はい、こちらTFJです。hat Hut 20th Anniversary企画、hat ART特集。まずは、 Werner X. Uehlingerが"Downbeat"誌のインタヴューで最も重要な録音の一つと して挙げたというこの作品。 Anthony Braxton "Composition 98" (hat Hut / hat ART, 1984, '81, 2LP) - A,B)Composition 98 (Studio) C,D)Composition 98 (Live) - A,B Recorded on 81/1/19. C,D Recorded on 81/1/29 - Anthony Braxton (as,ts,ss,sopranino sax,C melody sax), Marilyn Crispell (p), Ray Anderson (trombone,alto trombone,slide trumpet) Hugh Ragin (tp,flugelhorn,piccolo tp) ちなみに、CDは持っていないのだが、カタログによれば、 Anthony Braxton "Composition 98" (hat Hut / hat ART, CD6062, CD) LP2枚組約100分の演奏が入るわけがないので、曲が削られている可能性がある。 望遠鏡を擬したような抽象的な絵が"Composition 98"を表しているこの作品は、 ジャケットを被うようにAnthony Braxton自身による長大なライナーノーツが付いて いる。これを読むと、「受容力学 (Reception Dynamics)」というものを使って、 この作品をまとめている。この作品では、1.どこにジャズがあるんだ? (Where is dee jazz?) 2.退屈 (Boredom) 3.ユーモア (Humor) 4.怒り (Anger) 5.何だ? (What is it?) の5つの段階が、聴き手が「我々の音楽」への道を開くことを 希望している、との本人の弁だが。こういう結語を読むとライナーノーツ自身が タチの悪い冗談に思えてくる。52頁の楽譜があるそうだが、その抜粋を見ても、 そう何でも決まっているわけではなさそうだ。 実際に音を聴くと、「受容力学」に従えば僕には2.退屈と3.ユーモアの間くらいに 聴こえる。Braxtonのプッツン切れたサックスはあいかわらずよくわからないし、 ドラムもベースもいないのでノリとかいうものは端から期待できない。実験的な 「現代音楽」の感じに近い。実際のところは、サイドメンに惹かれて聴いてみたの だが。Marilyn Crispellのピアノはお約束として、ブラスの2人Ray Andersonと Hugh Raginの音が面白い。Ray Andersonの音が最近のお気に入り、ということも あるのだろうが。 この作品もスタジオ盤とライブ盤がセットになっていて、ちょっとした企画物と いった感じだ。Uehlinger氏が重要だと言ったのは、演奏それ自身よりも、この ような企画のコンセプト全体を指しているのかもしれない、と思った。 95/3/13 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕