Various Artists "Dub Revolution" (RIOR USA, 8207, '94, CD) - 1)Dub Revolution (The Disciples) 2)Cuttlefish Dub (Zion Train) 3)Tribal Dub (Bush Chemists) 4)Genesis Dub (Testament) 5)Contentious Dub (Alpha & Omega) 6)Release The Chains (Centry Meets The Music Family) 7)Crying Blood (Little Lord Creator) 8)Mountain Of Hadith (Scarab) 9)Dub Thru Jah (Tribulation All Stars) 10)Dub Warmth (Fish & Goat At The Controls) 11)Dub-Hop Anthem (WordSound) 日本国内で「ニュー・ルーツ」と呼ばれているUKのルーツ指向のレゲエ・バンドの 編集盤が、USのROIRから出た。UKのルーツ・レゲエの新世代の今を知るのに、 ちょうど良い編集盤なのではないだろうか。音も緩く重くダブがかっており気持ち 良いものが多い。On-UやAriwa、Jah Shakaが好きな人は必聴だろうし、オルタナ ティヴなロックを好んで聴く人にも聴いて欲しい編集盤だ。さらに、特に付属の ライナーノーツは、これからさらに進んで聴こうという人に非常に参考になる。 去年頃から「ニュー・ルーツ」という言葉が音楽雑誌で目につくようになった。 この編集盤で取り上げられているようなUKのバンドの音を指してのことなのだが。 実体としては、70年代にJah ShakaやLloydie CoxsoneらがUKにもたらした重い ルーツとダブを祖とし、80年代初頭始まったJah Shaka、Mad ProfessorのAriwa、 Adiran SharwoodのOn-Uといったレーベルのバンドに続く新世代、といった所か。 ちなみに、これらの音を演奏している人たちの多くはジャマイカ人ではないらしい。 Various Artists "Roots Daughters" (Ariwa, ARILP039, '88, LP)のライナー ノーツを併せて読んで思うのだが、このUKでのルーツというのは、ラスタ思想で あるとかUKでの人種差別などの社会的状況に直接端を発しているというより、 むしろ、ダンスホールが支配的になってしまったレゲエの流行への反立として 成立しているようだ。 このCDには、比較的ルーツの様式を忠実に打ち込み中心で再現した演奏のダブが 収録されている。今後、彼らがどういう展開をしていくのか、この編集盤からだけ では想像は難しい。先輩格のAriwaのMad ProfessorやOn-UのAdriam Sharwoodが ルーツ・レゲエの様式にこだわらない幅広い音楽に対してその個性を発揮している ような、そういう展開をするバンドやレーベルが出てくれば面白くなるだろう、 と思う。そして、Nirvana "Smell Like Teen Spirit"のベースラインを使った 6曲目のCentry Meets The Music Family "Release The Chains"のような曲や、 最後のヒップホップとの混成とも言えるWordSound "Dub-Hop Anthem"といった 曲に、そういった可能性の一端を見るような気がする。 このUKレゲエの新世代は、レーベルで見ると、中小の独立レーベルが起き始めた ばかりのようだ。その中でも最も大きい役割を持っているように思われるのは、 WWWM (Wibbly Wobbly World of Music)レーベルと、その傘下のConcious Sounds レーベルだろうか。WWWMは2曲目を演奏しているZion Trainのレーベルで、CDは 国内の輸入盤量販店でもみかける程だ。傘下のConcious Soundsは、Bush Chemistや Centry Meets The Music Familyといった、このCDで面白い演奏を聴かせるバンドを 擁していて、興味深い。その他にも、このCDのライナーノーツから判る限りでは、 Jah Shakaから独立したThe DisciplesのBoom Shaka Lackaや、量販店でCDをみる Alpha & Omegaの自身のレーベルAlpha & Omega、7曲目のLittle Lord Createrの他、 Martin Campbell、The Outsider、The Hi-Tech Roots Dynamicsといったバンドを 擁するJah Worksレーベル、9曲目のTribution All Starsを擁するWord Sound & Power、10曲目のFish & Goat At The Controlsを擁するSound N'Pressureという レーベルがあるようだ。このCDとこういったレーベルを頼りに、新たな音を探して みるのも良いだろう。 B.G.M.: Nirvana "Smell Like Teen Spirit" 95/3/19 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕