango 12)Trans-zystor 13)Marsz Weselny 14)Lupu Cupu 15)Polkalypso 16)Marsz Na Dwoch 17)Marsz (Niekoniecznie) Na Dwoch (Drwal & Bass Remix) - Produced by Piotr Pucylo. - Karol Jancewicz (bass,jews harp), Tomasz Jewula (guitar,voice), Piotr Pucylo (darabuka,bendir,tar,riq,khanjari,udu,qarqaba,steeldrum, tanpura,saz), Wincenty Turowsky (bayan (button accordion)), Kuba Wagin (drums,percussion), Andrzej Zajko (cymbaly). Poland の polka や march, waltz といった伝承的な曲を ska 〜 reggae や calypso のリズムで演奏するバンドだ。全曲インストゥルメンタル。もちろん、 こういう試みは以前にもあったわけで、British folk/roots の曲を reggae / dub のアレンジで聴かせたバンド Edward The Second & The Red Hot Polkas の _Two Step To Heaven_ (Cooking Vinyl, COOKCD019, 1989, CD) を連想する ところもある。特に、accordion の使い方など。 しかし、Berklejdy が面白いのは、cymbaly (Polish hammered dulcimer) を 大々的にフィーチャーしているところ。steeldrum っぽい使い方といえば、 そうなのだけれど。弾けるような澄んだ軽快な弦の響きが、ダブワイズなリズム に乗る感じがカッコイイ。darabuka や saz など Turkey 〜 Arab な楽器の音も ちょっとしたアクセントになっているし。 しかし、1990年前後の US-indies における polka リバイバルの時にも指摘 されていたように思うけれど、polka の2ビートって、実は、reggae に近い ノリなのかもしれないなぁ、と、これを聴いていてつくづく思ってしまった。 そういう意味では、3拍子の waltz の曲の方が、新鮮な面白さを感じる。ちょっと country waltz っぽい感じになって、Mekons のインストゥルメンタル版みたい にもきこえる。 ちなみに、最後に1曲リミックスが収録されているが、ちょっと drum'n'bass を意識したところはあると思うが、それほどあからさまではない。むしろ、 よりディープな音処理になっているところが面白い。 ダブワイズな音処理のところに、もっと録音が良ければと思うところはあるが、 cymbaly の響きとダブワイズな音の組み合わせの妙を充分に楽しめる作品だろう。 ちなみに、Berklejdy は、1997年の結成で、Tomasz Jewula と Kuba Wagin は それ以前が reggae を演るバンド Dobra Sila にいたそう。cymbaly 奏者 Andrzej Zajko は結成時20歳だったというし、若いバンドだ。 これをリリースしているのは、1990年代後半に活動を開始した Poland の folk/roots-oriented な新しい音楽を紹介する独立系レーベル Orange World (ウェブサイトは http://www.orangeworld.pl/ )。Berklejdy の Piotr Pucylo が A&R で、_Muzyka Nasluchana (Overhead Music)_ が第一弾のリリースだ。 他のリリースも面白いので、いくつか紹介。 Kwartet Jorgi _Muzyka Na Trabke, Gitare I Flet (Music For Trumpet, Guitar & Flute)_ (Orange World, OWCD005, 1999/2002, CD) - 1)I 2)II 3)III 4)IV 5)V 6)VI 7)VII 8)VIII 9)IX 10)X 11)XI - Recorded 1999. - Maciej Rychly (flutes), Waldemar Rychly (guitar), Andrzej Brych (trumpet). 1980年代頭から活動するバンドで、もともとはバンド名通り4tetだったが、 1人抜けて現在は3人で活動しているという。結成された年代もあるのかも しれないが、アプローチは jazz / improv 的。伝承的なフレーズを使っている ようだが、明確に元にした曲は無いようだ。ダブワイズとはちょっと違うが、 時折、深めのエコーがかけられるのは、制作の Piotr Pucylo の趣味だろうか。 曲によっては percussion の音がするときもあるが、一応、drums 無しのいささか 変則的な編成。といっても、flamenco 風にも感じる guitar のカッティングが リズムを刻んでいて、ノリの良い曲が多い。trumpet は強い音で吹きまくる。 一方の flute も強めではあるが、むしろ、擦れたような音を多用する。と、 テンション高めの3楽器の掛け合いが楽しめる作品になっているだろう。 Kapela Ze Wsi Warszawa (Warsaw Village Band) _Wiosna Ludu (Poeple's Spring)_ (Orange World, OWCD006, 2001, CD) - 1)Do Ciebie Kasiuniu 2)Taniec Chasydzki 3)U Mojej Matecki 4)Niolam Kochanecka 5)Cerwone Jabluszko 6)Polka Szydlowiecka 7)Kto Sie Zani 8)Bystra Woda 9)Cozes Ty Kasiu 10)Polka Folk Is Dead 11)Pada Deszczyk 12)Zurawie 13)Maydow 14)Matecka: Indo European Minimal Mix (Piotr Pucylo) 15)Joint Venture In The Village (Mario Dziurex JVSS) - Recorded 2001/6/7. - Katarzyna Szurman (skrzypice (old polish fiddle),vocals), Maja Mayall Klescz (bass,vocals), Sylwia Mazura Swiatkowska (violin,fiddle from Plock), Wojciech Szpak MC Krzak (violin,jews harp,vocals), Piotr Prof. Glina Glinski (baraban drum), Maciej Herszt Szajkowski (frame drums,dhol,vocals); Marta Stanislawska (old polish dulcimer), Wojciech Pulcyn (double bass), Piotr Korzen Korzeniowski (trumpet), Maciej Cierlik Cierlinski (hurdy-gurdy). Kapela Ze Wsi Warszawa (KZWW, Warsaw Village Band) は、Germany のレーベル Jaro からのライセンスリリースもされ、Orange World レーベルだけでなく Poland の folk/roots-oriented なバンドの出世頭といえるだろうか。1997年 結成で、結成当時、メンバーは高校生から大学生だった、という、若いバンドだ。 このCDは2枚目のリリースのようだ。 やはり、Poland の伝承的な曲を演奏するバンドだが、Berklejdy における reggae の要素のようなアレンジ上の妙はない。だた、エコーの使い方とか、シャキっとした リズム感 (録音のせいもあるのだろうが) は、rock / pop を通過した音だなぁ、 と感じる。 "white voice" と呼ばれる伝統的な歌唱法に基づいているという女性3人の歌唱や、 特に伝統的な fiddle の音が大きくフィーチャーされているあたり、北欧の folk/roots リバイバルのバンドの音楽に似ているように感じる。baraban drum や frame drums の叩き出す音は、ちょっと鈍い感じがして、独特に感じるけれども。 リミックスも2曲収録されている。Piotr Pucylo の曲はなぜか Indo 風味の downtempo breakbeats、Mario Dziurex JVSS の曲は techno 風。後者は baraban drums のダンダンいうような音を巧く使ってちょっとトライバルな感じに仕上って いるのが面白い。ちなみに、Mario Dziurex は _Dub Out Of Poland_ と題した イベントや編集盤を企画している、Poland のクラブ・シーンのキーマンのようだ。 folk/roots のリバイバル・バンドとしては、普通なアプローチで、もう一癖欲しい と感じるところもあるが、勢いの良さもあって楽しめるように思う。 Berklejdy や KZWW は若いバンドだ。東欧革命後に十代を過ごしているわけで、 もはや冷戦下の特殊事情とは全く違った、西欧の音楽シーンと連続的な音楽が 生まれてきているように感じる。この界隈の今後の展開に期待したい。 2003/6/1 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕