Kocani Orkestar meets Paolo Fresu & Antonello Salis _Live_ (Il Manifesto, CD143, 2005, CD) - 1)Notti A Mogadiscio 2)Gajda 3)...Del Viaggio 4)Papigo 5)Variazioni Sul Ballo 6)Jacquelina 7)Siki Siki Baba 8)Goodby Macedonia 9)Red Bull - 1,3,5,7,9) Recorded live in Ravenna, 2004/2/25. 2,4) Recorded live in Foligno, 2004/2/29. 6,7) Recorded live in Roma, 2004/3/1. - Paolo Fresu (trumpet,bugle,effects), Antonello Salis (piano,accordion); Kocani Orkestar: Durak Demirov (saxophone), Turan Gaberov (trumpet), Sukri Kadriev (trumpet), Nijazi Alimov (bariton tuba), Saban Jasarov (tapan), Suad Asanov (bass tuba), Dedzai Durmisev (bariton tuba), Sukri Zejnelov (baroton tuba), Dzeladin Demirov (clarinet,vocals), Ajnur Azizov (vocals). イタリア (Italy) の jazz / improv. シーンで活躍する Fresu と Salis の2人 (この2人に Furio Di Castri (bass) を加えた trio P.A.F. 等の活動で知られる) がマケドニア (Macedonia) の Gypsy brass バンド Kocani Orkestar (Naat Veliov の方ではなく、Crammed と契約している方) が競演したライヴ盤がリリースされた。 バルカン (Balkan) の Gypsy brass のドライブ感ある tuba のベースライン、 oriental なモードで吹まくるリードの trumpet や clarinet、zurna (もしくは その類似の double-reed の楽器)、メリスマの効いた男性の歌声に、live electronics の effects をかけ漂うような Fresu の trumpet や時折りフリーな演奏になる Salis の piano や accordion の jazz もしくはイタリアの folk を感じさせる ソロが絡むという展開だ。Fresu が率い Salis も参加したサルディーニャ (Sardinia) 音楽のプロジェクト _Sono 'E Memoria_ (ACT, 9291-2, 2001, CD) のバルカン版と でもいう感もある。今までの Kocani Orkestar や P.A.F. などの作品などで聴かれる 互いの持ち味を充分に生かした、楽しい佳作に仕上っている。 electric trumpet と piano の抽象的な響きから始まる "Notti A Mogadiscio" から いったい何が始まるのだろう、と掴まれる。Fresu によるテーマはバルカン風と いうよりイタリア風と思われる節回しだが、ソロが入れ替わるうちに次第に節回し が訛っていくような所も面白い。最も好きなトラックは "Variazioni Sul Ballo" だ。 曲名からサルディーニャの音楽をベースにしていると思われるのだが、本来は launeddas (bagpipe の一種) で吹かれるのであろうと思われる節を Kocani の フロント隊が吹きつつ、ぐいぐい引っ張る tuba のベースラインに乗って、 Fresu や Salis が勢いのあるソロを聴かせてくれる。"... Del Viaggio" では Salis が派手にパーカッシヴでフリーな piano ソロを、tuba と tapan の着実な 演奏を背景に聴かせてくれる。 よりバルカン風の雰囲気が楽しめるのは、zurna 風の double reed のソロが大活躍 するアップテンポな "Jacquelina" や、景気の良い "siki siki baba" というかけ声 も楽しめるお馴染の曲 "Siki Siki Baba" だろう。だた、そのままやっているわけ ではない。"Siki Siki Baba" にしても頭の Salis はそれとは判らないほどだし、 Azizov の歌唱に合わせて吹かれる Fresu のソロの流麗さは、曲に明るい色を加えて とてもかっこよい。 確かに、このCDを聴いていても共演によって新しい何が生まれているという程では 無いのは確かだ。しかし、互いの音楽要素を充分に消化して、それを生かした上で よく混ぜ合わされた演奏になっていると思う。これは、あるフェスティバルでの 1回きりの特別セッションでは得られないであろうものだとも思う。 このCDに収められたのは去年2004年のツアーでの3回のライブから選ばれている。 しかし、この顔合せは2003年には始まっており、今年2005年夏もこの組み合わせでの ツアーが予定されている。半ばレギュラーな活動になっているのだ。そういう継続的 な活動の中があってこそ、新しい展開も生まれてくるとも思う。そういう点でも、 今後の展開を期待したい。 sources: Kocani Orkestar, http://www.crammed.be/kocani-orkestar/ Paolo Fresu, http://www.paolofresu.it/ Antonello Salis, http://www.antonellosalis.com/ Il Manifest, http://musica.ilmanifesto.it/ 2005/06/05 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html