Theodosii Spassov - Kostas Theodorou & Friends _Echotopia_ (FM, FM1578, 2003, CD) - 1)Prologue 2)Horos Ton Parthenon (Maiden Dance) 3)E Limni (The Lake) 4)Staurodromi (Crossroad) 5)Agora 6)Lukauges (Dawn Light) 7)Pindos 8)Katarraktis (Waterfall) 9)Paniguri (Celebration) 10)Kumata Allagon (Waves Of Change) 11)Proseuhi (Prayer) 12)Epilogue - Recorded 2000/4/5-8. - Theodosii Spassov (kaval,accordion,voice), Kostas Theodorou (doublebass,percussion); Haig Yazdjian (oud,voice), Nikos Sidirokastritis (drums), Dimos Dimitriadis (soprano saxophone), Manos Saridakis (Fender Rhodes), Kostas Anastasiadis (drums), Vasilis Pierakeas (guitars), Pantelis Stoikos (trumpet), Vasilis Komatas (clarinet), Apostolis Anthimos (drums), Vangelis Karipis (percussion,voice), Nikos Karajas (vibes,percussion); Lama Zopa Gyamtso (Ma Dag Ma), Karma Tjangdor (Mandra Dorje Pourpa). ブルガリア (Bulgaria) 出身の Theodosii Spassov は、ブルガリア出身の kaval (ブルガリア周辺で使われている尺八様の縦笛) だ。ロシア出身の sax 奏者 Anatoly Vapirov、Stoyan Yankoulov との The Fairy Tale Trio など、folk/roots の要素を取り入れた jazz / improv バンドなどの活動で知られている。一方、 ギリシャ (Greeve) 出身の Kostas Theodorou は、Mikis Theodorakis のバンドを はじめ、Greece の jazz シーンで活動してきた bass 奏者で、_Nostos_ (Lyra, ML0667, 1998, CD) というリーダー作もリリースしている (未聴だが)。 この2人に様々なゲストを迎えたこのアルバムは、roots-influenced jazz の秀作だ。 Theodorou の bass ソロで始まるせいもあってか、かなり jazz 色濃く感じる アルバムだ。bass は contrabass でフリーキーはもちろん弓弾きは使わないが、 Scott LaFaro 以降のしっかりソロを取る jazz bass だ。リーダーということも あってソロを取ることが多い。音がぐっと前に出てきている感があり、その bass の 響きが気持ち良い。それが僕がこのアルバムを最も気に入っている所だ。 Spassov の kaval が soprano sax だったら、drums の入ってない曲など、 Jimmy Giuffre / Lee Konitz 系の jazz に近い仕上がりに感じたかもしれない。 もちろん、Spassov の kaval は sax には無いかすれた感じの音で folk 的な 雰囲気を作りだしている。男声の地声コーラスをフィーチャーした "Proseuhi" が 最も folk 的な曲だろうか。アルメニア (Armenia) 系の Haig Yazdjian の oud と Nikos Sidirokastritis の drums による4tet編成での "Horos Ton Parthenon" と "Staurodromi" は、soprano sax / guitar の代わりに kaval / oud という感じの 音ではあるのだが、間合を旨く使って掛け合うような展開がとても気に入っている。 trumpet や clarinet フィーチャーした "Katarraktis" では複合拍子がバルカン (Balkan) 風になったり jazz 風になったりとその切り替わりが面白い。同じ編成 でも8ビートの "Pindos" も悪くないが folk 的な印象はぐっと薄くなる。Spassov が accordion を弾く"Paniguri" も複合拍子のバルカン風のダンス曲が楽しめる。 曲によってゲストを変えていろいろやっているし、このアルバムではそれが 楽しめたところもあったが。編成を固定して一枚取り組んで欲いように思う。特に、 Spassov (kaval) - Yazdjian (oud) - Theorodou (bass) - Sidirokastritis (drums) の4tetなど、もっと聴いてみたい。 Spassov と Theodorou が参加したバンドのアルバムがリリースされているので 併せて軽く紹介しよう。 Balkan Horses Band _Contact Part One_ (UBP International, UBP044, 2003, CD) - 1)Balkan 2000 2)Touch The Moon 3)Friend's Song 4)Gypsy Song 5)Viki's Song 6)Anathema 7)Kalajdzisko 'Oro - Recorded live 2001/6/23. - Tamara Obrovac (vocals,wooden flute), Theodosii Spassov (kaval,melodica,vocals), Vlatko Stefanovski (electric guitar), Aleksandar Sanja Ilic (grand piano), Emil Bucur (nai (panflute)), Kostas Theodorou (doublebass), Stoyan Yankoulov (drums,toupan), Hakan Beser (percussion), Krassi Jeliazkov (acoustic guitars,tamboura). バルカン諸国の jazz 系の有名どころを集めたバンドのブルガリアでのライヴを 集録したアルバムだ。roots-influenced jazz の jazz rock 的なビッグバンドと いう点でも、顔触れは豪華なのだが仕上がりがそれほどでも無い所も、黒海沿岸 諸国のミュージシャンを集めた The Black Sea Orchestra, _The Black Sea Project_ (Lyra, ML0660, 1998, CD) に似ている。以前からこのバンドがバルカン諸国を ツアーしているのは気付いていたが、域外では生で聴く機会が期待できないだけに、 CDで聴かれるだけでもありがたいように思う。 ちなみに、Tamara Obrovac はクロアチア (Croatia) はイストリア (Istria) 地方 出身。Transistria Ensemble などの活動で、2003年の BBC Radio 3 Awards にも ノミネートされていた。 Vlatko Stefanofski はマケドニア (Macedonia) 出身で、共産政権時代から Leb I Sol という jazz rock バンドで活躍してきた guitar 奏者だ。 Aleksandar Sanja Ilic はセルビア (Serbia) 出身で、Balkanika というバンドを 率いて、_Balkan 2000_ (PGP-RTS) というアルバムもリリースしている。 Stoyan Yankoulov は、Spassov との The Fairy Tale Trio、Zig Zag Trio、 Zone C といったバンドで活躍しているブルガリアの打楽器奏者だ。 残りの3人のメンバーは残念ながら他での活動を知らないのだが、Emil Bucur は ルーマニア (Romania) 出身、Hakan Beser はトルコ (Turkey) 出身、 Krassi Jeliazkov はブルガリア出身だ。 sources: Theodosii Spassov, http://theodosii.com/ FM Records, http://www.fmrecords.net/ The Fairy Tale Trio feat. Enver Izmailov, _Ultramarin_ のレビュー http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/02012101 Balkan Horses Band info at muzika.bosnia.ba, http://muzika.bosnia.ba/Stardust/balkan_horses_info.php3 Tamara Obrovac, http://www.tamaraobrovac.com/ Vlatko Stefanovski, http://www.vlatkostefanovski.com.mk/ Aleksandar Sanja Ilic, http://www.sanjailic.yuonline.net/ Stoyan Yankoulov info at Creative Music of East Europe, http://www.creative-music-of-east-europe.com/bu07en.htm Hakan Beser, http://www.hakanbeser.com/ UBP International, http://www.ubp.online.bg/ 2004/02/14 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/ _ _ _ Balkan Horses Band については、その後、ライブCDの続編とライヴDVDがリリース されている。 Balkan Horses Band _Contact Part Two_ (UBP International, UBP048, 2004, CD) - 1)Black Mile 2)Danube's Bank 3)Bridges 4)Kostas From Skidra - Recorded live 2001/6/23. - Tamara Obrovac (vocals,wooden flute), Theodosii Spassov (kaval,melodica,vocals), Vlatko Stefanovski (electric guitar), Aleksandar Sanja Ilic (grand piano), Emil Bucur (nai (panflute)), Kostas Theodorou (doublebass), Stoyan Yankoulov (drums,toupan), Hakan Beser (percussion), Krassi Jeliazkov (acoustic guitars,tamboura). _Contact Part One_ と同じく2001/6/23の Antique Theatre, Plovdiv, Bulgaria でのライヴを収録したものだ。1タイトル2枚組で出して良い内容とも思う。 Balkan Horses Band _A Child Is Born_ (UBP International, UBP049, 2004, DVD(PAL/0)) - 1)Balkan 2000 2)Bridges 3)Touch The Moon 4)Danube's Bank 5)Gupsy Song 6)Kostas From Skidra 7)Anathema 8)Kalajdzisko 'Oro Bonus Tracks: 1)Friend's Song 2)Black Mill 3)Viki's Song クレジットは無いが、_Contact Part One_ と _Contact Part Two_ に収録された ライヴの映像版と思われる。ライヴ映像の合間に関係ない野を駆ける馬の映像が 挟まれたりするが、それほど凝った演出は無い。リハーサルの様子と関係者の インタビューからなる "Making" と、ライブの様子の "Photo Gallery" も収録 している。 凄いパフォーマンスが見られるとか、"making" が興味深いというほどの内容では ないが、日本でライヴを観る機会がほとんど無いミュージシャンばかりなので、 こうして映像で観られるだけでもありがたいと思う。 2005/07/24 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html