Massive Attack "Protection" (Wild Bunch, WBRCD2, '94, CD) - 1)Protection 2)Karmacoma 3)Three 4)Weather Storm 5)Spying Glass 6)Better Things 7)Eurochild 8)Sly 9)Heat Miser 10)Light My Fire (Live) - Produced and Mixed by Nellee Hooper & Massive Attack - 3d-del naja, mushroom vowles, daddy g marshall, Nellee Hooper, Tracey Thorn, Tricky Kid, Nicolette, Horace Andy, etc Bristol, England出身の3d, mushroom, daddy gの3人組であるMassive Attackの 3年振りの2ndアルバム。制作は旧友Nellee Hooper。(Nellee Hooperは、Soul II Soulに参加する前は、Massive Attackの前身Wild Bunchのメンバーだった。) 1stアルバム"Blue Lines" (Wild Bunch, WBRCD1, '91, CD)は、女性ヴォーカルShara Nelsonを擁し、かなりダンスフロアを意識したものだった。Soul II SoulやSmith & Mightyと一緒にBristol一派と言われ、そのreggaeから派生したリズムはground beatと言われた。Soul II Soulが失速し、Massive Attackから独立したShara Nelsonもたいした作品を発表できなかった後での新作だ。 Tracey ThornやSinead O'Connerが参加している、という噂があったが、Sinead O'Connorの方は参加していなかった。Sinead O'Connor "I Do Not Want What I Haven't Got" (Ensign, CHEN14, '90, LP)で、Nellee Hooperが"Nothing Compare 2 U"を制作しており、これが非常に良かったので、参加が実現しなかったのは 惜しい。 前作が多分にダンス指向だったのに対し、今回はbpmがさらに落ちてぐっと落ち 着いた感じになっている。重いひきずるようなベースがreggae/dubの影響を さらに強く感じさせる。音数も少なめに整理されているのが良い。僕は前作 よりも、この新作の方が気に入っている。 Tracey Thornは"Protection"と""Bitter Things"でヴォーカルを取っているの だが。("Bitter Things"では曲作りでBen Wattも参加。) 低めに響く彼女の 歌声が、淡々とした背景にぴったりハマっている。打ち込みを使いダンス系の リズムの曲もあった、Everything But The Girl "Idlewild" (Blanco Y Negro, BYN14, '88, LP)を思い出した。彼女の歌声は、実は打ち込みを使ったダンス指向の 曲によく合うような気がする。 Shara Nelsonに代わる(?)女性歌手Nicoletteは甘い歌声で平凡だ。前作に続き reggaeの歌手として有名なHorace Andyが2曲歌っている。うち1曲はThe Doorsの "Light My Fire"だ。reggae的な背景を得て、前作以上に味わいある声を聴か せてくれる。 シングルカット曲である"Sly"では、Vivian Goldman (ex- The Flying Lizards, New Age Steppers)の名前がクレジットに見える。久々に彼女の名前を新譜で 見ることができて嬉しい。元Marine GirlsのTracey Thornの歌声にしても、 80年代初頭はThe Pop GroupのJohn Waddingtonが結成したMaximam Joyのメンバー だったPaul `Nelly' HooperことNellee Hooperの制作にしても、80年頃の ポストパンクの時代を思い出させる。そう、この音は、最先端のダンス音楽と いう以上に、あのポストパンクの緊張感を強く感じさせていると思う。 The Flying LizardやMarine Girls、Maximam Joyの持っていた緊張感には及ば ないかもしれないが。最近のEverything But The Girlの作品よりもずっと 緊張感がある。(The Raincoatsの再結成よりDorothyとしての活動の方がずっと 良かったと思うのと同様だ。) 僕はその緊張感が気に入っている。 パンク以降の80年前後に想いを馳せながら聴こう。UK reggae、特にOn-U Sound 辺りの音が好きな人にも是非お勧めしたい。 Bristol一派はThe Pop Groupをはじめとするポストパンクの残り火だと僕は思う。 しかし、それはポストパンクの持っていた緊張感を骨抜きにされたもののように 僕は感じている。元The RaincoatsのGina BirchとVicky AspinallのDorothy "Reflection" (Cooltempo, COOLX187, '89, 12"EP)でSmith & Mightyの名前を 知ったが、Carlton "The Call Is Strong" (FFRR, 828 194-2, '90, CD)は、正直 言ってあまり好きでなかった。チャート的に大成功したSoul II Soulにも食指は 伸びなかった。それは、acid jazzが80年代前半のSimon BoothやPaul Wellerの 試みを骨抜きにしたもののように、もしくは80年代半ば以降のCreationレーベル 界隈のギターバンドやManchester一派がポストパンクのロックを骨抜きにしたものの ように、僕には感じられるのと、同じようなものだ。90年前後というのはそういう 時代だったのかもしれない。しかし、こうしてMassive Attackの新作を聴くと、 まだまだ捨てたものではないかもしれないな、と思ってしまう。 B.G.M.: Massive Attack featuring Tracey Thorn "Protection" Smith & Mighty featuring Dorothy "Reflection" 95/10/24 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕