はい、こちらTFJです。初来日記念Violent Femmes特集です。彼らの81年から 10年以上の活動の足跡をレコードを通して見ていくことにする。 Violent Femmes "Violent Femmes" (Slash / Rough Trade, ROUGH55, '82, LP) - A1)Blister In The Sun 2)Kiss Off 3)Please Do Not Go 4)Add It Up 5)Confessions B1)Prove My Love 2)Promise 3)To The Kill 4)Gone Daddy Gone 5)Good Feeling - Produced by Mark Van Hecke - Gordon Gano (vo,g,vln), Brian Ritchie (acoustic bass guiter,xylophone, electric bass,vo), Victor De Lorenzo (snare dr,transceaphone,drs,scotch marching bass drum,vo); Mark Van Hecke (p) Violent FemmesはMilwaukee, WI, USA出身のGordon Gano, Brian Ritchie, Victor De Lorenzoの3人組。81年頃から地元のコーヒーハウスやバスキング (大道芸) で 活動していた。Pretentersの全米ツアーのときにチケット売場に並ぶ客の前で バスキングしていた所がPretendersのメンバーJames Honeyman-Scottの目に止まり、 ツアーの前座に抜擢され、LAのパンクのレーベルSlashと契約が決まった、という 話は有名だ。 Gordon Ganoがちょっと錯乱気味の歌声で歌う辛辣なユーモアに溢れた歌詞も、 フォークやロカビリーパンクの味を生かしバスキングのような単純な構成ながら パンク的な縦ノリも良い独特の音楽性も、この時点で既に完成していた。 彼らの音楽の最大の魅力は、彼らの演奏の原点でもあるバスキング (大道芸) 的 なところだと、僕は思う。非常によくできた大道芸のような面白さがある。 このデビュー作は、彼らの音楽性が最も純粋な形でまとまった名曲揃いの名作。 ライブでもこの作品の曲を中心に演奏した、というのは、よくわかるような気が する。ぜひ聴いて欲しい。 このアルバムはSlashからと同時にRough Tradeを通してUKでもリリースされた。 続いて行なわれたUKツアーの時にLondonでスタジオ録音されRough Tradeからのみ リリースされたシングルがこれだ。 Violent Femmes "Ugly" (Rough Trade, RT147, '83, 7") - A)Ugly B)Gimme The Car 基本的に1st "Violent Femmes"と同じ構成の曲。この2曲を追加曲に、1stはCD化 されている。 Violent Femmes "Violent Femmes" (Slash, 9 23845-2, '83, CD) 今では、このCDが入手容易でお薦めだ。(以下ではLP, CDとも収録曲が変わらない ので、入手容易なCDで紹介する。) Violent Femmes "Hallowed Ground" (Slash, 9 25094-2, '84, CD) - 1)Country Death Song 2)I Hear The Rain 3)Never Tell 4)Jesus Walking On The Water 5)I Know It's True But I'm Sorry To Say 6)Hallowed Ground 7)Sweet Misery Blues 8)Black Girls 9)It's Gonna Rain - Produced by Mark Van Hecke 2ndからホーンセクションThe Horns Of Dilemmaが参加。このメンバーの中にJohn Zornがおり、フリーキーなサックスを聴かせてくれる。歌詞が宗教 (キリスト教) をテーマにしているものが多く、ちょっと暗めの曲が多い。パンク的なノリが あまりなく、ジャズ的なニュアンスが強い。音は厚くなったし、いろいろ面白い 音が入っているのだが、それが裏目に出た所もある。 Violent Femmes "The Blind Leading The Naked" (Slash, 9 25340-2, '86, CD) - 1)Old Mother Reagan 2)No Killing 3)Faith 4)Breakin' Hearts 5)Special 6)Love & Me Make Three 7)Candlelight Song 8)I Held Her In My Arms 9)Children Of The Revolution 10)Good Friend 11)Heartache 12)Cold Canyon 13)Two People - Produced by Jerry Harrison Talking HeadsのJerry Harrisonを制作に迎えての3作目は、パンク的な縦ノリが 復活している。The Horns Of DilemmaにはJerry HarrisonやFred Frithが参加し、 音数は増えているのだが、非常に整理されて制作されている。あまりバスキング 的な構成ではなく、ロック風味の強い作品。9曲目のChildren Of The Revolutionは T-Rexのカバー。 Violent Femmes "3" (Slash, 9 25819-2, '88, CD) - 1)Nightmares 2)Just Like My Father 3)Dating Days 4)Fat 5)Fool In The Full Moon 6)Nothing Worth Living For 7)World We're Living In 8)Outside The Palace 9)Telephone Book 10)Mother Of A Girl 11)Lies 12)See My Ships - Produced by Violent Femmes 2年おきの4作目は、初の自己制作。The Horns Of Dilemmaも2人だけになり、 非常に簡素な音になった。が、ベースやドラムの音がなめらかで、パンク的と いうよりもフォーク的だ。 その後、しばらくメンバーのソロ活動か続き、解散が噂されていた。 Violent Femmes "Why Do The Birds Sing?" (Slash, 9 26476-2, '91, CD) - 1)American Music 2)Out The Window 3)Look Like That 4)Do You Really Want To Hurt Me 5)Hey Nonny Nonny 6)Used To Be 7)Girl Trouble 8)He Like Me 9)Life Is A Scream 10)Flamingo Baby 11)Lack Of Knowledge 12)More Money Tonight 13)I'm Free - Produced Michael Beinhorn, Victor DeLorenzo, Gordon Gano & Brian Richie 元MaterialでThe Red Hot Chili Peppersの制作も手懸けたことのあるMichael Beinhornを制作に迎えての5作目。The Horn Of DilemmaはなくなりMichael Bein- hornと4人で演奏している。一つ一つの音の輪郭がはっきり録音されており、 ドラムとベースの音が際だっているのが良い。また、曲も久々に非常にノリが 良いポップな曲になっている。内ジャケットにバスキングをしているデビュー 前後の写真を使っていることもあり、デビュー当時のイキの良さが戻ったようだ。 いかにもバスキングでできそうな曲が多い。4曲目の"Do You Really Want To Hurt Me"は、Culture Clubのカバー。この作品は最もポップな作品で名曲名演揃い。 お薦めだ。 "Why Do The Birds Sing?"を最後に、10年近く在籍したLAのパンク/ポストパンクの 代表的なレーベルSlashから、メジャーElektraへの移籍が決まった。このレーベル 移籍の真相について,Pulse!誌94年7月号に書かれている[1].一連のSlashからの 作品がプラチナディスクにならないことが問題になって,録音させてもらえなく なったことが原因らしい. Violent Femmes "Add It Up (1981-1993)" (Slash, 9 45403-2, '93, CD) - 1)Intro 2)Waiting For The Bus 3)Blister In The Sun 4)Gone Daddy Gone 5)Gordon's Message 6)Gimme The Car 7)Country Death Song 8)Black Girls 9)Jesus Walking On The Water 10)36-24-36 11)I Held Her In My Arms 13)America Is 14)Old Mother Reagan 15)Degradation 16)Dance, M.F., Dance! 17)Lies 18)American Music 19)Out The Window 20)Kiss Off 21)Add It Up 22)Vancouver 23)Johnny Slashを離れるにあたって制作された編集盤。未発表曲やライブ録音を中心 (14曲) に編集されているので、ベスト盤というのとはまた違うのだが。少々散漫な感も あるけれども、ファンには嬉しい録音も多い。特に、ライブ録音では客の歌声も ちゃんと入っており、彼らの楽しいライブの雰囲気をよく伝えていると思う。 Violent Femmes "New Times" (Elektra, 9 61553-2, '94, CD) - 1)Don't Start Me On The Liquor 2)New Times 3)Breakin' Up 4)Key Of 2 5)4 Seasons 6)Machine 7)I'm Nothing 8)When Everybody's Happy 9)Agamemnon 10)This Island Life 11)I Saw You In The Crowd 12)Mirror Mirror (I See A Damsel) 13)Jesus Of Rio - Produced by Brian Richie & Gordon Gano - Gordon Gano (vo,g), Brian Richie (b,vo), Guy Hoffman (dr,vo) メジャーElektra移籍第一弾では、鉄壁と思われた3人組についにメンバー交替が あった。ドラマーがGuy Hoffmanに変わった。特に音楽性が変わったわけでは ないが。自身による制作だが、"Why Do The Birds Sing?"どうよう、音の輪郭が はっきりした良い録音。少々ロック的な演奏で、"Why Do The Birds Sing?"ほどの ポップさはない。 Milwaukee, WIの永遠のバスキングバンドViolent Femmes、メジャー移籍を期に、 ホールやスタジアムでやるようなロックバンドにならないことを願うばかりだ。 参考文献 [1] Tom Lanham, Gone Daddy Gano, Pulse, No.128, July, 1994. 95/3/19 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕