はい、こちらTFJです。8月末頃にレゲエ好きの友達と夜遊びに行ったときに、 Guru GuruやCanの話が少々出た。これらの70年代のDeutschのrockとreggaeや dubに共通する点がある、とその一人が言っていた。それで僕が思い出した のがこのアルバムだった。家に帰ってテープを聴き返したら、やっぱりとても 良かったので、CDで買ってしまった。比較的入手容易なので、未聴の人には 是非お勧めしたい。 Holger Czukay, Jah Wobble, Jaki Liebezeit "Full Circle" (Spoon / Virgin, CDOVD437, '82/'92, CD) - 1)How Much Are They? 2)Where's The Money? 3)Full Circle (Radio Picture Series No.7) 4)Mystery (Radio Picture Series No.8) 5)Trench Warfare 6)Twilight World - Editing & Processing by Holger Czukay - Holger Czukay (g,organ,p,french horn,perc), Jah Wobble (b,vo,synth), Jaki Liebezeit (dr,perc,tr,vo) 元Can (70年代に活動したDeutschの実験的なロックバンド)のHolger Czukayと Jaki Liebezeitが、"Metal Box"までPublic Image Ltd.のベーシストだった Jah Wobbleと'81〜'82年に作った作品。 このアルバムはリリース当時TrioのModern Muzak Seriesから日本盤が出た。 また、シングル曲"How Much Are They?"は、'80年に自殺したIan Curtis (ex-Joy Division)に捧げられたものだ。この曲は、当時にTV CF(たしかHonda Tact)のB.G.M.に使われていたので、聴いたことがある人が多いに違いない。 "ミュージック・マガジン"誌91年12月号のダブの特集記事に、「10年近く前、 ホルガーに話を聞いた時、彼は「リー・ペリーはジャマイカに生まれた私の 兄弟だ」と語っていた。」と高橋健太郎は書いているのだが、このアルバムは Holger Czukayがレゲエ/ダブの作法に強い影響を受けた(共通点を見出した) その当時の作品といえるだろう。 この作品 − とくに"How Much Are They?" − を聴いて耳に付くのは、Public Image Ltd. "Metal Box" (Virgin)で聴かれるようなJah Wobbleの重く這いずり 回るレゲエ流儀のベースである。一拍目と三拍目にドラムのアタックが無い ので、あまりレゲエぽく聞こえないかもしれないが。 重いベースを背景に、Holger Czukayのギターやピアノ、ホルンが、感傷的な 旋律を弾く。その音の抜き差しや残響の掛け方、効果音の被せ方はまさにダブ ワイズだ。 70年代後半にLee PerryがBlack Ark Studioで制作した音 − 効果音を重ねて 高音と低音を強調した「ドンシャリ」と言われる音 − と同じような音という ほどではないと思うが、ダブの方法論なしには無かっただろうと思う音だ。 Holger CzukayやJaki Liebezeitはパンク以前からのミュージシャンではあるし、 レゲエとは別にダブと類似する音処理を試みてきた、と言えるかもしれない。 しかし、80年前後のパンクとレゲエの共闘から生れた様々な試み無しには、 この"Full Circle"のような作品は生れなかったとも思う。 94/10/31 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕