Ross Daly _Microkosmos_ (L'Empreinte Digitale, ED13162, 2004, CD) - 1)Soireci 2)Ussaz Saz Semaisi 3)Kadi 4)Momentus 5)Balake 6)Abacus 7)Huseyni 8)Massalou Cisse 9)Epistrofi - Recorded in Winter 2002. - Ross Daly (lyra tarhu,lyra,saz,rebab), Balake Sissoko (cora), Kelly Thomas (lyra), Haris Lambrakis (ney), Pedro Estevan (bendir), Dimitris Psonis (santur iranien), Michalis Nikoloudis (mandole), Bijian Chemirani (zarb,daff). アイルランド系イギリス人で現在はギリシャを拠点に活動する lyra 奏者 Ross Daly の新譜は、ここ数年共演を続けている欧州を拠点に活動するイラン人打楽器奏者 Bijan Chemirani との共作に近く、Daly も参加した Bijan Chemirani のリーダー作 _Eos_ (L'Empreinte Digitale, ED13147, 2002, CD) の続編とも言える内容だ。 それは、西アフリカやスペインのミュージシャンをゲストに迎えて、東地中海的と いうより広い音楽的要素を取り込んでいるという点でだ。 続編といっても、Chemirani リーダー作と比較して、Daly リーダー作が弦楽器 中心的という違いはある。lyra の濁った 例えば西アフリカ的な要素を加えている のも Balake Sissoko も cora の弦の響きだ。lyra 等の擦弦楽器の鈍い音色ながら 伸びる音と、撥弦楽器であるkora 軽く弾ける音の対比もよく、ゆったりしたリズムが 気持ちよい。 Daly のリーダー作は Trio Chemirani の参加した _Synavgia_ (Libra Music, LM019-2, 1999, CD) にしても、組曲風の長い曲で弦のアンサンブルがゆったりと 響く感じだ。それが、いささかメリハリに欠ける感があった。この作品でも確かに ゆったりした展開が基調になっている。しかし、_Synavgia_ より良く聴こえるのは、 それぞれの曲が小編成で一曲の長さも短めで小回りが良いところだ。この小回りの 良さが、西アフリカからイランまで様々な要素をうまく散りばめることに成功して いるようにも思う。Daly と Chemirani が1対1で掛け合う "Huseyni Azeri" など、 とてもかっこいい。 最近の Ross Daly 関連の音源の中でも最も楽しめた一枚だ。 Stelios Petrakis _Akri Tou Dounia_ (L'Empreinte Digitale, ED13169, 2003, CD) - 1)Castellas 2)Stin Akri Tou Dounia 3)Fotia 4)Kyma Ke Vrahos 5)Lava 6)Raks Aksagi 7)Messomoulianitikes Kondylies 8)Karagumruk 9)Reng E Yuman 10)Sitia - Recorded 2002/11. - Giorgos Xylouris (voice) on 1,5,4; Vasilis Stavrakakis (voice) on 2,3,7; Haris Lambrakis (ney) on 4,5,8; Ioannis Petrakis (saz) on 7; Ross Daly (lyra) on 1,3,8; Hammid Khabazzi (tar) on 9; Bijan Chemirani (zarb,daf,bendir) on 1-10, Stelios Petrakis (lyra,laouto,divan saz,cura). Bijan Chemirani, _Eos_ に参加していたギリシャはクレタ (Crete) 島出身の lyra 奏者 Stelios Petrakis のリーダー作も、_Microkosmos_ 同様 Daly や Chemirani、ney の Haris Lambrakis (Savina Yannatou & Primevera En Salonico) が参加し、Daly / Chemirani 関連の一連の作品に連なる作品だ。 この作品の特徴は、10曲中6曲で歌手をフィーチャーしていること。クレタ (Creta) を テーマにしたものらしく、ちょっとしゃがれた男声によるメリスマの効いた歌声が、 いかにもギリシャ島嶼域の民謡を思わせる。演奏も、_Microkosmos_ よりもリズムが はっきりしてきもちよい。Kontrabando, _Cargo_ (Libra Music, LM026-2, 2003, CD) ほど jazz rock 的ではないが、それに似た歌心が楽しめる作品になっている。 Ross Daly with Chemirani Trio _Archives 11.06.2003_ (Theatre De La Ville / Naive, TH360102, 2004, CD) - Recorded live on 2003/06/11 at Theatre De La Ville, Paris. - 1)Earpigon, Jurjuna, Houdetsanes Kontylies, Pentozalis 2)Synavgeia 3)Abacus 4)Makrinitsa - Ross Daly (lyra,rabab,saz,tarhu), Djamchid Chemirani (zarb), Keyvan Chemirani (zarb,bendir,udu), Bijan Chemirani (zarb,daf,bendir), Stelios Petrakis (lyra,saz,kopuz,laouto), Pericles Papapetropoulos (saz,laouto), Kelly Thomas (lyra), Angelina Tkatcheva (tsimbal(santur)). Daly と Chemirani によるライブ盤もリリースされているので、併せて軽く紹介。 "Syvnavgeia" を演っていることもあってか、_Synavgia_ (1999) のライブ盤とでも いう内容だ。鈍い音色の擦弦楽器の厚い音と、zarb 等の打楽器の軽い音色を 中心としたアンサンブルだ。ライブだからといって特に熱い演奏になっていること はないけれども、厚めの弦の作りだすうねるようなノリが楽しめる出来だ。 Ross Daly, http://rossdaly.limneos.net/ Theatre De La Ville, http://www.theatredelaville-paris.com/ Naive, http://www.naive.fr/ 2004/11/13 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/