1994年に発売された、もしくは日本入荷した中から選んだ10枚。1995年1月5日 当時に選んだ10枚に、コメントをレヴューから抜粋し、番外特選を加えた上で 再構成した。 第一位: Arnaldo Antunes "Nome" (RCA Brasil, 3-01500, '93, Brasil) 歌ともラップとも詩の朗読いえそうな様々な声、ノイジーなギター、間合いを 見ながら打ち込まれてくるようなデジタルのドラムのせめぎあい。音楽と映像 とか絶妙な矛盾するヴィデオ作品。もしこれがMPBの未来ならば、僕はもう待ち きれない。 第二位: Massive Attack "Protection" (Wild Bunch, WBRCD2, '94, CD) 元 Marine Girls の Tracey Thorn の歌声にしても、80年代初頭は The Pop Group の John Waddington が結成した Maximam Joy のメンバーだったPaul `Nelly' Hooper こと Nellee Hooper の制作にしても、80年頃の post-punkの 時代を思い出させる。そう、この音は、最先端のダンス音楽という以上に、 あの post-punk の緊張感を強く感じさせている。 第三位: The Folk Implosion "Take A Look Inside" (Communion, COMM32, '94, CD) かつての Ron Johnson を思いださせるギターのカッティング、スカスカで ギクシャクしたドラムとベースが叩き出すリズムも非常にかっこいい。 第四位: Ray Anderson, Ben Hennink & Christy Doran "Azurety" (Hat Art, CD6155, '94, CD) トローンボーン、ドラムそしてギターが明確な役割分担なしにせめぎあう、 高密度、高緊張感な演奏。 第五位: B.Y.O.B. "B.Y.O.B." (13 / Rycodisc, RCD10310, '94, CD) 目新しいことをやっているというより、jazzやhip-hop、funkなどの混ぜ合わせ 方が奇妙で、いつのまにか妙な世界いる、という具合だ。多くの人に受ける音楽 ではないが、"new black alternative"に名前負けしていない。 第六位: Soul Coughing "Ruby Vroom" (Slash, 45752-2, '94, CD) Knitting Factoryで鍛え上げられたと思われるファンキーなリズムセクションが 重く気持ちよいグルーブを生み出しているし、さすがTchad Blake制作と思わせる 怪しさを持った、blues / hip-hop 的な要素を持った音だ。 第七位: The Halo Benders "God Don't Make No Junk" (K, KLP29, '94, CD) 曲の展開や楽器の構成は、Beat Happeningと同じようなものだ。しかし、もっと メリハリがある。リズム隊がしっかりしたリズムを叩き出し、それに Dug の高音と Calvin の低音という2つの矛盾した歌声の掛け合いが緊張感を加えている。 第八位: Lucious Jackson "Natural Ingredients" (Grand Royal, GR009, '94, CD) 醒めた女性の声には、ざらっと少しズレた hip-hop 的な音が似合う。 第九位: The San Francisco Seals "Now Here" (Matador, OLE089-2, '94, CD) 基本的には普通のミニマルなギターポップなのだが、効果音が不自然に入っている。 そこがなんとも奇妙な作品だ。"Back Again"の終わり近くに突然音楽が途切れて 入る音など、なんども聴いてわかっているのにドキっとする。それが良いのだ。 第十位: Mad Professor "Black Liberation Dub Chapter 1" (Ariwa, ARICD95, '94, CD) 題材はいかにも黒人解放というもので紋切り型だなと思うけれども、コラージュの センスが良い。 番外特選: Myra Melford Trio "Alive In A House Of Saints" (hat Art, CD6136, '93, CD) 怒涛のライブ75分。華麗に舞い踊るピアノトリオ。 97/3/25 (95/1/5) 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕