Jean-Luc Fillon _Oboa_ (Deux Z, ZZ84135, 2003, CD) - 1)Aaa... Atch... 2)Atchoumba 3)From Time To Time 4)Note For All 5)Ex Tempore 6)Blue Little Suede Shoes 7)Pour Toujours 8)Certesa 9)Durme 10)Sans Feu Ni Lieu 11)Cheops - Recorded 2002/12/2-6. - Jean-Luc Fillon (oboe,cor anglais,contrabass), Joao Paulo (piano); Carlo Rizzo (tambourins) on 1,2,4,8,10,11. Jean-Luc Fillon はフランス (France) の jazz / improv. シーンで活動する ミュージシャンで、演奏するのは、oboe と cor anglais (English horn) という double-reed の木管楽器だ。jazz の文脈で oboe や cor anglais をよく使う ミュージシャンといえば Paul McCandless (Oregon) をまず思い出すが、 彼にしても saxophone や clarinet といった single-reed との持ち替えで、 double-reed 専門 (Fillon もたまに doublebass を弾くが) はあまりいない。 (ただし、Cecil Taylor 界隈で活躍する bassoon 専門の Karen Borca とか いるので、全くいないわけではない。) このアルバムでは、ポルトガル (Portugal) 出身の Paulo の強めで華やかな音色の piano と、イタリア (Italy) 出身の Rizzo が刻む軽快かつ多様な tambourin の リズムに乗って、Fillon の軽快でノリの良い double-reed の吹きっぷりが楽しめる。 single-reed に比べてちょっと鼻にかかったような音色であまり音を切らずに 細くフレーズを吹きまくる。"Blue Little Suede Shoes" (Charlie Parker) など スリリングだ。 Jane Bunnett - Don Pullen や Marty Ehrlich - Myra Melford のような soprano saxophone - piano のデュオにも似ているが、oboe, cor anglais だけに もっと柔和な印象を受ける。あえて bass - drums の強いリズムを加えず、 Rizzo の tambourin にしたのも、oboe の柔和な音色と軽快なノリが生きて 良かったように思う。 このアルバムが気に入っているもう一点は、さりげない地中海の香りだ。Rizzo の tambourin が刻むリズムもそうなのだが、メロディにもそれがある。特に、Paulo 作曲の "Certesa" や、Savina Yannatou & Primavera En Salonico が _Spring In Salonika_ (Lyra, ML4765, 1995, CD) で取り上げた Sephard の伝承曲 "Durme" など ("Durme" は Joao Paulo / Peter Epstein / Ricardo Dias, _Naster_ (MA Recordings, M059A, 2001, CD) でも演っている)。ライナーノーツの題も "Reve de Troubadours"「トロバドールの夢」であり、実際、地中海的なものを コンセプトに持っているのだろう。これで Fillon が classical な oboe でなく 伝統的な Langdocian oboe を吹いていたら、とも思う。こういう所は、地中海音楽の レーベル L'Empreinte Digitale を姉妹レーベルに持つ マルセイユ (Marceilles) の レーベル Deux Z ならではと言えるかもしれない。 sources: Jean-Luc Fillon, http://www.jeanlucfillon.com/ 2005/03/21 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html