Kardes Turkuler _In Concert: 2000-2001 Istanbul Harbiye Cemil Topuzlu Open Air Concert_ (Kalan, 02, 2004, DVD(PAL/all)) - In Concert: 1)Mirkut 2)Nevruz Turku 3)Demme / Alagozlu Nazli Pirim 4)Turna 5)Sukar Sukar 6)Kerwane 7)Bingol 8)Dargin Mahkum 9)Haynirina 10)Duzgin Bawo 11)Serso / Cele Bercelam 12)Mirkut; Videos: 1)Kara Uzum Habbesi 2)Cesm-i Siyahim 3)Denize Yakilan Turku; Interview on TV, 2003/1/2. - Production: Hasan Saltik / Kalan Muzik. - Kardes Turkuler: Vedat Yildirim (vocals, santur), Fehmiye Celik (vocals), Feryal Oney (vocals), Selda Ozturk (vocal, suspended drum, tomtom, bendir tambourine, erbane, effective percussion), etc. Kardes Turkuler は、トルコ (Turky) に住む様々な民族の folklore (民俗音楽) を 伝統的な楽器を用いつつ同時代的なアレンジで聴かせるバンドだ。イスタンブール (Istanbul) にある 国立ボアジチ (Bogazici) 大学の Folklore Club による公演の ためのプロジェクトとして1993年に結成、1995年からはダンス部門と演劇部門を含む Bogazici Gosteri Sanatlan Toplulugu (BGST; Bogazici Performing Arts Ensemble) の音楽部門として活動している。。 トルコ語で "Songs Of Fraternity" (友愛の歌) というバンド名は、トルコに住む 各民族の友愛による共存という意を込めて付けられている。彼等の取り上げる folklore はトルコ (Turkish) はもちろん、クルド (Kurdish。クルマンジ (Kurmanji) とザザ (Zaza) に分かれる)、アルメニア (Armenian)、ジプシー (Roma) といった 主要なものだけでなく、アラブ (Arabic)、ギリシャ (Greece)、ラズ (Laz)、 グルジア (Georgian)、チェルケス (Circassian)、マケドニア (Macedonian)、 アレヴィー (Alevi) にまで亙っている。メンバーにはトルコ語とクルド語しか ネイティヴのみ、自らの民族的なアイデンティティに依らずパートリーを広げている。 1996年にアゼルバイジャン (Azerbaijan) の歌を取り上げた Hardasan (Guvercin Muzik, 1996) をヴォーカリスト Feryal Oney 名義でリリースした後、 1997年以降 Kalan レーベルから 6タイトル (うち2枚が映画のサウンドトラック) をリリースしている。特に、Hemuvuz (Kalan, CD263, 2002, CD) や、最新作 Bahar (Kalan, CD346, 2005, CD) は、残響処理や electronics 使いという点でも、 ヨーロッパ、特に北欧やフランスなどでの folk/roots / tradional music の 同時代的な試みのトルコ版といった感じだ。この2枚は、ジャケットデザインも モダンに洗練されおり、これから Kardes Turkuler を聴こうという人にお薦めだ。 _In Concert: 2000-2001 Istanbul Harbiye Cemil Topuzlu Open Air Concert_ は、 そんな彼らの2000-2001年のライヴを収録したDVDだ。ライヴ演奏12曲分だけでなく、 ビデオ・クリップ3曲と TVインタビュー (イスタンブールのビルギ (Bilgi) 大学 での討論会の録画) も収録、日本ではなかなか判らない彼らの活動の全体像を知るのに うってつけのDVDとなっている。 ライブでの編成は、saz や darbuka, frame drum のような伝統的な楽器に、electric guitar, electric bass, violin, drums, accordion といった西洋楽器、それに コーラスからなる総勢17名だ。ステージ上では二段に並び、時々ソリストが舞台中央 に歩み出して演奏し歌う。派手なアクションやビジュアルでの演出は無い。 同時代的な音楽要素という点では、electric guitar / electric bass / drums も 使っているし、electronics の effect も使っているが、アコースティックな楽器の 音色を生かしている。また、アクションやビジュアルでの演出が控えめなこともあり、 どちらかといえば、rock / pop より jazz の方に親和性の高い音楽、ライブのように 感じられた。 DVDのライヴ映像も、ストップモーションやネガポジ反転など処理を加えたり、 ライヴ以外の映像が挿入されたりするが、演奏や歌唱同様にポップス的に盛りあげる ような演出ではない。全体として落ち着いた仕上がりになっている。 また、ライヴの最後の2曲では、Bogazici Gosteri Sanatlan Toplulugu の ダンサーも 舞台に加わっています。ダンスにはトルコの伝統的な folklore dance (民俗舞踊) の 要素 (動きや衣裳) も採り入れられているようだが、folklore dance というより contemporary dance といった方がよいものだ。 こういう folklore に対する同時代的な、それも泥臭いというより端整なアプローチ による演奏がとても気に入っているのだが、このバンドを興味深く思っているのは その点だけではない。ライブ映像に被せられる他の映像を注意して観ていると、 1920年代のトルコを追われるギリシャ人かアルメニア人を乗せている貨車らしきもの とらえた映像や、クルド難民キャンプらしき映像だったりするのだ。DVDに収録された "Denize Yakilan Turku" のビデオクリップのエンディングも、トルコ東部の村の 男たちが軍によって連行されてると思わせるようなシーンだ。 そして、彼らのこのような表現をとりまくトルコの状況を伺い知る、という点で、 DVDに収録されたイスタンブールのビルギ (Bilgi) 大学での討論会の録画も、とても 興味深いものになっている。ビデオクリップが国内のTV放送から締め出されたり、 コンサートが許可されなかったりする一方、トルコの表現の自由の象徴的存在として 対EU外交に使われる、など、彼等の微妙な立ち位置が見えてくる。 トルコで少数民族の folklore を演奏することの政治性を意識し、それに対する抑圧や 矛盾を指し示しながらも、抑圧に対する抗議に声を荒げたりせずに、むしろ現代的な 演奏を通して民族間の友愛を体現しようとする、そんな Kardes Turkuler の活動を 知るのにうってつけのDVDだろう。お薦めだ。 sources: Kardes Turkuler, http://www.kardesturkuler.com/ Kalan, http://www.kalan.com/ Kardes Turkuler, _In Concert_ 関連の TFJ's Sidewalk Cafe 談話室の記事, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/20051205.html#A1476 2005/12/17 (2005/12/05) 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html