Various Artists
_Crammed Global Soundclash 1980-89: The Connoisseur Edition_
(Crammed, CRAM100, 3CD+booklet box, 2003)
- CD1) _Part One: World Fusion_ (Crammed, CRAM113, 2003, CD).
Hector Zazou / Bony Bikaye, Benjamin Lew & Steven Brown, Hector Zazou,
Foreign Affair, Benjamin Lew, Sussan Deyhim & Richard Horowitz,
People In Control, Mahmoud Ahmed, Peter Principle, Bel Canto, Aksak Maboul,
Madjma vs Adrian Sharwood, Family Fodder, Tuxedomoon, Daniel Schell,
Minimal Compact, The Honeymoon Killers, Sonoko, Poto Doudongo, Hermine.
CD2) _Part Two: Electrowave_ (Crammed, CRAM114, 2003, CD).
Aksak Maboul, Minimal Compact, The Honeymoon Killers, Band Apart, Karl Biscuit,
Hector Zazou / Bony Bikaye, Tuxedomoon, Veronique Vincent / Aksak Maboul,
Peter Principle, Colin Newman, Des Airs, Telex, Karen Finley.
CD3) _The 2003 Remixes_ (Crammed, CRAM100-R, 2003, CD).
Aksak Maboul vs Juryman, Minimal Compact vs International Observer,
The Honeymoon Killers vs Bigga Bush, Tuxedomoon vs Chilluminati,
Hector Zazou / Bony Bikaye vs Chateau Flight.
- Compiled by Marc Hollander.  Mixed by Marc Hollander and Vincent Kenis.

1981年に活動開始した Brussels のレーベル Crammed Discs の初期 1980s の
活動を回顧する企画 "Crammed Global Soundclash" の一貫として、12枚の再発CD
の他に、2枚の編集盤がリリースされている。"The Connoisseur Edition" は、
その2枚の編集盤に、現在 SSR 界隈で活躍しているDJたちによるリミックスを
集めたCDと booklet を付けたものだ。

一曲を丁寧に収録しているわけでもなく2分くらいの曲のハイライトをフェード
イン/アウトで繋いでいるものだ。一ミュージシャン/バンドにつき一曲という
わけでもない。ミュージシャンや曲を丁寧に紹介するような編集意図は感じ
られない。むしろ、DJ mix に近く、レーベルの A & R の Marc Hollander の
志向性というか、1980s の Crammed Discs の音世界を浮かびあがらせるような
編集だ。1990s に傘下の SSR に重心を移し、techno / house / breakbeats に
音作りが傾斜していくわけだが、その直前までの音が収録されている。

収録されている音は、electro なビートや dubwize な音処理、呟くような
歌唱などが耳を捉えることが多く、やはり post-punk 〜 new wave 色濃い音だ。
Crammed Discs は同時代的にフォローし続けているレーベルだが、1980年代に
よく聴いていたけれど最近10年はほとんど聴いていなかった音も多く、通して
聴いていて懐かしく感じたところも多い。特に _Part Two: Electrowave_ の
方でよく聴かれる、ゲート/リバーブがかったドラムの音や、synth pop 風の
ピコピコいうシンセーザー音など、どうしようもなく1980年代の音だと思う。
歌詞が日本語ということもあるのかもしれないが、Sonoko, "Romeo Sama" など
正直かなり辛いものがある。

しかし、全体を聴き通した印象はほとんど古びていない。特に、_Part One:
World Fusion_ に収録されたアフリカや中近東の音楽へのアプローチは、
pop 的もしくは folk 的な "world music" のアプローチというより、むしろ、
最近の folk/roots 的な音と実験的な指向を持つ音の混淆に近いものがあり、
やっていたことが20年早すぎたのかもしれない、と思うほどだ。特に
Hector Zazou / Bony Bikaye や Sussan Deyhim / Richard Horowitz など、
改めてちゃんと聴き直したいと思うほどだ。

本編の2枚がそれなりに強い印象を残す出来なだけに、限定の _The 2003 Remixes_
の印象がいまいち薄くなってしまっているほどだ。好編集盤シリーズ _Freezone_
をリリースしているレーベル SSR を傘下に持つだけに期待していたのだが。
Hector Zazou / Bony Bikaye vs Chateau Flight, "M'Pasi Ya M'Pamba" が、
オリジナルの良さもあると思うが、最も気にいっただろうか。

"The '80s According To Crammed (A Diary)" と題された booklet は表紙を
含めて26ページで、Marc Hollander へのインタビューを構成したテキストと、
ミュージシャンの写真が載っている。雰囲気を感じさせるものではあるが、
ディスコグラフィやミュージシャンたちのバイオグラフィーなど、資料的なもの
も付けて欲しかったように思う。

1990年代の続編がどうなるのか聴いてみたいところもあるが、改めて制作する
までもなく、Made To Measure レーベルの音源が多く使われた Various Artists,
_Freezone 1: The Phenomenology Of Ambient_ (SSR, SSR129, 1994, 2CD) に
始まる SSR レーベルの _Freezone_ シリーズが、そうと言えるのかもしれない。

sources:
Crammed Discs, http://www.crammed.be/
Crammed Global Soundclash, http://www.crammed.be/globalsoundclash/index.htm

2003/09/21
嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/