2003年にリリースされた新録、もしくは、ここ2〜3年の新録リリースで2003年に 落穂拾いしたものの中から選んだ10枚。 第一位: Savina Yannatou & Primavera En Salonico, _Terra Nostra_ (Lyra, ML5000, 2001 / ECM, ECM1856, 2003, CD) プロジェクトの契機である Sephard の folk song の復元の域を越え、汎地中海 的な音楽性を併置混交し、folk を基に自分の演奏を聴かせるものになっている。 oud や kanoun、nay といった楽器の演奏を背景に、Yannatou のメリスマの効いた ハイトーンの歌唱が美しい。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/03042001 第二位: Michael Moore Trio, _Jewels And Binoculars: The Music Of Bob Dylan_ (Ramboy, #15, 2001, CD) Moore の reeds と Lindsey Horner の bass が絡み合いながらグルーブを繰り 出してくるこの Bob Dylan 曲集は、元曲を脱構築しているどころか、元曲のこと など気にならないくらい演奏が楽しめる。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/03120701 第三位: Sevara Nazarkhan, _Yol Bolsin_ (Real World, CDRW109, 2003, CD) ゆったり揺れるような緩いビートに、doutar を弾きながら Uzbekistan の伝承歌を 歌うメリスマも軽やかな Nazarkhan の高めの歌声が時にエコー処理されながら 漂うところが、気持ちよい。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/03040501 第四位: Inna Zhelannaya / Sergey Kalachev, _Tantsy Yeney_ (GreenWave, GRCD-2002-2, 2002, CD) Farlanders を離れバンド色は控えめとなり、ミニマルなSSW folk rock 的な作品 になった。低く不明瞭な Kalachev の歌声と、Zhelannaya の凛としたハイトーン の対比もかっこいい。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/03033001 第五位: Burhan Ocal & The Trakya All Stars featuring Smadj, _Kirklareli Siniri_ (Doublemoon, DM020, 2003, CD) Macedonia 〜 Greece あたりの Gypsy brass band と共通するような複合拍子の リズムと、管楽器 (clarinetや trumpet、zurna) による節回しががまず耳を捉える。 そこに付け加えられる electronica な音使いは、派手なギミックではなく、 他の打楽器などと対等な音楽の一部となっている。darbuka や太鼓によるビートを 生かして、electronica がオカズを音響やリズムを加えて、奥行感を作り出している。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/03082401 第六位 Maria Pia De Vito / Patrice Heral, _Tumulti_, (Il Manifesto, CD106, 2003, CD) 今までのアルバムで聴かれたような De Vito の華やかなスキャットは控えめだが、 Ernst Reijseger の参加した曲では、気怠い歌唱から、会話のようなものから、 Bjork, "Joga" のカバーまで、新たな展開が期待したくなるような出来だった。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/03112401 第七位: The Bad Plus, _These Are The Vistas_ (Columbia, CK87040, 2003, CD) Aphex Twin, "Flim" や、Nirvana, "Smell Like Teen Spirit"、Blondie, "Heart Of Glass" のカバーも最高だが、そんな3曲のようなネタが無くても、 派手な強い音で弾きまくる piano と、それにガンガンに応じる bass と drums と からなる、free な piano trio として、充分に楽しめる。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/03060701 第八位: Volga, _Vypei Do Dia (Bottoms Up!)_ (Exotica, EXO03130, 2003, CD) http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/03102901 ディープな tech house のトラックに、Russian folk 的にじゃみっとした歌声に なったり、ハイトーンに伸びる声になったりする、Angela Manukijan の歌唱が乗る のが気持ちよい。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/03102901 第九位: Mario Seve & Marcelo Fagerlande, _Bach & Pixinguinha - Sax, Flauta & Cravo_ (Nucleo Contemporaneo, NC017, 2001, CD) 澄んだ saxophone や flute のゆったり伸びる音で奏でられる旋律と、ちょっと 鈍い cembalo の一つ一つの音が持続せずに細かく刻むように鳴る響きの辿る旋律 がからみ合うところが、よいコントラストを成していて、面白い。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/03091501 第十位: Paulo Fresu, _Sono 'E Memoria_ (ACT, 9291-2, 2001, CD) Elena Ledda の歌唱や Coro "Su Concordu 'e Su Rosariu" di Santulussurgiu の コーラスも Sardinia 的なのだが、電子的な音弄りや即興的な展開が良い緊張感を 加えてくれている。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/03100501 次点: Various Artists, _Electric Gypsyland_ (CramWorld, CRAW32, 2003, CD) 音として気持ちよい仕上がりだったとは言い難いけれども、顔触れからしても、 ジプシー音楽をはじめとする中東欧の音楽シーンが新しい段階に入ったのだろうか、 と思わせてくれる一枚だ。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/03101801 番外特選: 近藤 等則 × 栄芝 『The 吉原』 のライブ (渋谷タワーレコード, 2003/06/03) は、 ダウンテンポのリズムに乗った小唄・端唄のメリスマ入ったような艶やかな 唄い回しや緩い三味線の響きも楽しめた。しかし、このライヴを観に行って良かった と一番思ったのは、なんといっても、小唄の師匠 栄芝 が予想以上にチャーミング だったことだ。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/03070301 2004/01/01 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕