William Parker "In Order To Survive" (Black Saint, 120159-2, '95, CD) - #1-3 Recorded on 93/4/11, #4 on 93/6/28 - William Parker (b), Grachan Moncur III (trombone), Rob Brown (as), Lewis Barnes (tp), Cooper-Moore (p), Denis Charles (ds) on #1-3, Jackson Krall (perc) Cecil Taylorはブラスをあまり使わない? このCDを聴き出して5分ばかりたって、 パラパラッとブラスが勢いよく鳴ったときに、ふとそう思った。実際はそんな ことはないわけだが、そのくらいにトロンボーンとトランペットの音が印象的な 作品だ。こういう即興演奏の場合、ピアノのキョンキョンガンガンいう音や、 サックスのキーキーいうフリーキーな音に比べて、ブラスの音はあまり外れた 音を出さないので、目立ち辛いというのもあるのだろうが。近藤等則のように プリペアド/電気しかけのトランペットを使えば、また別だろうが。実は、 トロンボーンのGrachan Monchor IIIもトランペットのLewis Barnesも、今まで 全く視野に入っていなかった。 リーダーのWilliam Parkerは70年代から長らくCecil Taylor UnitやThe Feel Trioでベースを演奏してきた人。最近はDavid S. WareやMatthew Shippと一緒に、 Cecil Taylorチルドレンとでもいうべき演奏を聴かせてくれている。ぶっ太く 音数が多い彼のベースは、Cecil Taylorに十分対抗し得る。ときどきグューンと うなる弓弾きの音も好きだ。あまりCecil Taylorと比較して語るものではないの だろうが、やはりこのCDで聴かれる即興演奏は、Cecil Taylor Unitなどのものに 似ているように思う。けれども、ブラスの音とかが新鮮に聴こえたくらいで、 単なる亜流の音楽をしているわけではないと思う。刺激的で面白い。 "In Order To Survive" 「生き残るために」という表題と、ジャケットの燃える ようなイラストから、各パートが音の中に生き残るために激しいバトルロイヤル 的なフリー即興演奏を繰り広げる姿を想像してしまった。しかし、ブックレットに かかれた"In Order To Survive"という詩や、自らライナー・ノーツに書いている "Testimony Of No Future"という#1の曲名の由来を読むと、そんなことではまるで ないということがよくわかる。In order to survive they call for a revolution of resonance, a promise of a new day. 引き締まった緊張感あふれる演奏が良い。お薦め。 96/2/5 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕