Techno Roman Project _Feleque_ (Elec-Trip, no cat.no., 2003, CD) - 1)Bahce Duvarini Astim 2)Mavi Boncuk (Bakkal Mix) 3)Havada Turna Sesi 4)Kaynanamin Donu 5)But Kilina 6)Sira Sira Siniler 7)Mavi Boncuk (Blue Bead 3500) 8)Pembe 9)Bu Candi Rom 10)Guzelligin Sesleri 11)Selanik Zeybegi - Musical Direction: Lari Dilmen. - DZA: Ege Madra & Sinan Noyan (keyboards, sampling, programming); Lari Dilmen (bendir, percussion, programming); Selim Sesler (clarinet), Hasan Demir (ud), Huseyin Karabulut (darbuka), Can Olgun (kemance), Bulent Sesler (kanun); Ramazan Sesler (clarinet) on 10; Ismail Soyberk (bass guitar) on 6, 9; Izzet Kizil (darbuka) on 1, 4; Adnan Muyan (ud) on 1, 4; Senem Diyici (vocal) on 2. トルコのトラキア (Thrace, Turkey) 地方ケシャン (Kesan) のジプシー (gypsy) で clarinet の名手 Selim Sesler が率いるアンサンブルと、イスタンブール (Istanbul) の electronica / club music シーンで活動する3人のDJ/ミュージシャンと作った プロジェクトが Techno Roman Project だ。 バルカン風のジプシー音楽と techno / trip hop 的な打ち込みを併せた音楽だが、 このプロジェクトは単純に remix しているわけではない。特に、面白いのは、 "Havada Turna Sesi" や "Kayananamin Donu"、"Bu Candi Rom" のような変拍子の リズムをそのまま生かしている曲だ。(もちろん四つ打ちもあるが。) 変拍子では ないが、Aphex Twin か Funkstoerung を思わせるギクシャクビートに Selser の clarinet が漂う "Selanik Zeybegi" も、そんな変拍子ビートに自然に混在している。 そういう所が特に気に入っている。 down beat breakbeats がかったオープニング "Bahce Duvarini Astim" では、 1990年代から主にフランス (France) の jazz / improv. の文脈で活動してきた (Okay Temiz との共演録音もある) 女性歌手 Senem Diyici (アセルバイジャン系 (Azerbaijani) の父とクルド系 (Kurdish) の母を持つ) が、少々エキセントリックな メリスマを効かせた歌を聴かせてくれる。Buda Musique や Kalan からのリリースで 聴かれる彼女の歌声は、あまりメリスマを効かせずさっぱりめなだけに、少々意外 だったが、少々ハイトーン目の声の癖は変わらないし、Techno Roman Project での 歌声も悪くない。 惜しむらくは、若干 bass の音が弱いところだろうか。darbuka の音などもあり 若干チャカポカした印象を受ける所もある。音作りに失敗しているというより、 欧米の club music と違い低音が必要とされていないのかもしれないが。 このプロジェクトが興味深いのは、一回性の企画物では無いと思われるところだ。 ライナーノーツによると、きっかけは、Baba Zula などにフィーチャーされている カナダ (Canada) 出身在トルコの女性歌手 Brenna McCrimmon が Sesler と作った アルバム _Karsilama_ (Kalan, 1998) にまで遡れるようだ。また、このプロジェクト の中心人物 Dilmen も、これに先立ち、Senem Diyici / Lali Dilmen, _Zipcikti_ (ADA, 2003) をリリースしている。そういう一連の動きの中から生まれてきた音 だといえるだろう。 このリリースをしている Elec-Trip は、自称 "Istanbul Fusion Sound" を リリースしている、2002年に活動を始めたイスタンブールの独立系レーベル。 "ethnic electronic" とでもいう感じのリリースが多いようだが、トルコ版 indie pop/rock とでもいうような音楽もリリースしている。Doublemoon からも リリースがあった女性歌手 Sultana の新作もリリースしている。"ethnic electronic" のコンピレーション _Istanbul Calling_ に収録されている音も、泥臭い rap / ragga というより jazzy な house や trip hop のような洗練された音に なっている。今後、この手のシーンがどうなっていくのか、注目したい。 sources: Elec-Trip, http://www.elec-trip.com/ Senem Diyici, http://www.labuissonne.com/senem-diyici/ 2005/12/04 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html