Saxofour + Maria Joao _European Christmas_ (Universal (Austria), 986 880-2, 2004, CD) - 1)Adeste Fideles 2)Staffan Var En Stalledraeng 3)Natal De Elvas 4)At Christmas Everything Is Possible 5)Petit Papa Noel 6)Mennybol Az Angyal - Dicsoseg Mennyban Az Istennek 7)The First Noel 8)Maria Durch Ein Dornwald Ging 9)Gloria In Excelsis Deo 10)Oba Heidschi Bumbeidschi 11)Kommet Ihr Hirten 12)An Fried'n Dafrogn - Produced by Saxofour. Recorded in Upper Austria, 2004/9/29,30. Maria Joao was recorded in Lisbon, 2004/10/3. Remixed and Masterd in Upper Austria, 2004/10/6,7. - Florian Bramboeck (alto, tenor & baritone saxohones, bass clarinet, recorder, voice), Klaus Dickbauer (alto & baritone saxophones, clarinet, bass clarinet, recorder, voice), Christian Maurer (soprano & tenor saxophones, clarinet, bass clarinet, recorder, voice), Wolfgang Puschnig (alto saxophone, flutes, bass clarinet, recorder, bamboo flute, vocals on 4); Maria Joao (vocals) on 1, 3, 8, 10. Saxofour は Vienna Art Orchestra の Bramboeck, Dickbauer, Puschnig と Upper Austrian Jazz Orchestra の Maurer というオーストリア (Austria) の jazz / improv シーンで活動する4人の woodwind 奏者によって1991年に結成 された 4tet だ。_European Christmas_ 以前に、オーストリアの独立系レーベル PAO から3枚、メジャー Universal から1枚のアルバムをリリースしている。 一方、Maria Joao は、1980年代後半から jazz / improv の文脈で活動する ポルトガル (Portugal) の女性歌手だ。ちょっと鼻にかかったような、しかし 華のある個性的な声で、自由にスキャットやヴォイシングするようなスタイルで、 Aki Takase との free jazz / improv に近い作品から、Mario Laginha との ポルトガルや ブラジル (Brazil) の音楽の影響も感じる作品まで、様々な作品を 残している。 2004年にクリスマス・アルバムとしてリリースされた _European Christmas_ は、 Saxofour が Joao を初めてフィーチャーした作品だ。12曲中10曲が伝統的な クリスマス曲なのだが、曲は地元のポルトガルやオーストリアのものだけではなく、 スウェーデン (Sweden)、ハンガリー (Hungary)、イングランド (England)、 ドイツ (Germany)、フランス (France)、ボヘミア (Bohemia) と欧州各地から 広く採られている。メンバーの出自から予想されるように、スムーズに綺麗に 聴かせるような演奏ではないが、基になる旋律を生かしたものになっている。 この作品では、saxophone だけではなく、recorder や bamboo flute のような folk 的な楽器も用いられており、clarine も多用されている。伝統的な旋律も 併せて、folk/roots 的な雰囲気が強い作品になっている。甲高い recorder の 響きと少々くぐもった clarinet の響きが織りなすスウェーデンの伝承曲 "Staffan Van En Stalledraeng" やポルトガルの伝承曲 "Natal De Elvas"、 ハンガリーの伝承曲 "Mennybol Az Angyal - Dicsoseg Mennyban Az Istennek" など、特に気に入っている。 もちろん recorder や clarinet の対比で、saxophone の華やかな音色も生きるし、 管のみのアンサンブルならではの baritone saxophone や bass clarinet の 低音の響きもとっても気持ちよい。 Joao をフィーチャーしているのは4曲だけだが、管4本の変則的なバックに 個性的な歌唱が生きている。特に、ポルトガルの伝承曲 "Adeste Fideles" や "Natal De Elvas" は、自由度高いバックを得て自由に歌っているという感じで 気にいっている。クレジットによるとバックの演奏を録音した後にそれに合わせて 録音したようだが、そんなことを感じさせない仕上がりだ。 クリスマス・アルバムとしても良いかもしれないが、変則的なアンサンブルと 個性的な女性ヴォーカルが伝承曲を気持ちよく脱構築する folk/roots-orieneted jazz の秀作だろう。 Saxofour + Maria Joao _Cinco_ (Universal (Austria), 06249873130, 2005, CD) - 1)Em Tao Pouco Tempo Escureceu Tanto 2)Mock 3)A Lua Partida Ao Meio 4)From Innsbruck To Porto 5)Um Amor 6)Um Choro Feliz 7)Anjos De Papel 8)Ha Gente Aqui 9)Corazon Perdido 10)Preto E Branco 11)Charles On A Sunday With Sunday Clothes 12)Edelweiss - Produced by Saxofour. Recorded 2004/5/3,4 - Maria Joao (vocals, lyrics), Florian Bramboeck (alto, tenor & baritone saxophones, bass clarinet, voice), Klaus Dickbauer (alto & baritone saxophones, clarinet, bass clarinet, voice), Christian Maurer (soprano & tenor saxophones, clarinet, bass clarinet, voice), Wolfgang Puschnig (alto saxophone, flute, bass clarinet, voice). _European Christmas_ に続いてリリースされた Saxofour の新作は、Joao を 全面的にフィーチャーした作品になった。recorder のような楽器は使われず flute や clarinet の音も少なくなり、Joao の歌唱も抽象的なスキャット、 ヴォイシングを使ったものが多くなり、folk/roots 的な要素はかなり後退している。 しかし、今回は一緒に録音したこともあるか、saxophone と歌声の息のあった 掛け合いが楽しめるように思う。特に、"From Innsbruck To Porto" や "Ha Gente Aqui" でアップテンポで時折アウトになるような曲が気に入っている。 "Ha Gente Aqui" をはじめ "Em Tao Pouco Tempo Escureceu Tanto" や "Um Amor" などは Maria Joao, _Mumadji_ (Univeral (Portugal), 014 077-2, 2001) でも 演っている曲だ。Mumadij 4tet での演奏も悪くないが、彼女の個性的な歌声は、 Saxofour のような変則的なアレンジの中の方が映えるように思う。 エンディングでは映画 _The Sound Of Music_ (1965) で知られる "Edelweiss" を 取り上げているのだが、時々調子っぱずれた叫び声のようになるのも可笑しい。 こういう変則的なアンサンブルの場合、既存の曲の脱構築/再解釈が生きることも 多いので、folk の伝承曲や jazz のスタンダードも取り上げて欲しかった。 それが少々物足りなかった点だ。 sources: Saxofour, http://www.toene.at/saxo4/ Maria Joao, http://www.mariajoao.org/ 2005/11/20 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html