ジャズと音楽以外の異種格闘戦を体験した記憶といえば、'86年か'87年の駒場寮祭 (東大駒場の学園祭である駒場祭と同時開催の寮祭) の際に駒場小劇場で行われた、 山下洋輔 (p) と宮城聡 (performance) のコンサートがある。 当時の小劇場ブームの中でミヤギサトシショーでぬめっとしたキャラクターが人気 だった宮城聡が、それまでにも演劇や舞踏との共演歴のある山下洋輔を、駒場小劇場 という演劇的空間に迎え撃つ、という感じかなと期待して臨んだのだが。ほとんど 宮城聡の印象が残らないちょっとすれ違いを感じたパフォーマンスだった。 宮城聡の駒場小劇場内を徘徊する爬虫類のような動きにどうも必然性を感じられず、 山下洋輔の「枯葉」のようなスタンダード曲の例の拳肘打ち入り熱演ばかり観ていた。 CompanyをはじめDerek Baileyの作品を出しているIncusから、最近になってヴィデオ 作品が3作出た。うち2作はDerek Baileyとパフォーマーとの共演が作品に収められ ている。山下洋輔と宮城聡の共演の記憶がぱっとしないので、ハズレかなとも思い つつ、結局は好奇心に負けて、第一弾の作品を買ってしまった。 Derek Bailey, Will Gaines "Will" (Incus, VD01, '95, VHS) - 1)Pedal Exremities 2)T T T T T T T T T T T T T 3)For Edward D Wood Jnr. 4)Will Aloft - Recorded at The Montage Gallery, England on 95/5/10,11. Video production: Tom Harvey & Russ Slank. - Derek Bailey (electric guitar), Will Gaines (dance) Derek Baileyの相手は黒人タップダンサーWill Gaines。というわけで、かなり 音楽的要素が強く音だけでも楽しめる作品だった。ギャラリーでの演奏風景を いくつかのアングルで撮影しており、そんな妙は編集はしていないのが良い。 壊れた機械仕掛けの人形のように不規則な音を立てながら踊るタップダンサーと、 椅子に座って黙々と演奏を続けるBaileyの対比が、笑える。しかし、タップダンスと ギター演奏では肉体的消費に差がありすぎて、タップダンサーが疲れがちという ところに、若干のバランスの悪さも感じる。 二人はほどんど目を交わしたりせず、ひたすらイディオムを排したかのような 即興演奏をしている。しかし、そんな中、疲れて椅子に座っているWill Gainesに Derek Baileyは微笑みかけながら踊りを促すようにコードを一定のテンポでかき 鳴らす。そんな一瞬も観せるところに、この作品の幅というか、イデオマティックな 即興演奏に対するBaileyの余裕を観たような気がした。 最近のDerek Baileyといえば、Arcana "The Last Wave" (DIW, DIW903, '96, CD) では、Bill Laswell、Tony Williamsとハードでファンキーなロックを演奏して いてそれが凄い。このビデオで観た微笑むDerek Baileyがこの演奏の向こうに 見えるような気がする。 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕