"ラティーノ"誌を読んでいたら、「カエターノ・チルドレン」という言葉が目に ついた。Marisa MonteやTitasを指しているらしいが、彼らはCaetano Velosoと 違い確かBahia出身ではないと思う。この呼称はBrasilでのものではないだろう。 1年程前にBrasilから研修で来ていた人と昔に話をしたとき、Caetano Velosoは 田舎の歌手、と言う一方、Titasは最もかっこいいロックバンド、と言っていたのを 僕は思い出す。 Titasは、Brasilで気のあるロックバンド。といっても、日本ではArto Lindsayの 制作で知られる女性歌手Marisa Monteの共同ソングライター/共演者であるArnaldo AntunesとNando Reisのいるバンド、と言った方が通りがいいだろう。(表記の都合で、 以下、曲名を含めアクセント記号を付けていないが、Titasはaは¥‾{a}、つまり 「チタンス」である。) Marisa Monte "Mais" (EMI-Odeon Brasil, '90)や、Arnaldo Antunes "Nome" (RCA Brasil, '94)を聴くと、「カエターノ・チルドレン」とは言わないまでも、Brasilに 新しい動きの一つを感じる。これからどういう展開を見せてくれるのだろうという 期待の一方で、彼らがArto Lindsayらと出会う前はどんな活動をしていたのだろう、 という興味があった。 そんなことろに、Titasの10年間の活動を纏め上げた編集盤が2枚出た。 Titas "84 94 Um" (Warner Music Brasil, M450998894, '94, CD) - 1)Sonifera Ilha 2)Toda Cor 3)Nao Vou Me Adaptar 4)Familia 5)Homem Primata 6)O Que 7)Comida 8)Diversa‾o 9)Go Back (Remix) 10)Marvin (Patches) 11)Introducao Por Mauro E Quiteria 12)Miseria 13)Flores 14)O Pulso 15)Deus E O Diabo 16)Vinheta Final Por Mauro E Quiteria 17)Clitoris 18)Nao E Por Nao Falar 19)Hereditario 20)Disneylandia Titas "84 94 Dois" (Warner Music Brasil, M450998895, '94, CD) - 1)Babi Indio 2)Televisao 3)Autonomia 4)Cabeca Dinossauro 5)Igreja 6)Policia 7)Porrada 8)To Cansado 9)Bichos Escrotos 10)Jesus Nao Tem Dentes No Pais Dos Banguelas 11)Lugar Nenhum 12)Desordem 13)Nome Aos Bois 14)Massacre 15)AA UU 16)32 Dentes 17)Saia De Mim 18)Obrigado 19)Sera Que E Isso Que Eu Necessito? 20)Nem Sempre Se Pode Ser Deus 21)A Verdadeira Mary Poppins 84年から94年の10年間の間に発表された8枚のアルバムを2枚に編集したCD。 "Um"、"Dois" (Portuguesで「一」「二」) という題ではあるが、第一部と 第二部というわけではなく、演奏している曲の雰囲気から分けているようだ。 CDの中では年代順に並んでいる。心持ち"Um"はダンス指向で"Dois"はロック 指向に感じられる。 このCDにはメンバーのクレジットがないのであるが、8人組であり、以下の通り。 Branco Mello (vo), Paulo Miklos (vo), Marcelo Fromer (g), Toni Bellotto (g), Arnaldo Antunes (vo), Sergio Britto (key,vo) Nando Reis (vo,b), Charles Gavin (dr,perc) Brasilのバンドではあるが、サンバやボサノバといった音楽の影響はかなり薄く、 ロック、それもパンクやパンク以降のロックの影響を強く感じる。レゲエの リズムを使った曲もある。 決して独創的な音作りをしているように聴こえない。おそらく、80年以降の英米の パンク以降の音楽を聴き大いに影響を受けているのだろう、と思う。彼らに影響を 与えたと思われる欧米のパンク以降の様々な音楽と比べても、音に限っていえば 比較的凡庸な出来だと思う。Portuguesということもあって歌詞がほとんどわから ないのだが。 この編集盤の曲が収録されていたアルバムは以下の通り。 Titas "Titas" ('84) - Produzido por Pena Schimit U-1,2,D-1 Titas "Televisao" ('85) - Produzido por Lulu Santos U-3,D-2,3 Titas "Cabeca Dinosauro" ('86) - Produzido por Liminha, Vitor Farias, Pena Schimit U-4,5,6,D-4,5,6,7,8,9 Titas "Jesus Nao Tem Dentes No Pais Dos Banguelas" ('87) - Produzido por Liminha U-7,D-10,11,12,13,14,15 Titas "Go Back" ('88) - Produzido por Liminha U-8,9,10 Titas "O Blesq Blom" ('89) - Produzido por Liminha U-11,12,13,14,15,16,D-16 Titas "Tudo Ao Mesmo Tempo Agora" ('92) - Produzido por Titas U-17,18,D-17,18 Titas "Titanomaquia" ('93) - Produzido por Jack Endino U-19,20,D-19,20,21 "Cabaca Dinosauro" ('86)までの3枚のアルバムから曲は、安っぽい粗い感じの ポップ曲だ。ここが逆にパンク直後のロックに似た生きの良さがあり、僕は好きだ。 Liminha制作の'87 〜 '89の3枚のアルバムの曲になると、打ち込みなどの音が だいぶ重くなり、しっかり制作されている。が、逆に生々しさが消えたようだ。 間が空いての自己制作、さらにJack Endino (Sub Popなどでグランジな音を多く 手懸けている) の制作になった2枚のアルバムからの曲は、歪んだギターの音も 目立ち、USのグランジ流行の影響も受けたのだろう、という感じだ。 では、このCD 2枚の中にMarisa Monte "Mais"やArnaldo Antunes "Nome"に繋がる 手懸かりがあったかというと、はっきり言ってかなり落差がある。かつて、Marisa Monteのインタビューで、Arto Lindsay制作のCaetano Veloso "Estrangiero" (Nonsuch, '89) を聴いてArtoに制作を頼んだ、と言っていた。この作品の影響が やはり大きかったのではないだろうか。 95/2/23 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕