Original Motion Picture Soundtrack "Kids" (London, 422 828 640 2, '95, CD) - 1)Casper (Daniel Johnston) 2)Daddy Never Understood (Deluxx Folk Implosion) 3)Nothing Gonna Stop (Folk Implosion) 4)Jenny's Theme (Folk Implosion) 5)Simean Groove (Folk Implosion) 6)Casper The Friendly Ghost (Daniel Johnston) 7)Natural One (Folk Implosion) 8)Spoiled (Sebadoh) 9)Crash (Folk Implosion) 10)Wet Stuff (Folk Implosion) 11)Mad Fright Night (Lo-Down) 12)Raise The Bells (Folk Implosion) 13)Good Morning Captain (Slint) - Soundtrack album produced by Randall Poster Exective Producers: Larry Clark, Harmony Korine & Cary Woods 否定は虚無主義ではない。虚無主義は何も信じない、何にもなりたくないと いうことである。ラリー・クラークの『タルサ』はその虚無主義そのままを 描写している。これは写真による60年代の若者の回想で、若者たちは外見の ような人物になる代わりに、つまりチャーリー・スタークウェザーズや キャリル・フューゲーツの地元版になる代わりに、スピードでもって死に 突進している。否定とは、世の中は見せかけとはちがうということを万人に 対して自明のことにする行為である。しかし、その行為があまりに完璧で あり、世の中は無かもしれないという可能性を開いたままにしておくほどで あってこそ、虚無主義が創造と同様、その突然ひらかれた領域を占めるので あるのかもしれない。 -- グリール・マーカス (1983) [1] 94年から世界を巡回している"Pictures of the Real World (in Real Time)" 展で、この『タルサ』からの1枚の写真を見ることができる。1971年にタルサ という町の若者たちを写したこの白黒写真を撮ったLarry Clarkが撮った 最新の(初めての?)映画が、この"Kids"である。 数カ月前の"Artforum"誌の表紙を飾っていたこの"Kids"だが、残念ながら、 その記事を読んでいないので、この映画がどのようなものか知らない。が、 映画の題名とこのサウンドトラックのCDの表紙に使われているスチルとから 伺う限り、90年代のLarry Clarkの写真集"Die Perfekte Kindheit"に近い ものが感じられる。もちろん、このCDのジャケットに使われているスチルは 無難なものであるが、日本でのこの映画の上映は難しい、という噂も聞く。 さて、このようなLarry Clark監督の映画"Kids"のサウンドトラックは、 Randall Posterの制作で、Folk Implosionの演奏を大幅に用いたものに なっている。Larry Clarkなどという写真家など知らなくても、去年の傑作 The Folk Implosion "Take A Look Inside..." (Communion, COMM32, '94, CD) 以来、新作を待っていた人にとっては、充分に楽しめる音楽作品だろう。 その他、Daniel Johnston, Sebadoh, Slintといったバンドの演奏もあるし、 それも悪くない。 The Folk Implosionは、Lou Barlow (Sebadoh)とJohn Davisの二人組。 去年の"Take A Look Inside..."では、かつて80年代半ばにEnglandで活躍 したレーベルRon Johnsonを思い出させるような、素晴らしくギクシャクした ギターポップを聴かせてくれた。これは、ホームレコーディングということも あったのかもしれないが。しかし、この"Kids"で聴かれる演奏は、もっとよく 制作された音になっていると思う。ギターがほとんど使われておらず、少し 安めの打ち込みやキーボードの音が中心になっている。"Take A Look Inside..." のような音は期待できない。ギクシャクした感じは失われているが、Lucious Jacksonにも似た奇妙なグルーブが生れていると思う。少なくとも映画の背景 音楽以上のものがあると、僕は思う。 [1] グリール・マーカス: ガリバーは語る, in "ロックの「新しい波」" (三井 徹 訳), 晶文社, 1984. B.G.M.: Sonic Youth "Freezer Burn / I Wanna Be Your Dog" 95/8/24 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕