Shantel _Bucovina Club_ (Essay Recordsings, AYCD1, 2003, CD) - 1)Intro Espinita (Banda Ionica) 2)Espinita (Banda Ionica), 3)Pelin Bau, Pelin Maninc (Taraf De Haidouks) 4)Dimineata (Shantel) 5)Ta Travudia (The Rootsman) 6)Tu Romnie (Fanfare Ciocarlia) 7)Wedding-Cocek (Goran Bregovic) 8)Baro Foro (Gogol Bordello) 9)Siki, Siki Baba (Kocani Orkestar) 10)Bucovina (Shantel) 11)Carolina (Taraf De Haidouks) 12)Iag Bari (Shantel Remix) (Fanfare Ciocarlia) 13)Sex (Goran Bregovic) 14)Disko (Shantel feat. Boban Markovic Orkestar) 15)Bucovina (OMFO Dub) (Shantel) Shantel (a.k.a. Stefan Hantel) は、Frankfurt を拠点に活動するDJで、!K7 から 何枚かリリースもある。2002年に Frankfurt で Bucovina Club というイベントを 始め、新たに Essay Recordings というレーベルを作り、Bucovina Club 関連の リリースも始めている。このCDは、CDでのリリース第一弾だ。 このCDは、主に Balkan Gypsy のバンドとクラブDJとの共演という、Bucovina Club の活動を紹介する内容になっている。収録されている曲全てがバンドの演奏の DJリミックスというわけではなく、15曲中10曲は各々のアルバムからの曲だ。 リミックスが2曲、Balkan / Gypsy なサンプルをネタからDJが組み上げた曲が 3曲となっている。ノリの良い曲を中心に編集されていることもあるが、これらが 違和感なく並置されているのが面白い。 アルバムからの曲で聴いたことが無かったのは New York の東欧移民による Gypsy punk バンド Gogol Bordello 程度で、曲としての新鮮味は無かった。 しかし、ノリのいい曲を巧く違和感なく繋げていく感じは、今までの Gypsy 音楽 のアンソロジーには無かったセンスだろう。泥くささすらシャレているように 感じる程だ。もちろん、Taraf De Haidouks、Fanfare Ciocarlia、Kocani Orkestar、 Boban Markovic Orkestar、Goran Bregovic と、Gypsy / Balkan 音楽の美味しい ところを集めてきており、Gypsy / Balkan 音楽の入門盤としてもお薦めだ。 興味深いのは、Balkan / Gypsy に限定していないことだ。Italy の punk/avant-rock バンド Mau Mau のメンバーたちによる Sicily (シチリア) の伝統的ブラスバンド のリバイバル Banda Ionia がオープニングだ。The Rootsman, "Ta Travudia" も、 Italy の新傾向の roots バンド Rosa Paeda の曲が元ネタになっている。 Italy の roots 寄りの新しい音楽も、Balkan の音楽などと同じ文脈で受容 されているのだろうか。 リミックスは、音やリズムをくっきりさせる程度で、もとの曲の良さを生かした ものになっている。だだし、最後の Shantel, "Bucovina (OMFO Dub)" のみ、 かなり dubwize な音処理だ。 ちなみに、Bucovina とは、第一次大戦前まで Austria-Hungary の州の一つで、 現在は Ukraine と Romania に分割されている。Shantel は祖父母が現 Ukraine の Chernivtsi (a.k.a. Czernowitz), Bucovina の出身であり、2001年の夏に祖先の地 を旅行したことが、Shantel がこのような活動を始めるきっかけだったという。 祖父母の持っていたレコードというのも、彼のネタになっているようだ。 Gypsy / Balkan 音楽をクラブ仕様でパッケージするやり方に、全く商売気が感じ られない、というと嘘になる。それでも、_Bucovina Club_ を聴いたりその 周辺の情報を追いかけていると、山っ気よりも、自然体で地に足が付いた印象 の方が強い。クラブで遊んでいる若者にとっても、祖父母が聴いていた音楽で、 全く親しみが無かったわけではなかったため、それを自然に受けいれてしまって いるような印象すら受ける。ここらは、Gypsy 音楽もクラブの音楽も多分に 「舶来物」として受容している日本とはかなり文脈が違うように思う。 ちなみに、Crammed Discs / CramWorld から、この続編ともいえるリリースが 既に予定されている。_Electric Gypsyland_ と題され、Taraf De Haidoukes, Kocani Orkestar, Mahala Rai Banda という CramWorld 在籍の Balkan Gypsy band の音源を、Shantel だけでなく世界各地の DJ が remix するものになっている。 さらに、Shantel は、Romania の Gypsy band である Mahala Rai Banda の デビュー作 (CramWorld からリリース予定) のプロデュースもしている。 sources: Bucovina Club, http://www.bucovina.de/ Essay Recordings, http://www.essayrecordings.com/ Shantel, http://www.shantel.de/ HR (Hessen Rundfunk), "Hauptsache Kultur!", 2003/06/05, http://www.hr-online.de/fs/hauptsachekultur/themen/030605thema4.html (地元 ヘッセン放送 (HR, Hessen Rundfunk) による Bucovina Club の紹介) _Electric Gypsyland_, http://www.crammed.be/craworld/crw32/ 2003/09/28 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/