Rabih Abou-Khalil / Joachim Kuehn
_Journey To The Contre Of An Egg_
(ENJA MW, ENJ9479-2, 2005, CD)
- 1)Shrewd Women 2)Little Camels 3)Die Bruecke 4)I'm Better Off Without You
5)Natwasheh And Kadwasheh 6)Mango 7)No Plastic Cups, Please
9)Sweet And Sour Milk
- Recorded 2004/2/10-15.
- Rabih Abou-Khalil (oud), Joachim Kuehn (piano, alto saxophone),
Jarrod Cagwin (drums, frame drums); Wolfgang Reisinger (drums) on 5,6.

Rabih Abou-Khalil はレバノンはベイルート (Beirut, Lebanon) 出身の oud 奏者。
内戦もあり1978年にレバノンを離れ、現在はヨーロッパを拠点に活動している。
ヨーロッパの jazz / improv のミュージシャンとの共演が多く、1980年代半ばから
ENJA MW を中心に多くの録音を残している。

Abou-Khalil の新作は、piano 奏者 Joachim Kuehn との共演だ。Kuehn は、
旧東ドイツ (DDR, Deutsche Demokratische Republik) のライプチヒ (Leipzig)
出身、1966年にDDRを亡命、1968年以降フランスのパリ (Paris, France) を拠点に、
主に free jazz の文脈で活動をしている。

この新作では、Cagwin も frame drums を多用して柔らかいリズムを刻み、
oud と piano の音の音色とフレーズを生かした録音となっている。Reisinger が
参加する曲でも drums の音は控えめだ。

レヴァント (Levant) 風の oud と flame drums の音が作る落ち着いた雰囲気に、
Kuehn のタッチの強い明るめの piano の音が絡む。ただし、手数は控えめで、
むしろ、音の間合いを生かした展開が多い。その、音色の対比と音の間合いが
この作品の魅力だ。

歪んだ kanun のような音から華やかな音色へ piano 展開していく "Little Camel"、
軽快な oud のフレーズが気持ちよい "Die Bruecke" が特に気に入っている。

Rabih Abou-Khalil
_Morton's Foot_
(ENJA MW, ENJ9462-2, 2003, CD)
- 1)Ma Muse M'Abuse 2)Morton's Foot 3)Il Ritorno Del Languore
4)Lobotomie Mi Baba Lu 5)L'Histoire D'Un Parapluie 6)O Papaia Balerina
7)Dt. Gieler's Wiener Schnitze! 8)Il Sospiro 9)Hopping Jack
10)Waltz For Dubbya 11)The Return Of The Maltese Chicken
- Recorded 2003/2/25-3/6.
- Rabih Abou-Khalil (oud), Gabriele Mirabassi (clarinet),
Luciano Biondini (accordion), Michel Godard (tuba), Gavino Murgia (vocals),
Jarrod Cagwin (drums, frame drums).

そんな、Abou-Khalil の3年前の前作は、Mirabassi / Biondini / Godard の trio
を従えての作品だ。(この trio には Gabriele Mirabassi, _Latakia Blend_
(ENJA, ENJ-9441-2, 2002, CD) というリリースがある。) また、サルディーニャ
(Sardinia) の saxophone 奏者/歌手をフィーチャーしている。

この作品は、新作 _Journey To The Centre Of An Egg_ と違い、Abou-Khalil の
oud は控えめ、Cagwin は drums でギクシャクとした変拍子を叩き、それに煽られ
るように Mirabassi、Biondini、Godard、Gavino が厚めの展開をきかせてくれる。
旋法にバルカン (Balkan) 〜レヴァント的な所もあるが、_Latakia Blend_ のような
ミニマルなバルカン brass band のようなものとも違い、変拍子 drums もあって
jazz rock 的だ。その迫力と緊張感も良い。

_Journey To The Centre Of An Egg_ とは違う Abou-Khalil が楽しめる作品だ。

sources:
Rabih Abou-Khalil @ ENJA MW,
    http://www.enjarecords.com/bio.php?artist=Rabih%20Abou-Khalil
Joachim Kuehn, http://www.joachimkuehn.com/

2006/05/06
嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html