Prince Far I And The Arabs
"Cry Tuff Dub Encounter Chapter 3"
(Pressure Sound, PSCD007, '80/'95, CD)
- 1)Plant Up 2)Back Weh 3)The Conquest 4)Final Chapter 5)Shake
The Nation 6)Homeward Bound 7)Low Gravity 8)Mansion Of Invention
- Produced by Prince Far I
- Prince Far I (vo,perc), Style Scott (dr,perc), Errol Holt (b),
Bingy Bunny (rhythm g), Earl Chinna (rhythm g), Sowell (lead g),
Steve Beresford (toy synth,melodica,various whistle), David Toop (fl),
Ari Up (vo), Vivian Goldman (vo), Elizabeth Archer (vo)

Prince Far I "Jamaican Heroes" (Trojan, TRLS190, '80, LP)のダブ盤が
再発された。"Jamaican Heroes"は、ジャマイカ出身のオールド・トースター
「雷の声」Prince Far Iの後期の名作。前作"Free From Sin"(Trojan, '79)に
続いて後にRoots Radicsで知られるStyle Scott、Errol Holtらがバックを
固めて後のワンドロップに繋がるリズムを叩いているというだけではなく、
Ari UpやVivian Goldmanなどポストパンクの、Steve BeresfordやDavid Toop
などフリー即興のミュージシャンが入り乱れて制作された話題作でもある。
そのダブ盤であるこの"Cry Tuff Dub Encounter Chapter 3"を、この再発で
やっと聴くことができた。

1曲目の"Plant Up"から、ボコーダーで変形されたPrince Far Iの声が、
生の声に被さる。次の"Back Weh"では、Steve Beresfordのピュンピュン
ピコピコいう音が乱入して来るし、と、かなり節操に欠ける作品になって
いる。ノリも硬直した感じで、レゲエというより後のポストパンクの作品、
例えばNew Age Steppersなどに近いように思う。Prince Far Iの声が無い
分だけ音が薄く感じる − 特に低音がしょぼいなど、物たりない所も多い。
けれども、Ari UpやVivien Goldmanの淡い女声コーラスや、Steve Beres-
fordのピアノやDavid Toopのフルートの哀愁フレーズなどの入り方は、
やはり面白い。

しかし、こうしてみると、元のDJ作品"Jamaican Heroes"がCD化されていない
のは、とても惜しまれる。

後のOn-U SoundでのAdrian Sharwoodの実験の原点にある作品だと思う。
80年代のパンクやレゲエやフリー即興が入り乱れていた頃に思いを馳せて
聴こう。

96/1/16
嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕