_Crossing The Bridge: The Sound Of Istanbul_ (Edel, 0166658ERE, 2005, DVD(PAL/2)) - 1)_Crossing The Bridge: The Sound Of Istanbul_, a film of Fatih Akin, 2005. 2)_Under The Bridge: The B-Side Of Istanbul_, a film of Fatih Akin and Nikolai Hartmann, 2005. 3)Music Videos: 3-1)Ab-i Cesm (Mercan Dede) 3-2)Gece Kadar Rahatsiz Etmiyor (Reprikas) 3-3)El Filan Salliyorum (Baba Zula) 3-4)Tilki Dansi (Baba Zula) 3-5)Rapstar (Ceza) 3-6)Yanmisim Ben (Sezen Aksu) Einstuerzende Neubauten は、1980年前後にベルリン (Berlin) から出てきた 金属片やチェインソーも楽器に使い noise / industrial の文脈で注目された post punk / new wave のバンドだ。そんな Einstruezende Neubauten や Nick Cave & The Bad Seeds の guitar 奏者として活動してきた Alexander Hacke は、 最近、イスタンブール (Istanbul, Turkey) の alternative なシーンに関わり、 イスタンブールのバンド Baba Zula の _Duble Oryantal_ (Doublemoon, DM0027, 2005, CD) にも参加している。 _Crossing The Bridge: The Sound Of Istanbul_ は、そんな Hacke をナヴィゲータ として、イスタンブールの音楽風景を辿るドキュメンタリ映画だ。Festival de Cannes 2005 でも話題になったこの映画が、ドイツ盤DVD (PAL方式リージョン2でドイツ語 字幕のみ) としてリリースされている。 撮影はイスタンブールで行われており、それも観光地というより地元の生活の場の ような所で撮影されている。音楽に興味が無くても、観光地とは違うイスタンブール の街の雰囲気が楽しめる映画になっている。 この映画が取り上げる音楽は、主流のポップではなく alternative / underground なもの多い。Hacke も係わる Baba Zula や Oriental Expression といった Doublemoon レーベル界隈から始まり、より "grunge" 寄りとして Duman、Replikas を紹介し、さらに トルコの rock のルーツとして1960年代から活動する Erkin Koray を紹介している。 もちろん、イスタンブールにも hip hop のシーンがあり、それも取り上げられ、 Ceza、Ayben、Istanbul Style Breakers が紹介された。ここでは、Ceza と Ayben の 父親も登場したのが面白かった。 スーフィ (Sufi) 音楽をベースにした Mercan Dede や Selcuk、ジブシー (Gypsy) 音楽の Selim Sesler、Sesler と共演するカナダ人女性歌手 Brenna MacCrimmon を 取り上げたところでは、イスタンブールを離れ、Sesler の住むトラキア (Thrace) 地方のジプシーの村ケシャン (Kesan) でも撮影しいる。Kesan の村の雰囲気も とても興味深いものだ。 この映画では、地元でない限り知ることが難しいであろう、路上をあえて活動場所に 選んでいるミュージシャンにも焦点を当てている。ここで取り上げられているのは SiyaSiyaBend と Nur Ceylan だ。 Kalan レーベル界隈からは、クルド系 (Kurdish) の女性歌手 Aynur Dogan が取り上げ られていた。ここでは廃寺院跡らしきドームの中で歌う Aynur の雰囲気も良く、 とても印象に残った。 しかし、この映画のバランス感覚の良いところは、最後に主流のミュージシャンも 取り上げていることだろう。saz 弾きでもあるアラベスク (arabesque) の男性歌手 Orhan Gencebay (rock の Erkan Koray との共演も多い)、サナート (sanat) の 女性歌手 Muzeyyen Senar、そしてトリは、ポップの大スター Sezen Aksu だ。 ここでは、若かりし頃の Senar や Aksu の映像を観ることができる。さらに、 現在の歌うシーンでは、Senar のバックでは Selim Sesler の楽団が、Aksu の バックでは Alex Hacke 自身が演奏している、というのも注目だろう。そして、 エンディングロールで流れるのは、2003年の Eurovision で優勝した女性歌手 Sertab Erener が歌う Madonna, "Music" のカバーだ。 併せてDVDに収録されている、_Under The Bridge: The B-Side Of Istanbul_ は、 "B-Side" からも判るように、_Crossing The Bridge_ よりも現在の alternative なシーンに焦点を当てたドキュメンタリだ。映像は _Crossing The Bridge_ で 撮影したものをベースしているが、アウトテイク映像もふんだんに使われている。 _Crossing The Bridge_ の補遺として、とても興味深い内容だ。 取り上げるミュージシャンは、_Crossing The Bridge_ で取り上げられた ミュージシャンから、Erkin Koray、Orhan Gencebay、Muzeyyen Senar、Sezen Aksu といった大物を除いたものになっている。また、_Crossing The Bridge_ では 控え目だった社会的な問題 (路上取締りの問題やEU統合問題など) にも言及している。 ちなみに、ナヴィゲータは自称 Erkin Koray のファンの Peyote Hasan。 _Crossing The Bridge_ で現地コーディネータを務めたと思われ、そのせいか、 _Crossing The Bridge_ では Koray が現在のシーンのルーツとして若干強調され 過ぎていたようにも感じた。また jazz 関連については Selim Sesler の中で 言及されているものの、肝心のミュージシャンがほとんど出てこなかったのも 残念だった。 DVDには、この2本の映画の他、ボーナストラックとして、_Crossing The Bridge_ に 出演したミュージシャンの中から music video が6本収録されている。 生で観には敷居が高いイスタンブールの alternative/underground シーンだけに、 ミュージシャンの演奏風景を観ることができるだけでもとても興味深い。さらに、 スタジオ内ではなくイスタンブールの街中の光景が多く使われており、こういった 音楽がどういう風景、街の雰囲気の中から生まれているのか、映像も併せて感じる ことができるという点でも、とても興味深い内容だった。お薦めだ。 ちなみに、この映画のサウンドトラックもリリースされている。 Various Artists _Crossing The Bridge / Istanbul Hatirasi: The Sound Of Istanbul_ (Doublemoon, DM0028, 2005, CD) - 1)Music (Sertab Erener) 2)Tavus Havasi (Baba Zula) 3)Istanbul 1:26 A.M. (Orient Expressions) 4)Istanbul (Duman) 5)Sahar Dagi (Replikas) 6)Holocaust (Ceza) 7)Ab-i Hayat (Mercan Dede) 8)Kurdili Hicazkar Longa (Selim Sesler) 9)Penceresi Yola Karsi (Selim Sesler & Brenna MacCrimmon) 10)Wedding Song (The Wedding Sound System) 11)Boyle Olur Mu (Nur Ceylan) 12)Hayyam (SiyaSiyaBend) 13)Ehmedo (Aynur Dogan) 14)Hatasiz Kul Olmaz (Orhan Gencebay) 15)Haydar Haydar (Muzeyyen Senar) 16)Istanbul Hatirasi (Sezen Aksu) 17)Cecom (Baba Zula) 18)Music (Radyo Versiyonu) (Sertab Erener) sources: _Crossing The Bridge_, http://www.crossingthebridge.de/ Doubelmoon, http://www.doublemoon.com.tr/ 2006/01/14 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html