Audio Active MILK, 恵比寿(恵比寿駅西口) 96/6/14, 23:00- ライブでのAudio Activeは「ロックバンド」なのだな。そんな印象を受けたライブを 観に行ったTFJです。 Audio Activeは、On-Uからリリースのある日本人3人組。やはり、ダブを基調として いるが、ロックやファンクの感も巧くとりいれている。最近は、Friction "Zone Tripper" (ビデオアーツ, '96) でリミックスをてがけている。(他に田中フミヤが リミックスをしている。) Audio Activeといえば、"We Are Audio Active (Tokyo Jungle Cowboys)" (On-U, '92) を聴いたことがあるだけだったが、ジャケットワークや"ミュージックマガジン"誌 96年2月号での宇宙人 (というより宇宙飛行士か) のような風貌のメンバーの写真も あって、人をくったような醒めたユーモア溢れるダブワイズな演奏を期待していた。 熱い演奏といより芝居かかった展開だろう、と。 会場は恵比寿のクラブ「Milk」。ライブスペースというよりクラブのスペースを 借りてのライブといったところか。周囲でそれほど話題になるバンドではないのだが、 開演予定時刻の23時の少し前に行ったところ、すでにフロアは人で溢れていた。 すしづめのフロアの最も後ろで、高みの見物でも決め込むか、という気分だ。 が、メンバーが出てきて演奏を始めるや、僕は人混みを押し分けて半ばモッシュ状態に なったフロア前方に飛び込んだ。歪んだ音からなるテンポの速いタテノリの曲は、 ほとんどパンク的だ。その煽るような音にひと暴れしたい気分になったからだ。 踊る頭越しに見える演奏メンバーはギターとベースを加えた5人組。歌手はヘッド バンキングをしながら歌っていた。3曲ばかり速いタテノリの曲に合わせ跳ね踊り モッシュした後、僕はフロアの後ろの方に下がった。疲れた、ということもあるが、 このノリ自体に違和感を感じてしまったからだ。歌手とリードギターが主観を伝え、 リズム隊が踊る機能を提供する、というかつてのロックのサウンドの階層と同じ ものが、このライブ演奏の中にあったからだ。 ダブやダンス音楽へ志向したパンク以降のバンドの多くに僕が見出していたのは、 こういった階層の解体だったと思う。主観を伝えるのではなく、状況を提示する ような批判精神溢れる演奏。そして、Audio Activeのレコードで僕が聴いたのも、 そういう演奏だった。 もちろん、レコードとライブは別だ。ロック流儀の「熱い演奏」の方が会場は盛る だろうし、「批判精神溢れる演奏」が概してライブで脆弱さを露呈することも多い。 このような「熱い」ライブの楽しさも知っているつもりだし、その観点でAudio Activeのライブは充分楽しめるものだったが。 1時間程度のライブの後半、テンポの遅いダブワイズな演奏も聴かれたが、そんな 演奏に合わせて身体を揺らすにはフロアはあまりに混んでいた。ライブがはねた 後のDJタイムになってしばらくフロアで踊っていたが、そのときにGrandmaster Flash "White Line"で踊ったのが、結局、その晩に聴いた最も楽しい時だった。そして、 そのとき、3年前に観たThe Disposable Heroes Of Hiphoprisyの掛け合い漫才の ような醒めた批判精神溢れるそれでいながら楽しいライブを思い出したのだった。 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕