Michael Moore Trio _Jewels And Binoculars: The Music Of Bob Dylan_ (Ramboy, #15, 2001, CD) - 1)I Pity The Poor Immigrant 2)Fourth Time Around 3)Visions Of Johanna 4)Dark Eyes 5)Two Soldiers 6)Highway 61 Revisited 7)With God On Our Side 8)Dear Landlord 9)Sign On The Window 10)Percy's Song 11)Book Of Spanish Leather - Recorded 2000/11/29,30;2000/12/3. - Michael Moore (alto saxophone,clarinet,bass clarinet,melodica,bells), Lindsey Horner (bass), Michael Vatcher (percussion). Michael Moore はUS出身ながら、今は Netherlands を拠点に ICP 界隈で活動する reeds 奏者。Chicago の AACM 界隈から出て来た Horner と、Netherlands を拠点に The Ex 周辺で活動する drums 奏者 Vetcher との trio の作品だ。 2年ほど前にリリースされたときは、編成と Bob Dylan 曲集からして、リズムを刻む drums とコードを弾く bass をバックに reeds が歌うように旋律を sax を吹く、 というつまらない展開を想像して、パスしてしまったが。遅ればせながら聴いたら、 充分に jazz のイデオムで消化した上、bass や drums も自在に動き回る、予想を 覆す面白い出来だった。 Moore の reeds は相変わらず。アウトな音出しは多用せず、抽象的になる直前 くらいのフレーズを瓢々と繰り出してくる、Jimmy Giuffre 〜 Lee Konitz の ラインの演奏だ。そういう彼の演奏も大好きなのだが。しかし、ここでの鍵は、 よく動きまわる Lindsey Horner の bass だろう。裏旋律を弾くように Moore の reeds と絡み合い、ソロを取ることも多い。その歌心を感じるフレーズも好きだが。 その一方で、グルーブ感を出すことも忘れていない。"Fourth Time Around" など での弓弾きですら、ゆったり身体が揺れるようだ。Horner といえば、1990年代前半 の Myra Melford Trio での演奏が大好きだったのだが、その時の良さがここでも 聴かれるように思う。もちろん、それに付けられる Vatcher の軽めのチャカポカ と変則的な drums もよいアクセントになっているのだが。 bass が良く動きまわることもあって、Moore が1990年代に Ernst Reijseger (cello) と Han Bennink (drums) とやっていた Clusone 3 と共通する所も感じる。 cello ではなく bass となって、それにグルーヴ感も加わり、さらに強力になった ようにすら思う。Clusone 3 は元曲脱構築プロジェクトだったわけだが、この Bob Dylan 曲集は、元曲を脱構築しているどころか、元曲のことなど気にならない くらい演奏が楽しめるように思う。 sources: Michael Moore / Ramboy, http://www.ramboyrecordings.com/ 2003/12/07 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/