新譜ではないが、'95年末の音盤店巡りで発掘したレコードから。 David S. Ware "Birth Of A Being" (hat Hut, W, '79, LP) - A1)Prayer 2)Thematic Womb B1)A Primary Piece #1 2)A Primary Piece #2 - Recorded on 79/4/14,15 - David S. Ware (ts), Gene Y. Ashton (p), Marc D. Edwards (ds) 近年はShilkheart, DIWから作品を出し続け、'95年もDavid S. Ware Quartet "Cryptology" (Homestead, HMS220-2, '95, CD) という強力な作品をリリース したテナーサックス奏者David S. Wareの'79年の初リーダー作。当時の'70年代 末頃の彼の演奏が聴かれる作品としては、以下のものがある。いずれもCD化され ており入手は比較的容易だ。 The Cecil Taylor Unit "Dark To Themselves" (ENJA, '76) Andrew Cyrille & Maono "Metamusicians' Stomp" (Black Saint, '78) Andrew Cyrille "Special People" (Soul Note, '81) 太く強く唸るような響きが心地好いWareのテナー・サックスだが、ここでも "Dark To Themselves"でのドラム奏者でもあるEdwards、Cecil Taylorより軽く 華やかに聞こえるパーカッシブなピアノ奏者であるAshtonとのベースレスの トリオで、Cecil Taylor流儀ともいえる構成的な即興演奏を聴かせてくれる。 Wareの書く曲のせいか、Ashtonのピアノの印象のせいか、小編成でけたたまし 過ぎないせいか、Cecil Taylorの作品よりずっとノリがよくて聴きやすい。 近年のquartetでのピアノ奏者Matthew Shippといい、David S. Wareのテナーは、 ピアノの音と相性が良いように思う。70年代末のDavid S. Wareの名演としては 2管quartetでの"Metamusicians' Stomp"が挙げられることが多いが、それよりも 僕は気に入った。 というわけで、発掘した甲斐があったこのLPだが。惜しむらくは未CD再発の ために入手が容易ではない。hat Hutはhat ARTシリーズで精力的なCDリリースを しているが、こういう過去の優れた作品のCD化ももっと進めて欲しい。 余談だが、hat ARTへのCD化希望盤としてはSteve Lacy Nine "Prospectus"という ものもある。disc union新宿店がやっていたhat ARTアンケートに答え損ねた のが、非常に悔やまれるのであった。 96/1/4 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕