近藤 等則 × 栄芝 『The 吉原』 (Toshinori Kondo & Eishiba, _The Yoshiwara_) 渋谷タワーレコード (渋谷) 2003/06/03, 19:30-20:30 - 近藤 等則 (Toshinori Kondo) (trumpet,electronics), 栄芝 (Eishiba) (vocals), 芝園 (Shibazono) (syamisen), etc 『The 吉原』 (ビクターエンタテインメント, VICL-61155, 2003, CD) の リリース後初めて、というライヴを見てきた。インターネットで試聴した 印象では、江戸小唄を breakbeat jazz 風にアレンジしたものという感じで、 ちょっと際物的な印象もあって手出しに躊躇するところもあった。確かに、 実際のライブも、breakbeat jazz アレンジな小唄 という印象から大きく 外れるものではなかったが。アンコールを含めて7曲、意外に楽しめた ライブだった。 ステージは、近藤 の率いるバンド Free Electro が、栄芝 と 芝園 をバック アップするという感じだった。もちろん、近藤はフロントだ。 しかし、ゆっくり聴かせる「淡雪」に続いて、アップテンポな「深川節」に かけては、正直に言ってちょっとキツいかな、と思ったのは確かだ。 小唄・端唄のメリスマ入ったような艶やかな唄い回しや緩い三味線の響きは、 むしろダウンテンポのリズムに乗ったほうがよいように感じた。近藤は trumpet の音すら live electronics で弄りまくってしまうわけだけれど、 その一方、栄芝 の歌声や 芝園 の三味線の響きをかき消さないよう、 うまく音の隙間を作った音作りになっているも良かった。doutar を伴奏に club music なアレンジで歌う Uzbekistan の歌手 Sevara Nazarkhan, _Yol Bolsin_ (Real World, 2003)と共通するところも多いように思う。 演奏した中でベストの曲は「並木駒形」。オープニングのダウンテンポな リズムに乗る三味線の響きからぐっとくるし、「お酒だよ〜」という掛け声 的な声もいい。アンコールでも、この「並木駒形」をやったのだけれど、 近藤に「お酒だよ〜」という掛け声をやらせてしまう 栄芝 も機転が利いて いてよかった。 しかし、江戸小唄 の breakbeats jazz 風アレンジ、と言えば単純そうだが、 実際に聴ける音楽に仕上げるのは大変そう。リズムというか間の体系が違う ものだけに、頭のタイミング取りとかから苦労していた。うまく合わなくて やり直ししたことも一度あった。 家では聴けないような大きな音で聴かれるのもライヴならではなのだが。 しかし、ライヴを観に行って良かったと一番思ったのは、栄芝 が予想以上に チャーミングだったこと。フライヤやウェブサイトなどの写真では、正直に 言って少々「おばさん」臭い印象すら受けていたのだが。歌の間のちょっと した立ち振る舞いや表情が上品で、それでいてちょっと可愛らしい感すらあった。 ちなみに、客層は、クラブに良く行ってそうな若者と、栄芝 の弟子筋の客が 半々だろうか。その妙な交じり具合も面白かった。 このプロジェクトは、一発の企画物で済ますことなく、この秋には国内を、 来年にはヨーロッパをツアーする予定とのこと。一過性の企画物として終ら せずに続けることによって、こういう取り組みが広がりを持ってくると面白く なりそうだ。それに、この音なら、日本よりヨーロッパの方が受けそうに思う。 2003/07/03 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕