Julian Arguelles _Partita_ (Basho, SRCD17-2, 2006, CD) - 1)Evan's Freedom Pass 2)Warm Winter Coat Of Spruce 3)Peace For D 4)Lesters 5)Arco Iris 6)Tide 7)Which Way Out 8)Sub Rosa 9)Bottom Drawer Pages 10)Stranglet 11)Again Again 12)Triagonal 13)Speak Up 14)Leash 15)Tempus - Recorded 2005/6/5,6. - Julian Arguelles (saxophones), Michael Formanek (bass), Tom Rainey (drums). Julian Arguelles は、1990年前後から活動を始めたイギリス (UK) の saxophone 奏者だ。Django Bates の The Loose Tubes や Colin Towns の big band 等に 参加する一方、8tet 編成のリーダー作を Provocateur レーベル等から残している。 ちなみに、The Recyclers や Plush レーベルなど主にフランス (France) の jazz/improv シーンで知られる Steve Arguelles は兄弟だ。 バックを固めるリズム隊の Formanek といえば Tim Berne の Bloodcount の bass 奏者、Rainey も Big Satan、Paraphrase、Hard Cell、Science Friction といった Tim Berne のグループに参加し続けている。録音もニューヨーク (New York)。 そんなこともあり、Tim Berne の影響を強く感じる録音になっている。 特に "Evan's Freedon Pass" や "Arco Iris" など、ブラインドで聴かされたら Tim Berne Paraphrase かと思う程だが、そのテンションの高さも悪くはない。 その一方、ゆったりとした曲では、Django Bates などの big band 等で吹いて きただけある、柔らかい響きや音の重ねを聴かせたりもする。そのコントラストも この作品の魅力だ。 ちなみに、8曲目以降の8曲は、1分余りの断片的な演奏が収録されている。 Liam Noble _Romance Among The Fishes_ (Basho, SRCD13-2, 2005, CD) - 1)Jitters 2)Therapy 3)Enchante 4)Bunker 5)A Broken Dream 6)Nluebear 7)Where Do They Go 8)Regular Intervals 9)The Butterflies 10)Romance Among The Fishes - Recorded 2004/8. - Liam Noble (piano), Phil Robson (guitar), Drew Gress (bass), Tom Rainey (drums). Julian Arguelles 近傍のイギリスの jazz シーンで活動する piano 奏者 Liam Noble も、1年ほど前になるが、やはり Tim Berne Paraphrase のリズム隊 Gress - Rainey を従えてのニューヨーク録音をリリースしている。管無しで piano と guitar なので Tim Berne とはかなり違う音楽となっているが。 ただ、狙っている所は判らないではないのだが、いまいち決め手に欠ける演奏だ。 特に、オープニングの "Jitters" など、Nik Baertch か The Claudia Quintet に 近い所を狙っていると思われるのだが、演奏がビシっときまっていないのが惜しい。 ちなみに、現在は Julian Arguelles のトリオと Liam Noble の4tet のタブルビル でツアー中だ。ちなみに、ツアーでは bass は Formanek でも Gress でもなく どちらも John Herbert。(ちなみに、The Claudia Quintet も2006年のライヴでは Gress から Herbert に bass が代わっているようだ。) Liam Noble の 4tet に Arguelles が加わればぐっと面白くなりそうにも思うし、今後の展開に期待したい ところだ。 ところで、Julian Arguelles, _Partita_ と Liam Noble, _Romance Among The Fishes_ をリリースしている Basho Music は2000年代に入って活動を始めたイギリスの 同時代的な jazz のレーベルだ。今後の展開に期待したい。ちなみに、ロゴから 判るように、Bacho とは相撲の場所を意味している。 少し前のリリースとなるが、面白い関連盤があるので、併せて紹介したい。 Ronan Guilfoyle's Lingua Franca _Exit_ (Permission Music Prod., PMP106, 2003, CD) - 1)Exit / The Sligo Maid 2)Ensconced / Piobara Na Ngriosach 3)Foundation Garment 4)Precipitation / Pigeon On The Gate 5)Isolation / The Kid On The Mountain 6)Reckless / Rakish Paddy - Produced by Ronan Guilfoyle. Recorded 2001/6. - Julian Arguelles (saxophones), Rick Peckham (guitar), Ronan Guilfoyle (acoustic bass guitar), Tom Rainey (drums); Peter Browne (accordion), Martin Nolan (uilleann pipes, whistles), Tanya Kalmanovitch (violin, viola). アイルランド・ダブリン (Dublin, Ireland) を拠点に活動する bass guitar 奏者 Ronan Guilfoyle のリーダー作だ。未聴だが、Julian Arguelles / Roman Guilfoyle / Jim Black, _Live In Dublin_ (Auand, 2006) という _Partita_ に準じた trio のリリースもある。 Arguelles / Peckham / Guilfoyle / Rainy は _Partita_ に guitar を加えた編成 と言えるが、これにさらに accordion、uilleann pipes、violin をフィーチャーし、 まるで Celtic folk と jazz/improv が対決しているような内容に仕上っている。 オープニングの "Exit / The Sligo Maid" は uilleann pipe の響も高らかな folk チューンで始まるのだが、途中でがらっと様相が変って、_Partita_ で聴かれる ような jazz/improv の世界に突入する。その不器用に継いだ感も、互いを異化する かのように感じる程だ。その逆、Tim Berne を思わせるような _Partita_ 的な 演奏をベースに uilleann pipes らが乱入してくる "Reckless Rakish Paddy" も 悪くない。しかし、2つの要素が最も巧く混じっているのは、"Foundation Garment" だろうか。 British folk とコンテンポラリーな jazz/improv といえば、Provocateur レーベル (Julian Arguelles もリーダー作をリリースしている) から Chris Staut らが参加 した Northern Lights や Andy Sheppard & Kathryn Tickell といったリリース がある。そういう点では意外という程ではないが、やはり、なかなかありそうで 無かった音だ。 _Exit_ 以降のリリースは無いようだが、Julian Arguelles のトリオや Liam Noble の 4tet に、さらにこういう方向性も加わると面白いのではないかと思う。 sources: Julian Arguelles, http://www.julianarguelles.com/ Liam Noble, http://www.liamnoble.co.uk/ Ronan Guilfoyle, http://www.ronanguilfoyle.com/ Basho, http://www.bashorecords.com/ Northern Lights, _Airplay_ レビュー, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/CdD/03011901 2006/11/12 嶋田 丈裕, http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/talk/index.html