紹介は遅れているけれども、trip pop界隈の作品の紹介。 Tricky "Maxinquaye" (Fourth & Broadway, BBCD610, '95, CD) Massive AttackやPortisheadと同じくBristol出身のTrickyの新作。 この作品やPortishead "Dummy"を聴くと、Massive Attackの特異さが際立つ ように思う。Massive Attack "Protection"の中でいえば、Nicoletteの歌い 方などは、これらの作品と似ている。さえずるような女性の歌声、これが trip popの一つの典型になっていると思うし、Bjorkのtrip popとの親和性も ここにあるのかもしれない。もちろん、tricky自身がDJしている歌もあるが。 ただ、こういった歌声は曲に交じり込んでしまう。ダンス音楽としては、 それでもいいわけだが。そういう点では、Tracey Thornの強力な歌声を フィーチャーしたMassive Attack "Protection"は、歌としての魅力もある。 それがダンスフロアで聴いていない僕の印象に残っている理由かもしれない。 Bomb The Bass "Clear" (Fourth & Broadway, BBCD611, '95, CD) これをtrip popと分類するのには難があるかもしれないが。Tim Simenonの ブロジェクトBomb The Bassの新作は、古巣Rhythm Kingを離れてメジャーの Fourth & Broadwayから。 Tim Simenon & Friendsとでもいうべき構成になっている。Tack Headの演奏の 曲もあるが多くはない。前作Bomb The Bass "Unknown Territory" (Rhythm King, 468774-2, CD, '91)と違いギターが目立たない。鈴木賢次も参加して いない。"Love So True"や"Winter In July"のような甘い曲 (今に聴くと、 trip popぽい)、120bpm前後のアップテンポな曲も目立たない。("You See Me In 3D Remix"の緩急などjungleぽいし、久々に聴き返して"Unknown Territory" って面白いなと、再発見してしまった。) ちょっとおとなしくなった。 Century / On-U Soundで知られるBim Sharman、Smith & Mightyの制作で アルバムを出していたCarltonなど、さまざまな歌手を迎えているが、あまり 曲毎に色が変わるわけでない。 Sinead O'Connerが歌っている曲は期待していたのだが、裏声でか細く歌って いて、少し残念。Nellee Hooper制作の"Nothing Compares 2 U" (Sinead O'Conner "I Do Not Want What I Haven't Got" (Ensign, CHEN14, '90)所収) のように情念いっぱいに歌い上げて欲しかった。 Bomb The Bassを取り上げたついでに。 Little Axe "The Wolf That House Built" (OKeh, 64254, CD, '94) Tack HeadのSkip McDonaldによる"ambient dub blues project"。メンバーは Tack Headとほぼ変わらず、制作もAdrian Sharwood。 G. Love & Special Sourceを第一弾にとする新生OKehからのリリースという のが、なかなか興味深いが。スライドギターの音色と節回しにbluesを感じる けれども、リズム隊はTack Headならではのreggae / dub流儀だ。 ぱっと聴いたときは面白いと思ったが。その先に進めない。単なる企画モノか。 95/9/20 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕