Maria Pia De Vito / Patrice Heral _Tumulti_ (Il Manifesto, CD106, 2003, CD) - 1)Zoobab 'de Ouab 2)Verbo E Umore 3)Forse No 4)Hallucinations 5)Revolt 6)The Sixth Nonsense 7)Colourd Shadow 8)Michele (Short Movie) 9)Eklil 10)Watery Dreams 11)Joga - Recorded 2002/11/15-21,12/9. - Maria Pia De Vito (voice,live electronics), Patrice Heral (drums,percussion,voice,live electronics), Ernst Reijseger (cello), Paul Urbanek (piano,electronics). 南イタリアはカンパニア州ナポリ (Napoli, Campania, Italy) 出身の jazz / improv で活躍する、スキャットというかモダンなヴォーカリゼーションを得意とする女性歌手 De Vito の新作は、前作 _Nel Respiro_ (Provocateur, PVC1031, 2002, CD) での drums 奏者 Heral との共リーダー作だ。クレジットから大幅な電子的な音弄りが 予想されたのだが、実際はそれほどではない。Maria Pia De Vito / John Taylor / Ralph Towner, _Verso_ (Provocateur, PVC1023, 2000, CD) や Maria Pia De Vito / Arto Tuncboyaciyan / Rita Marcotulli, _Triboh_ (Polo Sud, PS026, 1998, CD) で聴かれるようなノリの良い華やかなスキャットはそれほど多くなく、いささか地味 な作品だ。しかし、cello との絡みのような今後もっと挑戦して欲しいような展開も あって、今後の展開に期待を感じさせる作品だ。 この作品を聴いて最も耳を惹くのは、cello の Reijseger が参加した曲だ。 Reijseger が弓弾きする "Violincello Bastardo" (Ernst Reijseger, _Colla Parte_ (Winter & Winter, 910 012-2, 1997, CD) 所収) に Heral のバタバタした軽い リズムと De Vito の気怠い歌唱を乗せた "Verbo E Umore" は、元曲より魅力的だ。 cello と抽象的な歌唱が会話しているかのような "Forse No"、bass 的な cello と drums とスキャットがスリリングに掛け合う Bud Bowell, "Hullucinations" も 緊張感があって良い。それに、Heral が口で刻んだものを電子的に加工したリズム と絶妙な間合で爪弾かれる cello を背景に歌われる Bjork, "Joga" がカッコいい。 De Vito - Heral - Reijseger のトリオでフルのアルバムを作って欲しいと思う。 Urbanek の piano が参加した曲がダメというわけではない。派手な強い piano の 音と掛け合う "The Sixth Nonsense" のような曲は好きだ。しかし、Rita Marcotulli や John Taylor など今まで piano 伴奏が多かったわけで目新しさに欠けるし、 電子的な音弄りのせいで逆にキレが悪く感じられる曲もあって少々惜しく感じる。 De Vito - Heral の2人だけの曲もあって、打楽器も控えめに2人のスキャットだけで Dhafer Youssef, "Eklil" などトリッキーな感じもして面白い。 ところで、De Vito と似たような資質を持つ Portugal の女性歌手 Maria Joao も、 _Undercovers_ (Universal, 2003) で Bjork, "Unravel" を歌っていたし。スキャット の発展型としてのヴォーカリゼーションをやっている彼女らと、少々特異なスタイル とはいえ歌う Bjork では、スタイルはかなり違うように思うのだけれど、影響力 はあるのだなぁ、と感慨深い。 sources: Maria Pia De Vito, http://www.ejn.it/mus/mpdevito.htm Il Manifesto, http://musica.ilmanifesto.it/ Maria Pia De Vito, _Nel Respiro_ 他レビュー, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/02071401 2003/11/24 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/