UKのパンク以降のロック/ポップ音楽シーンで中心的な役割を果たしたレーベルに、 LondonのRough Tradeレーベルがある。主にパンク以降のロック/ポップをリリース していたレーベルだが、80年代半ばまで、そんな中に交じってレゲエのリリースが いくつかあった。当時はなんとなく後回しにしたまま入手できなくなっていた、 そんな中のレコードをやっと入手したので、紹介したい。 Horace Andy, Rhythm Queen "Elementary" (Rough Trade, ROUGH82, '85, LP) - A1)Hang On To Jah 2)Can't Give Up On Love 3)Love Is A Treasure 4)You're So Fine 5)Roll Away 6)Be My Queen B1)Elementary 2)Baby Don't Go 3)Hold Them 4)Eating Mess 5)Place I Want To Be 6)Ooh E Baby - Produced and Arranged by Horace Andy and Rhythm Queen Mixed by Horace Andy and Rock Crew. - Horace Andy (g,vo,b,prec), Rhythm Queen (key,backing vo), Tony Gad (b,g), Angus 'Drummie' Zeb (linndrum programming), Jah Dave (perc,congos,backing vo), Sandra Marsh (backing vo), Rock Crew (ds,linndrum programming), Danny Valerga (g), Prince Charles (g), Phillip (synthFX) Horace Andy "Elementary" / Rhythm Queen "Primary" (Rough Trade, RTT162, '85, 12"EP) - A)Elementary (Horace Andy) AA)Primary (Rhythm Queen) - Engineered by Steve Parr 今や、レゲエ歌手というより、Bristolを拠点とするトリップ・ホップ・プロジェクト Massive Attackの男性歌手として有名なHorace Andyが、85年にRhythm Queenという 女性キーボード奏者と共同制作した作品。Rough Tradeレーベルということで、 もちろんUK制作。ジャマイカ盤のライセンスではない。 Tony GadとDrummie ZebというAswadのリズム隊が全面的に参加しており、UKレゲエ らしい硬質で覚めたリズムを叩き出している。ほぼすべて打ち込みだか、リズムは ルーツ流儀の緩めのもので充分に重い。あまり音数が多くなく隙間を感じさせる 音構成で、キーボードの演奏など粗さがないわけではないが、ポストパンクの ロック/ポップとも共通する感触もある。ただ、曲調はちょっと緩めで明るめで、 ポップな仕上がりになっている。その一方で、A面2曲目の"Can't Give Up On Love" のような暗めに沈んだ曲は、まるでMassive Attackのような雰囲気がある。 アルバムの表題曲でありシングルカットされている"Elementary"は制作が異なる ようで、これだけダンスホール・レゲエを思わせる打ち込みになっており、Horace Andyも若干トースティングするように歌っている。しかし、緩めのリズムと、 とくに12"EPで顕著なのだけれども挿入されるノイジーなリードギターが、ダンス ホールっぽさというかレゲエっぽさを裏切っていて、面白い。 今のMassive Attackでの活動の伏線とも言える作品ということでも興味深い作品だ。 ちなみに、このアルバムは、Rhino UKから再発されておりCD化もされている。 Rough Trade盤にこだわらないのであれば、そちらの方が入手が容易だろう。 96/3/16 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕