2005年にリリースされた新録、もしくは、ここ2〜3年の新録リリースで2005年に 落穂拾いしたものの中から選んだ10枚。 第一位: Dupain _Les Vivants_ (Corida / Bleu Electric / Label Bleu, LBL4012, 2005, CD) vielle a roue (hurdy-gurdy) や tambourin (frame drum) といった folk の楽器を 用いつつ、reggae や hip hop のような重いベースによるグルーヴに乗せ、オック語 (Oc、フランス南部の言葉) による歌を抑揚を抑えた節回しで歌う、そのドレッドを 感じるノリの魅力は相変わらず。整理された音空間と多様なゲストが、立体的でより 魅力的な音に仕立てている。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/05112701 第二位: Kocani Orkestar meets Paolo Fresu & Antonello Salis _Live_ (Il Manifesto, CD143, 2005, CD) Gypsy brass のドライブ感ある tuba のベースライン、oriental なモードで吹き まくる管楽器、メリスマの効いた男性の歌声に、live electronics の effects を かけ漂うような Fresu の trumpet や時折りフリーな演奏になる Salis の piano や accordion の jazz もしくはイタリアの folk を感じさせるソロが絡む。それも、 1回きりの特別セッションでは得られないであろう、互いの音楽要素を充分に消化した 上でよく混ぜ合わされた演奏になっている。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/05060501 第三位: Saxofour + Maria Joao _European Christmas_ (Universal (Austria), 986 880-2, 2004, CD) 去年リリースされたクリスマス・アルバムは、saxophone だけではなく、recorder や bamboo flute のようなfolk 的な楽器も活用し、それらの変則的なアンサンブルが 個性的な Joao のヴォーカルが、クリスマスの伝承曲を気持ちよく脱構築している。 もちろん、最新作の _Cinco_ (Universal (Austria), 06249873130, 2005, CD) も 悪くない。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/05112001 第四位: Niou Bardophones _Air De Rien_ (Buda Musique, 860115, 2005, CD) cornemuse (bagpipe,gaida) と bombarde (伝統的な oboe 風管楽器) をフィーチャー した4tet によるこの作品は、free jazz 風にパワフルに吹まくる bombarde、cornemuse や saxophone、それを煽る drums が壮快な作品だ。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/05082401 第五位: The Claudia Quintet _I, Claudia_ (Cuneiform, RUNE187, 2004, CD) 乾いた硬質な音を多用した drums/percussion とクールな vib のフレーズからなる intelligent techno / drum'n'bass 以降を思わせるギクシャクした細かいビートに、 bass がノリを下支えし、その上を clarinet や accordion の柔和な reeds の音が 緩く漂う所が、クールダウンするような気持ちよさを感じさせる。反復感が控え目に なった最新作 _Semi-Formal_ (Cuneiform, RUNE217, 2005, CD) よりお薦めだ。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/05101701 第六位: Lucilla Galeazzi / Vincent Courtois / Michel Godard _Trio Rouge_ (Intuition, INT3353-2, 2004, CD) Banda をミニマルに切り詰めたような tuba と violincello というバックが、 Galeazzi の歌声を大きく引き出している。軽くメリスマを効かせたハイトーンに 伸びる感じが気持ちよい。また、変則的な編成の癖のあるバックの演奏が良い アクセントになり、単なるメロディアスな歌物以上の仕上がりに楽しめる。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/05030601 第七位: Ana Da Silva _The Lighthouse_ (Chicks On Speed, COSR13CD, 2004, CD) minimal techno / deep house 以降を感じさせる脈動的なリズムと、音数少なく辿ら れる素朴な旋律からなるミニマルな背景に、起伏の少ない旋律をさらっとした声で 歌うのだが、その少々不安定な歌唱が、他のメンバーがいないにもかかわらず、 electronica な The Raincoats のように聴こえる。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/05031301 第八位: Jean-Luc Fillon _Oboa_ (Deux Z, ZZ84135, 2003, CD) 強めで華やかな音色の piano と、軽快かつ多様な tambourin のリズムに乗って、 Fillon のちょっと鼻にかかったような音色の double-reed の軽快でノリの良い 吹きっぷりが楽しめる。さりげなく地中海の香りを感じる曲も良い。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/05032101 第九位: Simone Guiducci Gramelot Ensemble _Chorale_ (Felmay / Newtone, FY7023, 2002, CD) 打楽器的な反覆する guitar のフレーズ、弓弾きも生かした bass、frame drum や hand drum を使い細かめに刻まれるリズムに乗って、ゆったりとした展開の clarinet と accordion のかけ合う演奏からなる folk/roots 志向の jazz だが、この作品では NY down town のシーンで活躍するミュージシャンを迎え、NY down town 流儀の バルカン〜地中海風 jazz のイデオムが加わり、その緊張感高い演奏が楽しめる。 最新作 _Dancin' Roots_ (Felmay / Newtone, FY7025, CD, 2004) も同様に良いが、 女性歌手 De Vito をフィーチャーした曲がある分だけ、_Chorale_ を薦めたい。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/05010201 第十位: Konono No.1 _Congotronics_ (CramWorld / Crammed Discs, CRAW27, 2004, CD) 楽器は親指ピアノ (likembe) なのだが、廃車から回収した部品などを使っての手製の 電化が施され、歪んで割れたようなビンビンビリビリいう音を鳴り響かせている。 パーカッションも伝統的なものも用いられているが、やはり、車のホイールカバー 等の廃品類が流用されている。このような楽器・機材の出すジャンクな音質と、 トランス音楽らしい反覆感の組み合わせは、現代的な泥臭さを感じさせてくれてとても 面白い。Konono No.1 を含む、コンゴ民主共和国キンシャサ近郊の音楽を映像を含めて 捉えた Various Artists, _Congotronics 2: Buzz'n'Rumble From The Urb'n'Jungle_ (CramWorld / Crammed, CRAW29, 2005, CD+DVD) もお薦めだ。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/05020501 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/05122502 番外特選: Kardes Turkuler _In Concert: 2000-2001 Istanbul Harbiye Cemil Topuzlu Open Air Concert_ (Kalan, 02, 2004, DVD(PAL/all)) トルコに住む様々な少数民族の民俗音楽を伝統的な楽器を用いつつ泥臭いというより 端整な演奏、アレンジで聴かせる、その演奏だけでも充分に楽しめる内容だが、 それだけではない。トルコで少数民族の民俗音楽を演奏することの政治性を意識し、 それに対する抑圧や矛盾を指し示しながらも、抑圧に対する抗議に声を荒げたりせず、 むしろ現代的な演奏を通して民族間の友愛を体現しようとする、そんな活動を知るの にうってつけのDVDだろう。 http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/05121701 2006/01/01 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html