Volga _Concert_ (Sketis, SKMR004, CD, 2003) - 1)Sgovor (Agreement) 2)Po Moryu (Over The Sea) 3)Grushitsa (Pear Tree) 4)Na Gorushke (On The Hill) 5)Kisel 6)Snezhki (Snowballs) 7)Venochek (Little Wreath) 8)Tri Polya (Three Fields) 9)Golova (Head) 10)Molodushka (Grids) 11)Svaha 12)Vereyushki 13)Psalom 14)Po Zarech'yu - Recoded live at "DOM" Cultural Center, Moscow, Russia, 2002. - Angela Manukjan (vocals), Roman Lebedev (electronics,guitar), Alexei Borisov (electronics,guitar,back-vocal), Uri Balashov (zvukosuk,tibetian cup). 1990年代末からロシアのモスクワ (Moscow, Russia) を拠点に活動する Volga は、 12〜19世紀のロシアの伝承歌を electronica なトラックに乗せて歌うユニットだ。 今まで _Volga_ (Exotica, EXO99110, 1999, CD) と _Vypei Do Dia (Bottoms Up!)_ (Exotica, EXO03130, 2003, CD) の2枚のアルバムを残している。(ちなみに、 メンバーの Alexei Borisov はソビエト時代の1980年代からアンダーグラウンドな バンド Notchnoi Prospekt のメンバーとして活動している。) _Concert_ は、 Exotica レーベルから Sketis レーベルへ移籍しての第一弾となるライブ盤だ。 _Vypei Do Dia (Bottoms Up!)_ はアップテンポな deep house のビートもダンス フロア向けの仕上がりだった。しかし、この作品はで、ダウンテンポであまり明確な ビート感の無い展開が多い。微妙な電子音を使った音空間なのだが、あまり高音低音 を強調しない (できない) せいか、1990年代末以降の electronica の常套句となった glitch な音作りから外れた音感になっている。 歌唱も、_Vypei Do Dia (Bottoms Up!)_ ではアップテンポなビートに合った澄んだ ハイトーンの歌唱も聴かせてくれていたが、この作品では民謡的な声出しがベースに あるものの、エフェクトを強めにより抽象的なヴォイシングになっている。 _Vypei Do Dia (Bottoms Up!)_ のようなとっつきやすさは無いが、微妙に違和感を 覚える音にハマる佳作だ。次作 _Tri Polya_ (Sketis, SKMR011, 2004, CD) の リリースも既にアナウンスされており、今後の活躍も楽しみだ。 Starostin and Mario _Proshche Prostogo_ (Sketis, SKMR012, CD, 2004) - 1)Vesna (Spring) 2)Kumushki (O Godmothers) 3)Pastukhi (Shepherds) 4)Devki (Girls) 5)Tanya (Tanya) 6)Golova (Head) 7)Zalivochka (Music) 8)Javranenochek (Little Skylark) 9)Gluboko (Deep) 10)Yarmarka (Bazaar) 11)Katarsis (Catharsis) - Recorded at "DOM" cultural center, Moscwo, Russia. - Sergey Starostin (vocals,rojok,prosvirelka,gusli), Marien Caldarau (aka Mario) (ceramic percussion,barabanka,darbuk, cowbell,drum set). Misha Alperin (piano)、Arkady Shilkloper (horn) との Moscow Art Trio や 女性歌手 Inna Zhelannaya をフィーチャーした Farlanders、VolkovTrio との共演 等で知られる歌手・管楽器 (伝統的な笛) 奏者 Sergey Starostin と、モルドヴァ (Moldova) の folk-oriented な jazz rock バンド Trigon の打楽器奏者 Mario (Marian Caldararu) の2人のデュオのライブ盤だ。 Starostin の歌声はちょっと高い民謡的な地声で、ちょっと口ごもったような 発声は深い森の奥から響いてくるかのようである。そんな声は、Farlanders では Zhelannaya の通る声との対比で奥行を作りだしていた。しかし、Sergey Starostin & VolkovTrio, _Once There Was Sun_ (GreenWave, GRCD-2000-1, 2000, CD) や Sergey Starostin / Slava Kurashov / Vladimir Volkov, _Pod Svetlym Mesyatsem ('Neath The Moon So Bright)_ (GreenWave GRCD-2002-1, 2002, CD) といった作品 では、逆にとりとめの無さの原因にもなっていた。 この _Proshche Prostogo_ では、最低限の打楽器が伴奏ということもあってか、 深さを感じる声の響はそのままに、展開にメリハリが付いて取り付きやすくなった。 Mario の叩く打楽器は hand drum 系のものが主である。ソフトな音で緩くリズムを 刻ざみ、メリハリは付けるものの、Starostin の深い声や笛の音色を台無しにする こともない。そんな Starostin と Mario のゆったりしたかけあいが楽しめる佳作だ。 ちなみに、Volga, _Concert_ と Starostin and Mario, _Proshche Prostogo_ を リリースしているレーベル Sketis は、2002 年頃からロシアはモスクワを拠点に 活動を始めたレーベルだ。また、2枚ともモスクワにあるオルナナティヴな音楽の拠点 DOM cultural center (故 Nick Dmitriev の設立) でのライブ録音だ。ちなみに、 DOM 関連レーベルとしては、Dmitriev か作った Long Arms がある。オルタナティヴ な folk という内容、そして参加ミュージシャンからしても、1990年代から活動する Long Arms や GreenWave といったレーベルからリリースされてもおかしくない内容だ。 Sketis のようなレーベルがさらに登場したということは、さらにシーンが厚く なってきたのだろうか。今後の展開に期待したい。 sources: Sketis, http://sketismusic.ru/ Volga, http://www.volgaproject.net/ DOM cultural center, http://www.dom.com.ru/ -- 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/