Rachid Taha "Ole Ole" (Barclay, 529 281-2, '95, CD) - 1)Valencia 2)Nokta 3)Baadini 4)Comme Un Chien 5)Boire 6)Zaama 7)Tabla Motown 8)Non Non Non (Multinational Version) 9)Jungle Fiction 10)Kelma 11)Non Non Non 12)Ole Ole - Produced by Steve Hillage - Rachid Taha (vo), Steve Hillage (programming,guitar), Kirsty Hawkshaw (vo), Martin Ditcham (perc), Jim Abbiss (key), Leo Williams (bass guitar), Hagag Kenway (perc), Geoffrey Richardson (vln,viola), Helen Liebmann (cello), Nabil Khalidi (vo,lute,banjo), etc Lyonの在仏アラブ二世である元Carte De Sejour (80年代に活躍した在仏アラブ人 ロックバンド。フランス語で「滞在許可書」という意味。) のRachid Tahaの新作は、 前作Rachid Taha "Rachid Taha" (Barclay, 517 968-2, '93, CD) 同様に、元Gong で現System 7のSteve Hillage制作。 前作はほとんどテクノのトラックを背景にRachid Tahaが歌うという感じだったが、 この作品では、Rachid Tahaのロック流儀の歌声やギターのカッテイングなどが ぐっと前に出て、ポップ/ロック的な味が強い作品になっている。Kirsty Hawkshaw (PWLレーベルということは、ユーロビートの歌手だろうか) という女性歌手の 存在も、良いアクセントになっている。もちろん、彼の出自であるのアラブ風の 味付け(歌詞の言語、楽器の音色、旋律)も、相変わらずよい。 Kirstyの透明な声も印象的なトリップ・ポップ風の"Valencia"、ジャングル風の "Jungle Fiction"などが、面白いが、Rachid Tahaならではの辛辣な歌詞の歌声を テクノに乗せる"Non Non Non"を聴くだけのためにでも、このアルバムは買う価値が あるだろう。高bpmの激しいリズムに煽られた「自由について知っているか? / Non! Non! Non! / 平等はあるか? / Non! Non! Non! / 博愛についてはどうだ? / Non! Non! Non!」というRachid Tahaの疑問の問いかけと否定の叫びを聴くと、 あらゆることが疑わしく感じられてしまうほどだ。この"Non! Non! Non!"の叫びを 僕はダンスフロアで聴いてみたい。 Rachid Tahaが1曲ごとにコメントを書いているのだが、これが興味深い。1曲目の "Valencia"はJ. M. C. Le Clezioの小説"The Desert"にインスパイアされたもの だという。"Tabla Motown"はもちろんノーザン・ソウルのレーベルTamla Motown から、"Jungle Fiction"は映画"Pulp Fiction"から取ったそうだ。 ちなみに、ジャケットの写真はMassive AttackやBjorkのジャケット写真で知ら れるJean-Baptiste Mondino。金髪に脱色した彼のポートレイトは、Rachid Taha というアラブ風の名前が添えられていなければ、そうとはわからないほどだ。 このレコードはワールド・ポップの棚に並べられている。確かに、リンガフランカ (アラビア語?)で歌われ、アラブ風の旋律や音色も聞こえる。在仏アラブ二世と いうことで、Carte De Sejour時代から、彼らが抱える問題を題材にした歌を歌い 続けてきている、ということもある。しかし、Steve Hillage制作によるテクノ風の 音といい、Le Clezioの小説や映画"Pulp Fiction"から影響を受けた曲作りといい、 ジャケット・デザインといい、欧米のポップ/ロックと分類されるような作品 との共通点もなかり大きな作品だし、そういうものとして評価しても非常に良く 出来た作品だと思う。是非とも探し出して聴いて欲しい。 96/1/4 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕