2004年にリリースされた新録、もしくは、ここ2〜3年の新録リリースで2004年に 落穂拾いしたものの中から選んだ10枚。 第一位: Nouvelle Vague _Nouvelle Vague_ (Peacefrog, PFG051CD, 2004, CD) 1980年前後の "New Wave" の曲を "bossa nova" のアレンジで演奏するという このプロジェクトは、1990年代半ばの作品であれば、post-rock 的な文脈の中に 位置付けられたかもしれない。しかし、脱構築的な面白みというより、post-punk 期 のソングライティングの良さ、1980年代前半の bossa nova 風のアコースティックな 音楽との連続性を再認識させられた作品でもあった。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/04121801 第二位: Bombes 2 Bal _Danse Avec Ta Grand-Mere_ (Tot Ou Tard, 8345 10520 2, 2004, CD) 南仏オクシタンの伝承曲をベースにブラジルのノルデスチ地方の音楽 forro の要素を 大きく取り入れ、歯切のいい accordion の演奏と、triangle や tambourin の刻む リズム、そしてがやがや賑やかな感じすらある女性4人のリズミカルな歌唱が産み出す、 ノリの良い2ビートがとても楽しい作品だ。タイトルの「おばあちゃんとダンス」も、 時代精神を感じさせて良い。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/04112301 第三位: Theodosii Spassov - Kostas Theodorou & Friends _Echotopia_ (FM, FM1578, 2003, CD) ブルガリア周辺で使われている尺八様の縦笛 kaval の吹き回しと、しっかりソロを 取る doublebass の絡みが気持ちよい、roots-influenced jazz の秀作だ。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/04021401 第四位: _New Jazz Meeting Baden-Baden 2002_ (hatOLOGY, 2-607, 2003, 2CD) jazz、new music (現代音楽)、electronica の3つのジャンルからのトリオを重ねた、 3つの要素が渾然一体となっているというよりモザイク様に聴こえる秀作だ。 2004年に亡くなった Steve Lacy がその末期にこれだけ実験的な作品に取り組んで いたというのも、感慨深い。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/04071101 第五位: La Talvera _Poble Mon Poble_ (Cordae La Talvera, TAL10, 2003, CD) reggae 的なビートやダブワイズな音処理が、オクシタンの伝統的な音楽、polka や waltz のようなダンス曲にハマって気持ち良い。ragga 的なMCも、trobador 的な シャベクリと巧く融合している。その絶妙な組み合わせが楽しい秀作だ。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/04101701 第六位: Tim Berne Hard Cell _Electric And Acousitc Hard Cell Live_ (Screwgun, SC70014, 2004, CD) Taborn のパーカッシブな piano が、1990年代的な bass-less guitar トリオの センスの中に、1970年代 free jazz で流行った bass-less piano trio の手数多く 音を詰め込むような雰囲気を持ち込んでいる。その勢いが気持ち良く、面白い秀作だ。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/04122701 第七位: David Yengibarjan with Frank London _Pandoukht_ (Budapest Music Center, BMCCD087, 2003, CD) sax や clarinet ではなく trumpet と accordion の掛け合い、そしてリズムを刻む darbuka や frame drum の硬質な響きが気持ちよい。アルメニアの伝承曲を元にした 曲やユダヤの伝承曲を元にした曲をやりつつ、バルカン (Balkan) 〜 アナトリア (Anatolia) 風の tango / mussette とでもいう無国籍風の仕上がりになっている。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/04081801 第八位: Pietra Montecorvino _Napoli Mediterranea_ (L'Empreinte Digitale, ED13172, 2003, CD) シャガれた Montecorvino の歌声、ちょっと甘いハイトーンの女性のコーラス、 落ち着いた男性の歌声、遠景の男声のラップなどが交錯して立体感が生まれている。 frame drums で刻まれるリズム、弦楽器 (特に ud や mondolocello) の音色と 旋律が醸しだす地中海的な雰囲気も良い。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/04053001 第九位: Kontrabando _Cargo_ (Libra Music, LM026-2, 2003, CD) リズムを刻む楽器も伝統的な打楽器や撥弦楽器 (kanun) を多めにフィーチャーし、 伝統的な弦楽器を中心としたアンサンプルの音色を生かしつつ、現代的なセンスで バルカン南部から東地中海にかけての伝統的な音楽に基づく曲を歌う。一歩間違うと クドくなるぎりぎり手前くらいにメリスマを効かせて渋めに歌う、哀愁を感じる 歌い方がとても良い。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/04031401 第十位: Burhan Ocal / Pete Namlook _Sultan Orhan_ (Doublemoon, DM0024, 2004, CD) トルコの伝統的な楽器と ambient techno の顔合わせだが、Ocal の叩き出す硬質な ビートだけでなく、ビートにのって掻き鳴らされる撥弦楽器 (saz か oud)、zurna (伝統的な木管楽器) で吹かれる Gypsy 風のフレーズや human beatboxing など、 打楽器が刻むビート以外の音も楽しめる。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/04122901 番外特選 Wire live at Club Quattro, Tokyo on 2004/02/29. パロディの対象として「rock の美学」を戯れるのではなく、それに対して全力で ぶつかっていくようないさぎよさを感じた。いや、最高の rock を演奏することに よって、「rock の美学」と「techno の技法」にまつわる矛盾を体現しようとして いるかのような、そんなライブだった。Colin Newman の言う "Car Clash Aesthetic" を見せ付けられたような気がした。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/04022901 2005/01/01 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/