Soul Coughing "Ruby Vroom" (Slash, 45752-2, '94, CD) - 1)Is Chicago, Is Not Chicago 2)Sugar Free Jazz 3)Caciotone Nation 4)Blueeyed Devil 5)Bus To Beelzebub 6)True Dreams Of Wichita 7)Screenwriter's Blues 8)Moon Sammy 9)Supra Genius 10)City Of Motors 11)Uh. Zoom Zip 12)Down To This 13)Mr. Bitterness 14)Janine - Produced by Tchad Blake and Soul Coughing - Sebastian Stainberg (b,vo), Yuval Gabay (dr,vo), Mark De Gli Antoni (key, vo), M. Doughty (vo,g) 米"Pulse"誌94年11月号によれば2年前のバンド結成時はKnitting Factoryのドアマンを やっていたというM. DoughtyのバンドSoul Coughingのデビュー作。実際、"ミュージッ クマガジン誌92年8月号のKnitting Factory特集にもM. Doughty's Soul Coughingという 名前が見える。バックの顔ぶれも、Marc RibotのバンドのSebastian Stainberg、 ex- Electric OwthausのYuval Gabayといった、Knitting Factory Worksの作品で見た ことのある顔ぶれだ。ちなみに#2の"Sugar Free Jazz"という題はKnitting Factoryの バスルームのグラフィティから取ったらしい。 と書くと、フリージャズのような即興音楽のバンドと思う人もいるかもしれないが、 むしろG. Love & Special SourceやBeckのようなブルース的な要素とヒップホップ的な 要素を併せ持つバンドだ。それも、さすがKnitting Factory出身、さすがTchad Blake 制作、と思わせる怪しさを持っている。 Knitting Factoryで鍛え上げられたと思われるファンキーなリズムセクションが重くて 気持ちよいグルーブを生み出している。サンプリングは奇妙というか無気味さも感じ させて、非常に面白い。そして何よりも全体としての音の構成が良い。 大胆な打ち込みを導入したSuzanne Vega "99.9F" (A&M, 314-540 005-2, '92, CD)、 コラージュを多用したくぐもった音像が印象的なLos Lobosのメンバーとの共作Latin Playboys "Latin Playboys" (Slash, 45543-2, '94, CD)で、Tchad BlakeはMitchell Froomと組んで斬新な音作りに腕を振るっている。Mitchell Froom & Tchad Blakeは、 ここ数年で最も実験的な音構成をするUSの制作陣の1つと言えるだろう。この作品には Mitchell Froomの名前は見えないけれども、一連の実験的な音作りの上にあるといえる だろう。 「オルタナティヴやグランジ・ロックと呼ばれる音楽を聞いても、このグループとあの グループの差はほとんどない。しかも20年30年という目で見れば、べつに新しい音楽で も何でもない。リサイクルが進めば進むほど、エキサイティングではなくなってくる。 初期のロックンロールとくらべれば、その差は歴然としている。当時は``あんなのは 悪魔の音楽だ。火にくべて燃やしてしまえ。''と言われるくらいラディカルだった。 一般的にオルタナティヴだ、ラディカルだと言われているいまの音楽にかぎって、そう じゃなくて、退屈なものが多い。ごくたまにそうでないものも生まれる。ニルヴァーナ の登場がそうだった。ちょっとそれまでとはちがう素晴らしいレコードだった。 ところがそれが当ると、そのコピーが氾濫する。」 -- ミッチエル・フルーム ("ミュージックマガジン"誌94年9月号より) Mitchell FroomやTchad Blakeが今後どのような作品を制作をしていくのか楽しみだ。 USのalternativeの良質な成果といえる一枚。 B.G.M.: Suzanne Vega "Blood Makes Noise" Soul Coughing "Janine" 94/12/19 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕