Grup Yorum _In Concert_ (Kalan, 04, 2005, 2DVD(PAL/all)) - DVD1)"In Concert" 1)Ve Zafer 2)Kizilcik Serbeti 3)Huznun Isyan Olur 4)Insanlarin Icindeyim 5)Hic Durmadan 6)Iste Burdayiz 7)Bu Ulkeyi Yangin Sarar 8)Gel Ki Safaklar Tutussun 9)Ince Memed 10)Daglar Koynunda 11)Cerkes 12)Herne Pes 13)Jesid El Tahir 14)Ugurlama 15)Direnc Cicegi 16)Venseremos 17)Direniscilerin Cevabi 18)Ozgur Tutsak Daglara Gel 20)Cemo 21)Zaafer Yakinda DVD2)"Bonus" 1)Sahne Arkasi 2)Video Klipler 2-1)Cemo 2-2)Insanlerin Icindeyim 2-3)Ey Sahin Bakislim 2-4)Surmenelim 2-5)Ugurlama - Sahan Kanatlilar - Yarin Bizimdir 3)Durusma Notlari 4)32 Gun (TV Programi) 5)Boyle Gitmez (TV Programi) 6)Yayinlanmis Albumler 7)Fotograflar 8)Kitaplar - Production: Hasan Saltik / Kalan Muzik. - "In Concert": Istanbul Harbiye Cemil Yopuzlu Open Air Concert, 2003/9/13. トルコ (Turkey) のかなり政治色濃い folk/roots グループ Grup Yorum の ライヴDVDとビデオ・クリップ、TV番組などを収録したボーナスDVDの2枚組。 実はこのグループをちゃんと聴くのもこのDVDが初めてだが、とても興味深かった。 1枚目のライヴ映像を観る限り、メロディなど folk/roots 的な雰囲気が強いが、 シンプルな saz 弾き語りではなく、弦や管のアンサンブルも付いている。 いかにもインテリ層の大学生という感じの外見が似ているせいか、同じ Kalan レーベルの Kardes Turkuler と近い雰囲気のあるグループという印象を受ける。 悪くはないのだが、Kardes Turkuler 程は洗練されていないし、歌詞を最重要視 しているグループのようで、音だけ聴いていても斬新で面白いをいう印象を受ける ものでもないもの確かだ。むしろ、ボーナスDVDに収録されていたテレビ・ ドキュメンタリー 32 Gun (2004) が、日本語はおろか英語でも情報が少い このグループの出てきた背景などを要領良くまとめた内容になっていて、 とても興味深かった。 このテレビ番組によると、Grup Yorum は 1980年の「9.12クーデター」に伴う軍政 から1983年に民政移管した後に活動を始めた左翼サークルの中から生まれたグループ で、1985年に4つの大学の学生たちによって結成された。 Yorum とは「(政治的) コメント」を意味している。活動開始から19年間に法廷に呼び出されること400回、 メンバーのうち15名が逮捕されており、にもかかわらず、毎年1タイトルずつアルバム をリリースし10万枚以上売れ、トータル200万枚も売れている。もともと吟遊詩人的に 社会観察を歌っていたようだが、1989年に逮捕者が出たことが転機となり、デモや 政治政党事務所占拠など、より直接的な政治示威行動を取るようになったとのこと。 しかし、その後、次第に抑圧が緩くなり、2003年にはイスタンブールで野外コンサート (メインのDVDに収録) を成功させた。ただし、現在もテレビなどのメディアからは 締め出されている。「Grup Yorum の物語はトルコの民主化の物語だ」とこの番組の 司会者は言っていた。ちなみに、このグループのCDは、現在は全タイトル、トルコの 独立系レーベル Kalan からリリースされている。 このグループは、「1970年代のフォーク・ミュージックとラテンアメリカの左翼 サークルが作り出した新しい歌の伝統」に影響を受けているとのこと。前者はおそらく ozgun のことを、後者は nueva cancion / nueva trova のことを指しているように 思われる ("Venseremos" も演っている)。ちなみに、このドキュメンタリーでは、 トルコにおける政治的な音楽の伝統についても簡単にまとめている。それによると、 その始祖は、アナトリアの吟遊詩人 (ozan) の伝統と左翼思想を組み合わせた Ruhi Su 。最も成功した Su の後継者として Zulfu Livaneli を挙げていた。 saz の弾き語りは政治的と見做されて逮捕されることもあったとも紹介されている。 そして、Grup Yorum はそういった音楽に続くものとして位置づけられていた。 Kardes Turkuler の1作目 Kardes Turkuler (Kalan, CD141, 1999, CD) には、 Grup Yorum が参加しているとクレジットされているし、それなりに縁はあるように 思われますが、特に政治に対するアプローチが正反対で、これも結成時期 (世代) の違いのようにも思われる。結成時から約50名メンバーが入れ替わっているとの ことで、顔となるとうな中心メンバーの無いかなりメンバーが流動的なコレクティヴ とうy面も、Kardes Turkuler より徹底しているような印象を受ける。 Grup Yorum, _In Concert_ のDVDは、Kardes Turkuler, _In Concert_ (Kalan, 02, 2004, DVD(PAL/all)) と併せて観ると、あまり伝えられることのないトルコの音楽の 一つの流れを垣間見ることができて、とても興味深いと思う。 sources: Grup Yorum, http://www.grupyorum.net/ Kalan, http://www.kalan.com/ 2006/08/15 (2006/08/03) 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html