はい、こちらTFJです。80年前後のポストパンク・ポップ・アヴァンギャルドの 雰囲気を伝えるCDがリリースされた。 Au Pairs "Equal But Different - BBC Sessions 1979 - 1981" (RPM, RPM139, '94, CD) - 1)Monogamy 2)Pretty Boys 3)Come Again 4)Ideal Woman 5)Dear John 6)Love Song 7)It's Obvious 8)Repetition 9)Unfinished Business 10)Diet 11)We're So Cool 12)Armagh 13)Set-Up 14)Headache 15)Intact 16)Shakedown 17)Instant Touch 18)America 19)Stepping Out Of Line 20)Sex Without Stress - Lesley Woods (vo,g), Paul Foad (vo,g), Jane Munro (b), Pete Hammond (dr) 92年からリイシュー専門レーベルRPMが進めているAu Pairsの録音のCD化の第3弾は 予告通りBBCセッション集だった。 Au Pairsはポストパンクの79年にBirmingham, Englandから出てきた男女混成の ロックバンド。ファンクやダブに深く影響を受けた音楽性からGang Of Fourや Delta 5といったLeeds一派と見られることも多かった(実際、よく一緒にギグを していた。)し、その一方で、The SlitsやThe Raincoatsと並ぶフェミニズムの パンクバンドとして見られることも多かった、Au Pairsはそんなバンドだった。 ギターはGang Of FourのAndy Gillと同じようなスタイルで鋭いカッティングに よるリズムギターに徹し、ベースがリードをとり、ドラムはギクシャクした リズムをたたき出す。女性歌手であるLesley Woodsの歌声は低く辛辣であり、 男性歌手Paul Foadの声が取り乱しているように聞こえるほどだ。歌詞は、堕胎、 家庭内暴力、不快なセックス、男性女性の役割に関するものであるが、それらは、 わかりきったこととされていることを問い直す手だてとして作用している。 彼らの大ヒット曲"It's Obvious"で、切り刻むようなギターとギクシャクと叩き 出されるビートにのって歌われる You're equal but different, it's obvious... という辛辣なLesleyの歌声を聴いていると、何事もあたりまえ(obvious)だとは 思えなくなってくる、そんな気になるような演奏だ。 この"It's Obvious"の、最初に付けられていた題"Equal But Different"が付け られたこのCDは、そんな彼らが79年から81年にかけてBBCに残したセッションを 編集したものだ。オリジナルのアルバムともライブ盤"Live In Berlin"ともまた 違った演奏を楽しむことができる。 ライナーノーツによれば、Au Pairsは7つのBBCセッションをしている。順に 追っていこう。 John Peel Show: Recorded 26/9/79, 1st Transmission 9/10/79 1)Pretty Boy 2)Ideal Woman 3)Come Again 4)Monogany この1stシングル"You"のリリース前に録音されたセッションでは"You"収録の曲は ない。CDでは#1〜4として収録されている。"Ideal Woman"と"Monogany"はレコード 未収録曲だ。このCDで一番の聴きものだ。Buzzcocksを思わせるようなポップな パンク曲だが、歌の辛辣さはAu Pairsならではだろう。 John Peel Show: Recorded 28/5/80, 1st Transmission 12/6/80 1)It's Obvious 2)Love Song 3)Repetition 4)Dear John Richard Skinner Show: Recorded 8/1/81, 1st Transmission 12/1/81 1)Unfinished Business 2)Diet 3)We're So Cool 4)Set Up John Peel Show: Recorded 21/1/81, 1st Transmission 28/1/81 1)Set Up 2)Headache 3)We're So Cool 4)Armagh これが、1stアルバム"Playing With A Different Sex" (Human, HUMAN1) '81と その前後に出たシングル"Diet / It's Obvious" (012 / Human)、"Inconvenience" (Human)からの曲。ちなみに、Richard Skinner Showの後半2曲("We're So Cool" と"Set Up")はこのCDには収録されていない。少々粗削りといえばそうだが、 アルバムやシングルとほぼ同じような演奏だ。 Richard Skinner Show: Recorded 27/8/81, 1st Transmission 1/9/81 1)Intact 2)Shakedown 3)Slider (Instant Touch) 4)Pretty Boy John Peel Show: Recorded 15/3/82, 1st Transmission 31/3/82 1)Stepping Out Of Line 2)America 3)Sex Without Stress これは、2ndアルバム"Sense And Sensuality" (Kamera KAM010) '82からの曲の 演奏。(ここでの"Pretty Boy"はCDに収録されていない。)このアルバムは、 打ち込みを強調した冷たい印象のある作品なだけに、スタジオライブの熱い 演奏はまた違う印象を与えてくれる。"Shakedown"のようなアップテンポの曲などは、 こちらの演奏の方がよいと思う。 Devid Jensen Show: Recorded 31/3/83, 1st Transmission 24/2/83 1)She Runs With Honey 2)Lion Love 3)Beast Of A Machine 4)No More Secret Love この演奏はこのCDではなく、去年CD化された"Sense And Sensuality" (RPM, RPM111) '81/'93の追加曲として収録されている。 このBBCセッションでのアルバム以上に熱い録音を聴きながら、80年前後のポスト パンクの苦闘に思いを馳せよう。お勧め。 さて、このRPMのCD化によって、Au Pairsの80年前後の演奏のほとんどをCDで聴く ことができるようになった。このBBCのセッション集の他に、CDとしては、 Au Pairs "Playing With A Different Sex" (RPM, RPM107) '80/'92 Au Pairs "Sense And Sensuality" (RPM, RPM111) '81/'93 Au Pairs "Live In Berlin" (Line, LICD9.00111 O) '84 がある。どのCDにもポストパンク期のロックバンドの演奏としては最も素晴らしい 類のものが収録されているが、まず聴くのであれば、このバンドの扱っていることを 象徴する「異性と遊ぶこと」という題の、彼らの代表曲である"It's Obvious"を 収録した"Playing With A Different Sex"を是非聴いて欲しい。 もちろん、クールさが魅力の"Sense And Sensuality"、Janis Joplin "Piece Of My Heart"のカバーも格好良いライブ盤"Live In Berlin"、そしてこのBBCの セッション集も、是非続けて聴いて欲しい。 B.G.M.:"It's Obvious" by Au Pairs 94/9/26 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕