Dino Saluzzi, Anthony Cox, David Friedman "Rios" (Intuition, INT2156-2, '95, CD) - Dino Saluzzi (bandoneon,vo,perc), Anthony Cox (acoustic & electric bass), David Friedman (marimba,vibraphone,perc) "Nouvelle Vague" (directed by Jean=Luc Godard, '90)という映画を観たことが ある人なら、オープニングだけでなく映画のあちこちで挿入される断片的な bandoneonの響きをきっと覚えているだろう。ECMの音源がサウンドトラックとして ふんだんに使われたこの映画の音の中で、カラスの鳴き声やPatti Smithの歌声の 次いで−人によっては最も−印象に残るのが、Dino Saluzzi "Andina" (ECM, ECM1375, '88)から採られたbandoneonの音だ。Meredith Monkの歌声だ、という 人もいるかもしれないが。 この95年に録音されたと思われるトリオでの新作でのSaluzziは、"Kultrum" (ECM, ECM1251, '82)や"Andina"での緊張感溢れるソロ演奏とは異なり、かなり リズミカルで軽快な演奏を聴かせてくれる。背景もドラムレスで、マリンバ・ ビブラフォンの乾いた響きもリズミカルで、軽さに似合っている。Anthony Coxは ここでは控え目だ。あまりに軽快なので、少々物足りないくらいだ。わっと こみあげるようなbandoneonの響きも聴きたい、というのは贅沢かもしれない。 緊張感が低い分だけ、B.G.M.として流しておくと気持ちよい音楽ではあるのだが。 僕が初めてDino Saluzziを聴いたのは"Kultrum"でだったが、あまりにタンゴとかけ 離れたスタイルだったので、アルゼンチン出身だとはおもわなかった。この自由に 伸縮するSaluzziのbandoneonソロもぜひ聴いて欲しい。 96/2/5 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕