The Bad Plus _These Are The Vistas_ (Columbia, CK87040, 2003, CD) - 1)Big Eater 2)Keep The Bugs Off Your Glass And The Bears Off Your Ass 3)Smells Like Teen Spirit 4)Everywhere You Turn 5)1972 Bronze Madalist 6)Guilty 7)Boo-Wah 8)Flim 9)Heart Of Glass 10)Silence Is The Question - Produced by Tchad Black and The Bad Plus. Recorded and Mixed by Tchad Blake, 2002/9/30-10/5. - Reid Anderson (bass), Ethan Iverson (piano), David King (drums). New York を拠点に活動する Reid Anderson と Ethan Iverson と、Mineapolis の David King による jazz piano trio が The Bad Plus だ。今まで Anderson と Iverson に drums を加えた trio で、1990年代から Fresh Sound / New Talent からリリースを続けてきているが、これがメジャーデビュー盤だ。 Don Pullen とか Muhal Richard Abrams、Horace Tapscott (より若い世代なら、 1990s前半の Craig Taborn や Geri Allen、Myra Melford あたり) を思い出さ せるような派手な強い音で弾きまくる piano と、それにガンガンに応じる bass と drums とからなる、free な piano trio だ。 派手な piano の音もいいのだが、この trio はリズムが特異だ。free jazz 的と いえばそうなのだが、ふっと techno というかIDM風といった方がいいような ギクシャクしたリズム感になるのだ。実際、Aphex Twin, "Flim" を演奏している。 Tom Waits や1990年代の Mitchell Froom 制作での一連の音造りで知られる Tchad Blake が制作なので、ポストプロダクションをしているのではないかと 勘ぐりたくなるほどだ。ドラムらしくない音については、小さなヤカン等の ガラクタ類も使っているよう。"There are no edit or overdubs on this records" とわざわざ明記してあるし、Ponga における Bobby Previte のドラミングにしても そうだが、このくらいなら巧い drums 奏者なら叩いてしまいそうにも思う。 Matthew Shipp のように techno の技法を取り入れているよいうより (そういう やり方も悪くはないと思うけれども)、曲を jazz piano trio のイデオムで 完全消化している感が良い。 他にも Nirvana, "Smell Like Teen Spirit" と Blondie, "Heart Of Glass" を やっている。Aphex Twin, "Flim" は、Aphex Twin らしいリズムを再現することを 意識したかのような演奏だったが、この2曲は pop 的な意味でのカヴァーではなく、 フレーズを展開する元とするテーマとして使っているといった感じだが。しかし、 Aphex Twin にしてもそうだが、判りやすいというか、ちょっとベタな選曲のような 気もする。それでも、ドシャメシャになる "Heart Of Glass" は最高だ。 もちろん、そんな3曲のようなネタが無くても、派手に弾きまくる piano trio と して、充分に楽しめる一枚だと思う。 2003/06/07 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕