はい、こちらTFJです。最近に再プレスされたようで、音盤屋の店頭でよく 見かけるこのアナログLPの紹介。 Matumbi "The Best Of Matumbi" (Trojan TRLS145) '77 Linton Kwesi Johnsonとの共演で知られるThe Dub BandのDennis Bovellの バンドMatumbiの初期(Harvest / EMI移籍以前)の編集盤。Matumbiの結成は 72年というが、この当時の録音も含まれているかはよくわからない。 Dennis Bovellはベースではなくリード・ギターを演じており、目立ったダブ 処理も行なわれていない。後のMatumbiやThe Dub Bandでの重い演奏を期待 すると、外すだろう。旋律も甘くポップな歌ものが耳につくのだが、歌声が あまり魅力的でないのも、もの足りない。A面最後には全くレゲエではない R&Bのような曲も入っている。B面1曲目"The Man In Me"はBob Dylanのカバーだ。 この曲やキーボードの音も印象的な"Go Back Home"など、B面の曲の方が僕は 好きだ。B面最後の"Reggae Staff"は歪んだ感じの録音だが、これはわざと だろうか? "Go Back Home"などラスタ思想の曲だが、「イギリスの人々に理解できる ような歌詞にするよう努力した。」というライナーノーツの言葉が、そして それを思わせるここでの曲が、この後のUKレゲエの展開に繋がるのだろうか。 駄作というほどではないが、すごいという演奏も含まれていないと思う。 初期のMatumbiは、UKレゲエ黎明期はこう雰囲気だったのか、という感じだ。 UKレゲエのマニア向けだろう。 ちなみに、Matumbiとはナイジェリア語(というのは無い。イボかヨルバの 言葉だろう。)でto be born againという意味だそうだ。 さて、ついでに6月の買い出しツアー直後に買ったこのCDのコメントも。 Linton Kwesi Johnsonを初めて聴いたのは"Bass Culture" (Island) '80。 その後の作品を追いかけながら、"Forces Of Victory" (Island) '79は 遡って聴いたが、この"Dread Beat And Blood"まで遡らなかった。 Poet And The Roots "Dread Beat And Blood" (Front Line, CDFL9009, '77/'90, CD) '77年のLinton Kwesi JohnsonのPoet And The Roots名義のデビュー作の CD化。USのRounderからもLinton Kwesi Johnson名義でCD化されているが、 UKのFront Line盤は追加曲としてダブが2曲付いていている。何故か2曲 とも"All Wi Doin Is Defendin"のダブだが。 Matumbi "The Best Of Matumbi"と同じ77年発表だが、こちらの音は後の Linton Kwesi JohnsonやDennis Bovellの活動に直接繋がる音だと思う。 実際、背景の演奏者も"Forces Of Victory"や"Bass Culture"とほぼ同じ 人だ。MatumbiからはDennis BovellとJah Bunnyが参加している。まだ、 John Kpiayeはいないが、Vivian Weathers、Winston Curniffeといった お馴染みの名前がある。 出だしのmadnessという言葉とベースの掛け合いもかっこいい"Five Nights Of Bleeding"など強烈な曲もある。一方、Vivian Weathersの歌声か聴かれる "Song Of Blood"などは、あれ?っという感じだ。"Forces Of Victory"〜 "Bass Culture"の緊張感の高さには負けるかもしれないが、それでも、 イギリスにおいて(だけではないが)ドレッドという概念を再構築させよう という力を感じさせる。(その後、ドレッドから歴史になるのだが。) この"Dread Beat And Blood"は同名の映画があって、一度自主上映された こともあるらしいが。これを聴くと、どういう映画だったのか見てみたく なる。このジャケットのトラメガを持ったLinton Kwesi Johnsonの姿は、 映画のワンカットなのだろうか? 94/8/22 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕