1995年に発売された中から選んだ10枚。 第一位: David S. Ware Quartet "Cryptology" (Homestead, HMS220-2, '95, CD) うなるテナー vs ピアノを含むリズム隊3人のCecil Taylor的な構成的な 即興演奏。複数の時間が流れるような"Dinosauria"が秀逸。Wareのテナーの 代わりにヴァイオリンが入った形のMatthew Shipp Quartet "Critical Mass" (213CD, 213CD003, '95, CD)もなかなか良い。そういえば、'95年はCecil Taylorの新作のリリースが無かったのが、少々寂しい。 第二位: Don Byron "Music For Six Musicians" (Nonsuch, 7559-79354-2, '95, CD) のんびりしたテーマのラテン風のノリの良い所と、フリーキーにキーキー ガンガンやっている落差が面白い作品。Bill Frisellのギターも乱入する "I'll Chill On The Marley Tapes..."が特に良い。 第三位: The Ex & Guests "Instant" (Ex, EX063/064D, '95, 2xCD) Ab Baars, Walter Wierbos, Han Bennink, Tristan HonsingerらICP界隈の ミュージシャンを迎えてのAmsterdamのポスト・パンク・バンドの大即興大会 2枚組。玩具箱をひっくり返したような楽しい作品。ミシン・オペレーター (足踏みミシンにドラムとテーププレーヤーをつなげた物?)のHan Benninkの ソロが聴かれたりするのだ。爆笑。ICPといえば、Misha Mengelberg "Mix" (ICP, ICP030, '95, CD)は静謐なピアノソロ。 第四位: Ray Anderson, Han Bennink & Christy Doran "Cheer Up" (hat ART, CD6175, '95, CD) 昨年"Azurety" (hat ART, CD6155, '94, CD)で緊張感あふれる掛け合いを 聴かせてくれたこのトリオは、この作品ではもっとバンド的なノリの良さも 聴かせてくれる。Christy Doranの書いた曲がアフロ〜ラテン風で面白い。 Doranといえば、Doran, Studer, Minton, Bates, Ali "Play The Music Of Jimi Hendrix" (Instuition, INT2134-2, '95, CD)には爆笑。 第五位: Elvis Costello & Bill Frisell "Deep Dead Blue" (Warner Bros. / Nonsuch, 9362-46073-2, '95, CD) Bill Frisellの音数少ないギターが作り出す音空間にElvis Costelloが歌い 込むCharles Mingusの"Wierd Nightmare"他7曲。静かな夜の奇妙な悪夢の B.G.M.。この構成で名曲"Shipbuilding"を聴いてみたかった。 第六位: Craig Harris "F-Stops" (Soul Note, 121255-2, '95, CD) アフリカ風のフレーズをノリ良く出すコード楽器 (ピアノ、ギター) が Harrisの良く鳴るトローンボーンを生かしている。そういえば、トロンボーン カルテットのR. Anderson, C. Harris, G. Lewis & G. Valente "Slideride" (hat ART, CD6165, '95, CD)は、変な作品。 第七位: Ornette Coleman & Prime Time "Tone Dialing" (Harmolodic, 314 527 483-2, '95, CD) ドラムプログラミングやDJを使った作品としては、Verson Reid、Jean=Paul Bourelly、Brandon Rossという凶悪ギタリスト3人を迎え、サックスSteve Williamsonと息も合っているコルネット奏者Graham Haynes "Transition" (Verve, 529 039-2, '95, CD)も良いが、少々生真面目過ぎか。Ornette Colemanのへなちょこなアルトの響きに脱力する。後半のアコスティックな 曲を聴いていると、Geri Allenらとのアコースティックなカルテットも 聴いてみたくなる。 第八位: Anthony Braxton's Charlie Parker Project 1993 (hat ART, CD2-6160, '95, 2xCD) 最近はめっきりピアニストになってしまった!? Anthony Braxton。ここでは Misha MengelbergやHan Benninkらと一緒に、良い吹きっぷりでbe-bopの曲を 脱構築。壊れる落差が良い。プッツンした辛気臭いBraxtonのサックスも 好きなのだが、'95年の作品ではあまり聴かれなかった。 第九位: Henry Threadgill "Making A Move" (Columbia, CK67214, '95, CD) Bill Laswellの陰謀で予想外のメジャー展開をしているHenry Threadgill。 Very Very Circus Plusによる"Carry The Day" (Columbia, CK66995, '95, CD) は顔見せ。"Song Out Of My Trees" (Black Saint, 120154-2, '94, CD)での 変則的な構成での演奏も含めた"Making A Move"は、シカゴ前衛風の辛気臭い 曲からブラスバンド風のノリの良い曲まで、節操無さが楽しい。 第十位: Myra Melford Extended Ensemble "Even The Sounds Shine" (hat ART, CD6161, '95, CD) Myra Melford Trio "Alive In The House Of Saints" (hat ART, CD6136, '93, CD)で強烈なまでに華麗な演奏を聴かせてくれたピアノトリオの、Dave DouglasとMarty Ehrlichの二管をフロントに据えてのクインテットでの新作。 Melfordの作編曲も良いし、二管の鳴りも良い。しかし、バッキングにまわり がちなMelfordのピアノが物足りない。力強く舞い踊るMelfordの華麗な ピアノ演奏をもっともっともっと聴きたい。 次点: 変拍子funkなbe-popも面白いSteve Coleman & Five Elements "Def Trance Beat (Modalities Of Rhythm" (Novus, 01241-63181-2, '95, CD)は、まるで ラップ作品のジャケットだったが、ラップ作品はSteve Coleman & Matrics "A Tale Of 3 Cities, The EP" (Novus, 01241-63180-2, '95, CD)と別売。 おかげでそれぞれ小さめにまとまってしまったかのようで、いま一歩。 番外特選: Rachid Taha "Ole Ole" (Barclay, 529 481-2, '95, CD)は、Steve Hillage (System 7)の作り出すテクノの高bpmビートに煽られるTahaのNon! Non! Non!と いう全てを疑問に感じさせる叫び声だけのためでも、聴く価値がある。 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕