クレズマー(klezmer)というユダヤ音楽を僕が知ったのは91年頃、ちょうど クレズマー・リバイバルという言葉が話題になったときだった。サーカスの ときにでも流れそうなちょっとエキゾチックな音楽という程度の印象しか、 そのリバイバル・バンドの音楽からは受けていなかったのだけど。 けど、The Klezmaticsだけは耳を捉えるものがあった。それは、ベースと ドラムを加えた編成(ドラムが元ShockabillyのDavid Licht!)で、それも 多分にロック流儀(もっと言えばパンク的)な所があったからだとは思う。 その後もThe Klezmatics関係といえば、リーダーのFrank London率いるLes Miserable Brass BandのVarious Artists "Downtown Does The Beatles Live At The Knitting Factory" (Knitting Factory Works KFWCD113)程度しか 聴いていなかったのだが。(このアルバムば奇妙で怪しい。) で、The KlezmaticsやLes Miserable Brass Bandの持っていた怪しい(笑) 部分(たぶんクレズマー的ではないかもしれない。)をディフォルメしたような 編集盤が出た。 Various Artists "Klezmer 1993 New York City - The Tradition Continues On The Lower East Side" (Knitting Factory Works, KFWCD123, '93, CD) もちろん、Knitting Factoryでのライブ編集盤。全9曲のうち、The Klezmaticsの 演奏が3曲、Frank Londonが参加している演奏が5曲と、The Klezmaticsの色が 濃いといえば濃い。The Klezmaticsのアルバム(例えば"Rhythm & Jews" (Piranha PIR25-2) '91)ほどは、ビートはクリアじゃないけれども。 聴き物は、むしろShvitz All-Stars "Emma Goldmans Wedding"。やはりFrank LondonをはじめThe Klezmaticsのメンバーが中心になってるんだけど。比較的 普通の展開がだんだんテンポが上がって、Marc RibotとElliott Sharpのギターが 乱入して、混沌としていく展開が怪しい。Frank LondonのトランペットやDavid Lichtのドラムがフリキーなギターと闘うあたりが、特に緊張感が高くて良い。 それに比べて、John Zorn's Masadaは、John Zornということで期待(何をだ?) していたけど、比較的まとも(何がだ?)で、ちょっと残念。 ちなみに、Knitting Factory Worksからは、ほぼ同時にFrank London "The Shvitz" というアルバムもリリースされている.これにもMarc RibotとElliott Sharpが参加 しているらしい。未聴なんだけど、タイトル通りShvitz All-Starsのような演奏なら 聴いてみたい。誰が聴いてませんか? あと,クレズマーというよりジャズなのかもしれないけど、評判が良いので、 Don Byron "Plays The Music Of Michey Katz" (Elektra/Nonsuch, 79313-2, '93, CD) も買ってみた。これはしばらく前にだけど.1曲目が上品で、これは失敗したかと 思ったが、2曲目から下世話な展開になってよかった(笑)。それでも、僕の好みは Shvitz All-Starsのような怪しさなんだろうな。 94/1/28 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕