Various Artists _Electric Gypsyland_ (CramWorld, CRAW32, 2003, CD) - 1)Carolina (Bucovina Club vs Taraf De Haidouks) 2)L'Orient Est Rouge (Lightning Head vs Kocani Orkestar) 3)Usti, Usti Baba (Senor Coconut vs Kocani Orkestar) 4)Dumbala Dumba (DJ Dolores vs Taraf De Haidouks) 5)Iest Sexy (Shantel vs Mahala Rai Banda) 6)Cind Eram La '48 (Juryman vs Taraf De Haidouks) 7)Siki, Siki Baba (Gaetano Fabri vs Kocani Orkestar) 8)Cuculetsu (Bumcello vs Taraf De Haidouks) 9)L'Orient Est Roots (Bigga Bush vs Kocani Orkestar) 10)Fantasia For Clarinet (Modern Quartet vs Kocani Orkestar) 11)Mugur Mugurel (Arto Lindsay & Melvin Gibbs vs Taraf De Haidouks) 12)Siki, Siki Baba (Mercan Dede vs Kocani Orkestar) 13)Are You Gypsyfied? (Megamix) (Olaf Hund vs Ursari De Clejani / Taraf De Haidouks / Kocani Orkestar) - Project directed by Mark Hollander. A & R collaboration: David Beaugier. Secret Agent: DJ Morpheus. Crammed 傘下の world music のレーベル CramWorld に在籍する2つの Balkan Gypsy バンド Taraf De Haidouks と Kocani Orkestar の音源を元にしたリミックス集が リリースされた。契約したがまだリリースの無い Mahala Rai Banda の音源も1曲で 用いられている。 world music でのリミックス集というのは1990sからあったわけで、Gypsy music の 本格的なリミックス集が今までリリースされなかった、ということの方が意外だ。 そんなわけで、意外さは無いが、自然に楽しめる仕上がりだ。むしろ、今なら ではの多様な仕上がりになっていて、良いように思う。1990s に制作していたら、 Gypsy music の上物もそこそこの、drum'n'bass 一色とか house 一色のアルバム になってたかもしれない、と思うところもある。 リミックス陣は Crammed Discs 傘下の dance music のレーベル SSR や Brazilian music のレーベル Ziriguiboon の人脈から集めたと思われるDJも目立つ。しかし、 France で jazz / improv. の文脈でも活躍する Bumcello や Istanbul, Turkey の Doublemoon レーベルで活躍する Mercan Dede のような、1990s の dance music を 通過した jazz / improv. に近い文脈で活動するユニットも参加している。 Arto Lindsay & Melvin Gibbs も、ここではそういう位置に近いといえるだろう。 そういったことも興味深い。 先頭を切るのは、"Bucovina Club" という Gypsy music のクラブ・イベントを Frankfurt で主宰し、このリミックス盤の先駆の編集盤 Shantel, _Bucovina Club_ (Essay Recordsings, AYCD1, 2003, CD) をリリースしている Stefan Hantel (Bucovina Club 名義)。元となる Taraf De Haidouks と Kocani Orkestar が 共演したノリの良い曲 "Carolina" を損なわないように、ビート回りを弄って いるという感じだ。Hantel は Shantel 名義でもう一曲リミックスをしている。 この Bucovina Club / Shantel が典型的なように、前半6曲目までがもとの曲の 雰囲気、ノリを良く残した曲になっている。 一方、7曲目以降は、Gypsy music を単なるサンプルネタという程度の扱いにして いる曲が続く。Buncello や Arto Lindsay & Melvin Gibbs、Mercan Dede の曲など、 ほとんど現形を留めない abstract な breakbeats になっている。deep house な トラックに clarinet が浮遊する Modern Quartet や、dubwize な Bigga Bush も 悪くない。 前半と後半のアプローチのどちらが良いというものでもなく、Gypsy music と electronica / breakbeats との間に傾斜がかかっていろいろな折衷パターンが 出て来ているようなのも面白いと思う。 Olaf Hund の Megamix は、様々な音源をビートに乗せて繋げてこのリミックス盤を 振り返る、とでもいうような曲になっている。 Shantel, _Bucovina Club_ とこの _Electric Gypsyland_ を聴いていると、 Gypsy music の根付き具合を感じさせるところもあって感慨深い。これらに 続いて、Shantel が現在制作中という Mahala Rai Banda の新作をどう仕上げて くるのか、楽しみだ。また、こういう試みが中東欧のインデペンデントな音楽 シーンへどう波及していくのか、それも楽しみだ。 sources: CramWorld, http://www.crammed.be/craworld/ _Electric Gypsyland_, http://www.crammed.be/craworld/crw32/ Shantel, _Bucovina Club_ のレビュー, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/03092801 2003/10/18 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/