リリース直後にGrail Marcusのコラムで取り上げられて存在は知っていたけれど、 店頭で見たことがなくRough Trade Shopでの注文も断わられてしまったこのCDを、 Virgin Mega Storeの京都店で見つけた。京都に行ってよかった。 Liliput "Liliput" (Off Cource, ASL-2CD-12-2, CD, '93) 78年から83年まで活動したZurich, CH出身の女性/男女混成ポストパンクバンドで あるLiliputの2枚組の集大成CD。Kleenex時代 (Kimbery-Clark社に訴えられて、 Liliputに改名した。) からの、5枚のシングル、2枚のLP、ラジオセッション等の 未発表曲14曲を含む全46曲全139分。レコードが入手困難になって久しいだけに、 うれしいCD再発だ。 女性中心のバンドであり、その音とRough Tradeからのリリースから、The Slits、 The Raincoatsなどと同じようなバンドとして、見られることが多かった。Grail Marcus [1]やDan Graham [2]の当時の評論を読むとそれがよくわかる。 実際に、僕もThe Raincoatsなどと同じような魅力を、このバンドに感じる。 ギターがWireのようなポップさを持ったThe Raincoatsという具合で、CD2枚 2時間以上聴きつづけても飽きないだけの魅力があると思う。 このバンドがThe Slits、The RaincoatsやAu PairsといったUKのバンドと異なる 点は、やはり歌詞に関する点ではないだろうか。彼女たちが英語で歌うのは、 英語をよく知らないからだということなのだそうだが、それゆえ、言語になる 前の発声−アーアーアー、ウーウーウーといった−が重視され効果的に使われて いるのだ。ある意味で、Kurt SchwittersのMelz詩を思わせるものだ。 93年から94年にかけて、Au PairsやThe Raincoatsといったバンドの作品もどっと CD化されたわけだけれども、このLiliputの再発CDも是非見つけて聴いて欲しい。 [1] Grail Marcus: Ideal Home Noise, from Ranters & Crowd Pleasure, pp.176- 181, AnchorBooks, 1994. [2] Dan Graham: New Wave Rock and the Feminine, from "Rock My Edition", pp116-137, MIT Press, 1993. [3] Grail Marcus (三井 徹 訳): スイスのパンクはドープである, ミュージック マガジン, 1993年10月号, pp126-128, 1993. 95/2/13 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕