Nouvelle Vague _Nouvelle Vague_ (Peacefrog, PFG051CD, 2004, CD) 1)Love Will Tear Us Apart (feat. Eloisia, originally performed by Joy Division) 2)Just Can't Get Enough (feat. Eloisia, originally performed by Depeche Mode) 3)In A Manner Of Speaking (feat. Camille, originally performed by Taxedomoon) 4)Guns Of Brixton (feat. Camille, originally performed by The Clash) 5)This Is Not A Love Song (feat. Melanie Pain, originally performed by P.I.L.) 6)Too Drunk To Fuck (feat. Camille, originally performed by Dead Kennedys) 7)Marian (feat. Alex, originally performed by The Sisters Of Mercy) 8)Making Plans For Nigel (feat. Camille, originally performed by XTC) 9)A Forest (feat. Marina, originally performed by The Cure) 10)I Melt With You (feat. Silja, originally performed by Modern English) 11)Teenage Kicks (feat. Melanie Pain, originally performed by The Undertones) 12)Psyche (feat. Sir Alice, originally performed by Killing Joke) 13)Friday Night, Saturday Morning (feat. Daniella D’Ambrosio, originally performed by The Specials) - Arranged, Produced and Mixed by Marc Collin and Olivier Libaux. - Olivier Libaux (guitars,bass,keyboards), Marc Collin (keyboards,programming); Nicolas Deutsch (doublebass) on 1,2,3,4. フランス (France) の club music シーンで活動してきた2人によるプロジェクト Nouvelle Vague は、1980年前後の "New Wave" の曲を "bossa nova" のアレンジで 演奏するというもの。(ちなみに nouvelle vague も new wave も「新しい波」という 意味、bossa nova も「新しい感覚」という似たような意味だ) 駄洒落から始まった のではないかと思いたくなるようなプロジェクトだが、渋目の選曲といい、かなり 秀逸なカヴァー集だ。 アレンジのスタイルは bossa nova といっても1960年代風のそれではなく、 1990年代末から隆盛している club bossa (例えば、BossaCucaNova とか) と言った 方が適切だろう。歌手は全て女性で、高くちょっと細めの声で軽く歌っている。 オリジナルは new wave といっても "New Romantics" なメインストリーム・ポップの 曲は選ばれておらず、むしろ、post-punk な曲が中心となっている。ライナーノーツ でも、1978年から1981年にかけての post-punk な音楽のスタイル上の特徴を "Gang Of Four-style angularity, Joy Division portent and Wire-like inscrutability" と書いており、このような曲を bossa nova スタイルで演奏する ことが、このバンドのコンセプトになっている。 こういうコンセプトは、左翼プロパガンダソングをラウンジなアレンジで歌うという Stereolab のコンセプトを連想させられるものがあり、これが1990年代半ばの作品で あれば、post-rock 的な文脈の中に位置付けられたかもしれない。しかし、この作品 を聴いていて元曲脱構築的な面白さよりも、もっとストレートに楽しめてしまう ところがあった。post-punk 期のソングライティングの良さに気付かされる所も あったし、1980年前後の post-punk 期のエッジーな音楽と Les Disques Du Crepuscule や Cherry Red が1980年代前半にリリースした bossa nova 風のアコースティックな 音楽との人脈的ではなく音楽的な連続性を再認識させられたようにも思う。そういう 面白さもある作品だと思う。 さて、個々の曲に話を移すと、このアルバムのハイライトは、伝説的な曲でもある Joy Division, "Love Will Tear Us Apart" の気怠い感じの bossa から、Vince Clark 時代の名曲 Depeche Mode, "Just Can't Get Enough" のアップテンポな club bossa へ、Tuxedomoon, "In A Manner Of Speaking" の Winston Tong の哀愁の 詠唱をサウダージに置き換えたような曲へ連なる3曲だろう。acoustic bass を フィーチャーして rock 色を払拭することに成功している。 それ以降は rock 色をそれなりに残したアレンジになっている。元曲の良さといえば XTC, "Making Plans For Nigel" など可愛らしい仕上がりだ。しかし、それよりも、 Modern English, "I Melt With You" から John Peel のテーマ曲 The Undertones, "Teenage Kicks" が、Everything But The Girl や Pale Fountains を連想させら れる仕上がりになって、最も印象に残った。"16 Days" 〜 "Gathering Dust" とか This Mortal Coil でカヴァーされたこともあったわけで、Modern English って実は 曲作りも良かったんだなぁ、と感慨深い。Modern English だけでなく The Cure や Sisters Of Mercy もカヴァーしており、goth 趣味も入っているのかなぁ、と思った りもした。 The Clash, "Guns Of Brixton"、Dead Kennedys, "Too Drunk To Fuck"、Killing Joke, "Psyche" あたりになると、元曲を消化しきれていないかなぁ、とも思うが、全体の 中ではそれもアリと思うくらいの説得力はあると思う。 良い仕上がりなだけに、もっと他の曲も取り上げて欲しいと思ってしまう。特に、 ライナーノーツで post-punk の形式上の典型として、Gang Of Four、Joy Division、 Wire の3バンドを挙げているのに、Gang Of Four と Wire の曲をやっていないのは 残念だ。あと、Buzzcocks か Magazine の曲も演って欲しいと思う。しかし、2枚目 3枚目と続くと飽きてしまいそうで、一枚できっぱり止めた方が潔いかもしれない、 とも思う。 sources: Peacefrog, http://www.peacefrog.com/ Nouvelle Vague, http://www.nouvellesvagues.com/ 2004/12/18 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/