Fra Lippo Lippi _The Early Years_ (Rune Arkiv, RACD101, 2003, CD) - 1)Some Things Never Changes 2)A Small Mercy 3)Barrier 4)Sense Of Doubt 5)The Treasure 6)Show Sway 7)Now And Forever 8)French Painter Dead 9)Out Of The Ruins 10)A Moment Like This 11)In Silence 12)Recession 13)The Inside Veil 14)I Know 15)Quiet 16)Lost 17)In A little Room 18)An Idea - 1-8) Originally released as _Small Mercies_ (Uniton, U017, 1983, LP). 9-16) Originally released as _In Silence_ (Uniton, U003, 1981, LP). 17,18) Originally released on the B-side of _Now And Forever_ (Uniton, U005, 1982, 7"). 1980年にノルウェー (Norway) から登場したバンド Fra Lippo Lippi の初期の Uniton レーベル時代の主要な録音 1st アルバム _In Silence_ (1981) と 2nd アルバム _Small Mercies_ (1983) に、シングル _Now And Forever_ (1982) のB面の曲を追加した再発CDがリリースされている。 「ノルウェーの Joy Division」と言われた程、_In Silence_ で聴かれる演奏は post-punk な rock だ。しかし、その後の、_Now And Forever_ と _Small Mercies_ は、Joy Division というよりも The Durutti Column に近い。Vini Reilly の ような繊細な guitar をフィーチャーしているわけではないが、piano の音の使い 方が近いこともある。特に、Bruce Mitchell っぽい前アクセントでつんのめる ような drums は、jazz ではなく rock をルーツに持っているんだと思わせる。 CDで通して聴いていると当時の Factory レーベル界隈の音作りを連想させられる。 ちょっとオフ気味で押し殺したような、時折ひきつったような歌唱と、拙さも あるが緊張感ある演奏で素朴な旋律をミニマルに淡々と押さえていく感じ、 そしてベースラインが、1980s初頭の post-punk な時代を感じさせてくれる。 「ノルウェーの」という文脈抜きに聴いて楽しめるほど個性的ではないが、 Fra Lippo Lippi, _The Early Years_ はノルウェーの post-punk の最良の 部分を記録したアンソロジーだろう。 ちなみに、このCDに収録されなかった Uniton 時代の音源としては、_The Treasure_ (Uniton, U014, 1983, 12") のB面の "A Moment Like This" と "Time Transfixed" のライブ録音2曲と _Say Something_ (Uniton, U023, 1984, 12") に収録された "Say Something" と "Out To Sea" の2曲がある。Uniton 以前の音源としては、 _Tap Dance For Scientists_ (private release, 7") や Various Artists, _Fix Planet_ (Ata Tak, WR06, 1981, LP) に収録された "Fabric Wardrobe" がある。 2枚組で良いからこれらの録音も含めた形でリリースして欲しかった。 ちなみに、Fra Lippo Lippi をリリースしていた Uniton は1980年代前半に ノルウェーで活動した post-punk な独立系レーベルだ。Fra Lippo Lippi や DePress、Holy Toy といったノルウェーのバンドのリリースだけでなく、 Eyeless In Gaza, _Pale Hands I Loved So Well_ (Uniton, U004, 1982, LP) や Dome, _Will You Speak This Word_ (Uniton, U011, 1983, LP) といった UK の post-punk バンドのアルバムを、ライセンス盤ではなく独自制作でリリース していた。Rough Trade、Cherry Red、Factory、Mute といった UK の独立系 レーベルのノルウェー版ともいえるレーベルだ。廃盤だが、サンプラー盤 Various Artists, _Burning The Midnight Sun_ (Uniton, U020, 1984, LP) で Uniton の活動を垣間見ることができる。 またこの再発をした Rune Arkiv は、Rune Kristoffersen (ex-Fra Lippo Lippi) が運営している Rune Grammofon (Supersilent などのリリースで知られる 1990年代末から活動するノルウェーのレーベル) の下に作られた再発レーベルだ。 いまのところ、Fra Lippo Lippi の2枚のリイシューしか無いが、是非、Uniton 音源の再発CD化をして欲しい。 ちなみに、ジャケットデザインは Rune Grammofon でお馴染の Kim Hiorthoey。 彼らしいミニマルなデザインで最低限のクレジットしか載せていない。新録なら これでも良いかもしれないが、リイシュー盤としては物足りない。もっと資料的 な側面にも配慮して、オリジナルのジャケット・デザインや当時の背景を知らせる ようなエッセーや解説文、バンドのディスコグラフィなどを載せたブックレットを 付けて欲しかった。 sources: Fra Lippo Lippi, http://www.fralippolippi.com/ Rune Arkiv / Rune Grammofon, http://www.runegrammofon.com/ Supersilent / Rune Grammofon のレビュー, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/00022002 2005/03/02 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html