The Pop Group "Y" (Raderscope, SCANCD14, '79/'96, CD) - 1)She Is Beyond Good And Evil 2)Thief Of Fire 3)Snowgirl 4)Blood Money 5)We Are Time 6)Savage Sea 7)Words Disobey Me 8)Don't Call Me Pain 9)The Boys From Brazil 10)Don't Sell Your Dreams - Produced by Dennis Blackbeard Bovell & The Pop Group 遂にパンク以降の名盤が正規盤として再発された。再発のアナログ盤はダブル ジャケットになっている。ちなみに、僕の持っているオリジナル盤The Pop Group "Y" (Raderscape, RAD20, '79, LP)は、通常のジャケットで歌詞カードを兼ねた ポスター付きだ。CDでは、そのポスターが縮小されてブックレットに印刷されて おり、それとは別に歌詞が付いている。丁寧な作りだ。こういうバンドの場合、 歌詞はかなり重要な位置を占めているからだ。 パンクとレゲエとフリージャズの衝突、という常套句的な紹介文句も軽々しく 感じるほどの緊張感が、ここに詰まっている。実際、Matumbiを率いLinton Kwesi Johnsonの後で音作りをしていたUKレゲエの元祖ダブ職人Dennis Bovellの制作で、 ズタズタになるようなダブワイズな音処理が施されている。また、この後に出た シングルThe Pop Group "We Are All Prostitutes" (Rough Trade, RT023, '80, 7"EP)では、CompanyでDerek BaileyやEvan Parkerと共演しているcello奏者Tristan Honsingerを迎えているほどで、完全即興ではないものの即興的要素を重視しフリー ジャズ的な破壊感のある演奏をしている。しかし、この音楽の緊張感を最も高めて いるのは、歌手のMark Stewartの、時として取り乱すような、時として怒りに声を 震わすような絶叫だろう。こういった演奏は、絶叫している社会的な歌詞の内容を 補強するというよりも、批判し、解体し、聴き手に再考させるように機能している。 惜しむらくは、若干ユーモアに欠けるところがあるが。 中古レコード店の壁にプレミアの付いた値段で飾られているのを見ていただけで、 聴いたことが無かった人も多いに違いない。これを機会にぜひ聴いて欲しい。 しかし、この作品も発表から既に15年以上経っている。今この再発で初めてこの 作品に接する人は、この作品を聴いてどのように感じるのだろうか..。 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕